2019-08-21 介護M&Aコラム Vol.06
【速水の眼】IRから読み解く各社の戦略(2)
競争が激化する介護業界においてどのように生き残っていくか。大手介護事業者の決算開示資料等から、その戦略を読み解いてみたいと思います。
今回は、綜合警備保障株式会社(以下「ALSOK 」)です。
ALSOKは、言わずと知れた警備保障の大手で1965年設立、現金護衛や店舗・イベントの警備等、BtoB市場を中心に領域を広げてきました。1988年にホームセキュリティを開始してBtoC市場に参入、顧客のライフスタイルごとのニーズに合わせた安心・安全・便利を提供することをめざして、特に高齢者市場を重点領域と位置づけ、みまもりサポートや緊急通報サービス等を提供してきました。
介護事業への参入は2012年と比較的新しいですが、数年間の間に著しい成長を遂げています。ALSOKはM&Aに積極的な会社としても有名ですが、介護事業の拡大もM&Aが中心で、2014年9月に都内の訪問介護事業所買収を皮切りに、同年10月には三大都市圏で幅広く訪問介護や施設介護サービスを展開するHCMを買収、更に翌2015年2月には介護事業とともに、医師・看護師等による専門的健康相談サービスを提供するアズビルあんしんケアサポートを買収し、介護関連事業の売上高は一気に80億円を超えるまでに拡大しました。
また、2016年5月には埼玉県を中心にグループホームや介護付有料老人ホームを展開するウイズネットを買収し、介護事業の売上高は立上げから7年で260億円規模と、介護業界ベスト10に入るまでに拡大しています。
その後、大型の買収は一旦ストップしていましたが、2018年6月に訪問医療マッサージを提供するケアプラスを買収した他、子会社でも訪問看護ステーションの譲受けをする等、買収を再開しているようです。
ALSOKの強みは全国2,400拠点の待機所からすぐに駆けつけることのできるセキュリティサービスであり、当初は見守りサポートや緊急通報サービスの利用者への介護サービスの提供を見込んでいたため、訪問介護の展開が中心でしたが、ウィズネットの買収で高齢者施設を多く抱えることになり、総合的な介護事業体として、新たなシナジーを模索していると思われます。全社に占める介護関連売上は10%に満たない規模ですが、事業別の伸び率はALSOKの中でもトップクラスであり、会社全体の成長戦略の中でも介護事業は重要な位置付けを占めていると思われます。
開示資料に「セキュリティ事業と介護事業の連携強化」と記載されているのは、逆を言うと、連携の余地が大きく残っていると見ることもでき、今後もセキュリティ事業の資本力やブランド力、ネットワーク等を上手く活用しつつ、介護事業も成長の柱としてM&Aを多用しながら拡大を目指していくことが予想されます。
本文中の数値等は開示資料や報道資料を元に記載しております。