2019-04-17 介護M&Aコラム Vol.02
【速水の眼】介護業界の成長戦略(1)
介護給付費は2025年には現在の2倍の20兆円になると言われており、日本では数少ない成長市場です。一方で介護報酬の実質マイナス改定や競争激化、
採用難等の影響で大手企業にとっても安泰ではなくなってきています。
このような中、介護の展示会CARETEXを主催し、同時に200件以上の介護事業者のM&Aを手掛けてきた経験から、
成長している企業はどのような戦略を採っているのかについて読み解いていきたいと思います。
「ドミナント」or「選択と集中」
介護業界の成長戦略として、地域ドミナント戦略を掲げる企業が多い一方で、最近は選択と集中を図る企業も増えています。
ドミナント戦略とは、同じエリアに集中的に出店することで、余剰人員の融通や、管理コスト、採用コスト、ケアマネへの営業活動等の共有を図ることを主な目的としています。 一方で選択と集中とは、業種・業態やエリアを得意分野に絞り込むことで、効率的な運営を図り収益性を上げることを主な目的としています。
出店すれば一定の利益が見込めたひと昔前と異なり、現在の介護業界においては個々の事業所において、しっかりとした採用戦略や人員管理、 営業活動を組織的に図っていかないと収益化が難しくなってきています。
例えば市場が大きいというだけで首都圏や関西圏に出店しても、しっかりとした管理者を設置できなければ、過誤請求が起きたり、 採用難で入居者を受け入れられないといった事態が起きています。
また、中核介護施設の将来的な見込利用者の獲得の為にデイサービスを開設しても、利用者の介護度が短期的には大きく変動しないことから、 期待したシナジー効果が得られないばかりか、居宅系と施設系ではオペレーションが大きく異なることから、逆に非効率な運営となっている事業者も見受けられます。
このような中、当社へ依頼が増えているのが選択と集中を目的としたM&Aです。
近畿圏を中心に新設・買収で拡大を図りつつ東北等の非中核エリアの事業所を譲渡するケース、 コンセプトの明確なデイサービスの拡大を図りつつ旧来型の訪問介護事業を譲渡するケース、 富裕層向けの施設を拡大しつつ低価格帯の施設を譲渡するケースなど様々な形態があり、 一見ドライで非情な戦略にも見えますが実態は大きく異なります。
譲渡企業にとっては、言わば後ろ向きのマネージメントから解放され、譲渡で得られた資金で得意分野のマネージメントに専念できるというメリットがありますが、
実はスタッフや利用者の方にとっても大きなメリットがあります。
収益性の低い事業所は企業の中では非中核事業と位置付けられるケースが多く、人員配置に無理が出たり、新しい投資に消極的になる等、
スタッフのモチベーションも低くなりがちです。しかし、そのエリアの中核企業やその業態を中核事業とする企業の傘下に入ることで、一躍中核事業のスタッフになることができるため、スタッフのモチベーションも大きく上がることが多く、
ひいては利用者の方にとってもプラスになると言えます。その為、戦略の明確な成長企業ほど、選択と集中を図られているという傾向があります。
弊社では4000社近くの買い手希望リストから、適切なマッチングを図っていますので、是非お気軽にご相談下さい。