2021-01-18 介護M&Aコラム Vol.13
【速水の眼】介護報酬はどこまで下がるのか?
「これまで、歳出は一貫して伸び続ける一方、税収はバブル経済が崩壊した1990年度を境に伸び悩み、その差はワニの口のように開いてしまいました。また、その差は借金である公債の発行で穴埋めされてきました。」
これは、財務省のホームページの「これからの日本のために財政を考える」というコーナーに記載されている説明です。他国に類を見ない速度で高齢化が進む日本において、社会保障費が増え続けていることが一番の要因です。このワニの口を閉めない限りは社会保障制度の維持ができない訳ですが、足元のコロナ対策の補正予算等の影響で、ワニの口は逆に衝撃的な開きを見せています。
https://www.mof.go.jp/zaisei/current-situation/situation-dependent.html
コロナの感染拡大防止と社会経済活動の両立を図るという非常に難しい舵取りを政府は迫られており、その原資として短期的には借金で穴埋めをするしかありませんが、借りたお金は必ず返す必要があり、その方法は収入を増やすか支出を減らすしかありません。そのため、支出の中で一番伸び率の大きい社会保障費にメスが入り続けるのはやむを得ないことと言えます。
令和3年の報酬改定は、全体では+0.7%と発表されています。しかしこの中には感染対策の特例措置も含まれており、また質の高いケアをした際に支給される加算分が多く含まれると考えられることから、基本報酬部分については引き続き厳しい改定が続くものと見込まれます。
では今後、介護報酬はどこまで下がるのでしょうか?
介護報酬の改定に当たっては、厚労省の介護事業経営実態調査の結果発表される「収支差率」が重要な判断指標になると言われています。収支差率が高いサービスは下げ余地があるということになります。令和2年度調査(令和元年度決算)では、全サービス平均で2.4%(前年対比△0.7%)、実に22サービス中17サービスが前年より悪化しており、特に収支差率の高いサービスにおける減少幅が目立ちます。しかも集計対象期間はコロナの影響を大きく受ける前であることから、実態は更に悪化しているという指摘もあります。
一見すると、もう下げ余地は残ってないようにも見えますが、私はまだ10%程度は下がると見て準備しておいた方がよいと考えています。
なぜなら、先日発表された3月決算の主な介護関連上場企業の中間決算を見る限り、昨年6月頃まではコロナの影響を受けながらも、その後多くの会社が業績を持ち直して増収増益となっており、その利益率は10%前後となっているからです。介護制度を維持すると同時に社会保障費の伸び率を抑えるためには、こういった大手企業を再編の軸とし、企業の収益性を更に高めながら報酬を減額改定していくことが想定され、その流れの中で生き残れる目安が利益率10%と考えています。
中小零細事業所ではもう限界までコスト管理をされている所も多いと思いますが、大手のグループに入ることによって抜本的に収益構造を変えることができ、教育やシステム等、未来への投資も可能となります。
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