介護経営コラム

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【2025年最新版】通所介護(デイサービス)の売却・M&A完全ガイド~後悔しない事業譲渡の進め方と成功事例~

更新日:2025年11月11日

「人材不足で運営が限界…」「後継者が見つからない…」「そろそろ引退を考えている」
そんなお悩みを抱えるデイサービス事業者様へ。本コラムでは、通所介護事業のM&A(事業譲渡・売却)を成功させるための実務的なポイントを、最新の業界動向や実際の成約事例を交えて詳しく解説します。

通所介護(デイサービス)とは

通所介護とはデイサービスセンターなどで行う通所サービスです。主に日中の時間帯に、入浴や食事などの介護や機能訓練を行い、多くの場合、送迎も実施されています。社会的孤立感の解消や生活の活性化、家族の介護の負担軽減などが目的とされています。法人格のある事業者であれば指定を受けることが可能です。なお利用定員18人以下の通所介護は地域密着型サービスに位置付けられます。

人員基準は生活相談員1人以上、看護職員1人以上、介護職員は利用者15人まで1人以上、それ以上は5人ごとに1人以上、機能訓練指導員1人以上(兼務可)となっています。

【人員基準】
生活相談員(社会福祉士等) 事業所ごとにサービス提供時間に応じて専従で1以上
(※生活相談員の勤務時間数としてサービス担当者会議、地域ケア会議等も含めることが可能。)
看護職員(看護師・准看護師) 単位ごとに専従で1以上
(※通所介護の提供時間帯を通じて専従する必要はなく、訪問看護ステーション等との連携も可能。)
介護職員 ① 単位ごとにサービス提供時間に応じて専従で次の数以上(常勤換算方式)
ア利用者の数が15人まで1以上
イ利用者の数が15人を超す場合
アの数に利用者の数が1増すごとに0.2を加えた数以上
② 単位ごとに常時1名配置されること
③ ①の数及び②の条件を満たす場合は、当該事業所の他の単位における介護職員として従事することができる
機能訓練指導員 1以上(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師)
生活相談員又は介護職員のうち1人以上は常勤

※定員10名以下の地域密着型通所介護事業所の場合は看護職員又は介護職員のいずれか1名の配置で可

【設備基準】
食堂 それぞれ必要な面積を有するものとし、その合計した面積が利用定員×3.0㎡以上
機能訓練室
相談室 相談の内容が漏えいしないよう配慮されている

出典:厚生労働省 通所介護及び療養通所介護

通所介護(デイサービス)のM&Aが注目される背景

通所介護業界は高齢化が進む日本において今後も成長が期待される業界です。しかし当センターへの通所介護事業者の方からの売却・譲渡のご相談は年々増加しており、人手不足や物価高騰など事業の存続が厳しい事業者が増えていることも実情です。
そんな、通所介護(デイサービス)業界は今M&Aによる再編の時を迎えているともいえるほどM&Aが活発に行われています。その背景として4つご紹介します。

背景①:高齢化の加速

日本の高齢化は世界に類をみない速さで進行しており、2025年には高齢化率(65歳以上人口が総人口に占める割合)は30%を超えると言われています。介護保険の対象となる要介護(要支援)の高齢者数も介護保険制度が開始した2005年の218万人から、2016年には630万人と約3倍まで増加しており、団塊世代が後期高齢者になる2025年には800万人を超えると言われ、要介護(要支援)の高齢者は今後も急速に増加することが見込まれています。

背景②:人材確保の困難

少子高齢化を受け、人材不足が叫ばれる労働市場ですが、特に介護業界は賃金水準が低く、肉体労働や夜間勤務など労働環境が過酷であるため、人材確保が恒常的に難しい業界です。
また、事業者間の介護資格保有者の争奪戦も激しさを増しており、苦労して採用してもすぐに辞めて転職してしまうという離職率の高さと、再度募集を行うことによって発生する人材紹介会社に対する広告料も収益を圧迫する要因となっております。さらに需要と供給により決定される時給は今後も上昇していくとみ込まれます。

また冒頭でも記載したように人員基準は生活相談員1人以上、看護職員1人以上、介護職員は利用者15人まで1人以上、それ以上は5人ごとに1人以上、機能訓練指導員1人以上(兼務可)となっており要件を満たせなくなる事業者も出てきています。

背景③:報酬改定の影響

2024年度(令和6年度)の介護報酬改定では、全体で+1.59%の改定率が示されました。そのうち0.98%は介護職員の処遇改善に充てられ、残りの0.61%が基本報酬等への配分とされています。
通所介護(デイサービス)に関しては、以下のような改定が行われました。
・処遇改善加算の一本化
・認知症加算・入浴介助加算の見直し
・業務継続計画未策定減算の新設
・科学的介護推進体制加算(LIFE)の見直し
これらの改定により、加算の取得にはより高度な運営体制や人材配置が求められるようになり、特に小規模事業者にとっては厳しい環境となっています。一方で、処遇改善加算の一本化や評価指標の明確化により、中堅〜大規模事業者にとっては制度対応がしやすくなった側面もあります。

背景④:事業者間競争の激化

厚生労働省の統計によると、2025年4月時点で全国の通所介護事業所数は42,656ヵ所となり、前年から362ヵ所の減少を記録しました。これで3年連続の減少となり、特に地域密着型デイサービスの減少幅が顕著です。
この背景には、介護ニーズの多様化と地域ニーズとのズレがあり、利用者のサービス選好が訪問系や居住系サービスへとシフトする中で、通所介護の稼働率が低下している地域も見られます。さらに、慢性的な人材不足が深刻化しており、特に小規模事業所では法定人員基準の維持が困難となり、廃業や統合が加速しています。
こうした状況下では、サービスの質・専門性・地域連携力を備えた事業者が選ばれる傾向が強まり、事業者間の競争は“量”から“質”へと移行しています。今後は、単なる施設数の維持ではなく、地域に根差した柔軟なサービス設計や人材戦略が生き残りの鍵となるでしょう。

通所介護(デイサービス)M&Aの特徴3選

通所介護M&Aの特徴①~賃貸物件と営業権譲渡の実態~

通所介護事業のM&Aにおいては、事業所が賃貸物件であるケースが非常に多く、営業権(事業運営に必要な権利や資産)の譲渡を中心としたM&Aスキームが一般的です。

営業権譲渡とは?
営業権譲渡とは、以下のような事業運営に必要な要素を一括して譲渡することを指します:
・利用者との契約関係(利用者台帳・契約書)
・職員の雇用契約(継続雇用が前提)
・行政からの指定・許認可(変更届や新規申請が必要)
・備品・設備・什器類(賃貸物件内の資産)
・地域との信頼関係・ブランド価値

このような営業権の譲渡は、「事業譲渡契約」や「営業譲渡契約」として法的に整理され、買い手は既存の事業基盤を活用して即座に運営を開始することが可能になります。

【賃貸物件ならではの留意点】
  • 賃貸契約の引継ぎ:オーナー(貸主)との契約条件や更新可否、原状回復義務などを事前に確認する必要があります。
  • 立地の重要性:通所介護は利用者の送迎が前提となるため、交通アクセスや地域密着性が評価に直結します。
  • 設備の所有権:設備が事業者所有か貸主所有かによって譲渡対象が変わるため、契約書の精査が不可欠です。

このように、通所介護M&Aでは「営業権譲渡+賃貸契約の引継ぎ」がセットで進められるため、不動産を持たない事業者でも売却が可能であり、買い手にとっても初期投資を抑えた参入が可能というメリットがあります。

通所介護M&Aの特徴②~利用者との信頼関係の引継ぎが重要~

通所介護は、利用者が週数回通う「生活の一部」として機能しているため、利用者との信頼関係や家族とのコミュニケーションが非常に密接です。
M&Aにおいては、単なる事業譲渡ではなく、”人間関係の継承”が求められる点が他業種とは大きく異なります。
・利用者や家族への丁寧な説明と安心感の提供が不可欠
・買い手側は、既存スタッフの雇用継続やサービス方針の維持を約束することで、離脱リスクを最小限に抑える
・売り手側は、譲渡後も一定期間の引継ぎ支援を行うことで、スムーズな移行が可能になる

通所介護M&Aの特徴③~行政手続きと指定更新の複雑さ~

通所介護事業は、介護保険制度に基づく「指定事業所」として運営されており、行政との手続きがM&Aの成否を左右する重要な要素です。
・事業譲渡の場合、旧事業所の廃止届と新事業所の指定申請を同時に行う必要がある
・地域密着型通所介護の場合は、市区町村単位での指定・協議が必要となり、都道府県管轄の広域型サービスよりも手続きが煩雑
・指定更新のタイミングや、行政との事前協議の有無によって、譲渡スケジュールが大きく左右される
このため、介護業界に精通したM&A仲介会社や行政書士との連携が不可欠です。

通所介護(デイサービス)事業者がM&Aを選ぶメリット

通所介護(デイサービス)M&A(売却・譲渡)の特徴やメリット・デメリットをご紹介します。
通所介護事業の売却・譲渡を検討している売り手は上述のとおり、人手不足による稼働率の低下やコスト増による収益の圧迫により、通所介護の経営が困難になる事業者様や、将来性を考えると後継者の選定に難航してしまう事業者様からのご相談が多く寄せられております。
通所介護の買い手は規模の大きい介護事業者様は地元地域で人員の確保が比較的容易であることから競争力を活かし、規模を大きくするためにM&Aを行っていくというご要望をいただいております。

M&Aを選ぶ売り手にとってのメリットとしては下記が考えられます。
【M&Aを選ぶメリット(売り手側)】
・後継者不在でも事業継続が可能
・従業員の雇用と利用者サービスの維持
・創業者利益の確保と個人保証の解消
・大手グループ傘下での安定運営
・本業への集中や早期引退の実現

【M&Aを選ぶデメリット(売り手側)】
・従業員・利用者への説明負担
従業員のM&Aに対する不安や誤解を解消するため、丁寧な説明が必要です。従業員との信頼関係の維持がポイントとなります。逆に従業員との関係がほぼなく、現場が自走状態であれば、従業員としても働き方や労働条件が変わらなければ問題ないということもありますので、しっかりと説明し理解していただくことが重要です。

・譲渡後の影響が読みにくい
買い手の運営方針変更により、サービス内容や職場環境が変化する可能性があります。この点については、買い手候補企業との面談の際にしっかりとすり合わせることが重要です。少しでも不安が残っている場合は担当のM&Aアドバイザーなどに相談しましょう。

通所介護(デイサービス)の売却価格の相場は?

各業態により評価の仕方が変わってくるため、売却価格の相場が何円ですとは明確にお伝えができません。ここでは評価のポイントをお伝えします。具体的な金額が知りたい方は、企業の売却価格を査定できるサービスを提供している仲介会社が多くありますので、そのようなサービスの利用をお勧めします。

評価基準(一部)
・利用者数・稼働率・営業利益
・人員体制(看護職員・機能訓練指導員の確保)
・地域の介護需要と競合状況
・賃貸条件・行政指導歴の有無

黒字・好立地・稼働率高の事業所は高評価となることが多いです。しかし、赤字だから売却できないということもなく、エリアや事業内容に魅力を感じられる買い手も多くおられますので、ご不安がある場合はM&A仲介会社へ問い合わせてみましょう。

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通所介護(デイサービス)のM&A成約事例ピックアップ

当センターで実際にM&Aを経験された、デイサービス事業者様へインタビューを実施させていただきました。経験者の生の声だからこそ参考になるのではないかと思います。是非ご覧ください。

M&A成約事例①
将来への不安を一人で抱えながら会社の規模拡大のために決めた譲渡
機能訓練デイサービスを経営されていた高橋様はご自身の年齢と会社の今後の成長のためにM&Aを決断されました。 会社の成長、利用者様、スタッフの将来を考え譲渡を決定されたとお話しくださった髙橋様。 現在は昔からの夢であった水のきれいな地域でのんびりと過ごされているそうです。
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M&A成約事例②
経営者のリタイアによる、後継者探しと、会社売却の成約事例
「デイサービスめいゆう」を経営する株式会社明友ケアーズの社長である久保様は、高齢により、経営者としてのリタイアを決断されました。介護事業の経営においては、利用者保護の観点と、従業員の雇用確保が、とても大切です。譲渡が実現する前から、「利用者と従業員のため、自分自身が身を引く事が大切」と、力強く語って下さった久保社長。
決断に至った心境と、譲渡後のお気持ちを久保社長に伺いました。
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他にも介護業界のM&A・売却・譲渡に成功された経営者様のインタビューを多く掲載していますのでご覧ください。
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まとめ

今回のコラムでは、通所介護(デイサービス)のM&A(売却・譲渡)について、通所介護・デイサービスのM&Aにお悩みの経営者の皆様にむけ、特徴やメリット・デメリット、事例をご紹介しました。
通所介護・デイサービスのM&Aについてお悩みの場合はぜひ、介護業界特化のM&A仲介、介護M&A支援センターにご相談ください。

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