速水の眼

2019-12-03 介護M&Aコラム Vol.08

【速水の眼】当社実績から読み解く(2)~売却理由と成約しやすい業態~

   前回は業種別の売却希望割合について書かせていただきました。
   今回は、よく耳にする売却理由、成約しやすい業態について書かせていただきます。

③売却理由ランキング
   全業態を通して、一番多かったのが「採用難」です。エリアや職種によっては有効求人倍率が5倍を超えることもあり、多くの事業所で採用難に頭を抱えられているようです。オープニング時のスタッフを集めることができず、施設を稼動できない事業所の相談も増加しています。

   二番目には「事業の選択と集中」があげられ、売却理由として最近急増しています。もともと介護事業以外を本業としていた会社が多角化で介護事業に進出したものの、「本業回帰」のために介護事業の売却を検討するケースが増えてきています。また、大手中堅の介護事業者の中には、非中核事業を売却して、得意な中核事業に集中するケースも増加しています。例えば、非中核エリアの関東圏のグループホームを売却して、本社のある関西圏のグループホームを買収する「エリアの選択と集中」や、非中核事業の訪問介護を売却して、注力事業であるデイサービスを買収する「業態の選択と集中」等があげられます。

④成約しやすい業態
   売却の問合せ割合上位5業態はデイサービス(33.7%)、住宅型有料老人ホーム(10.5%)、訪問介護(8.0%)、グループホーム(7.5%)、訪問看護(6.4%)となっております。

   成約割合÷問合せ割合=成約指数とした場合、一番成約指数が高いのは「訪問看護」でした。スタッフの確保やマネジメントが上手くいかず、売却を検討されるケースが増えている一方で、介護保険とは別に医療保険の収入が見込めることから、異業種からの参入意欲も旺盛で、人気業態となっています。

   また、売却の問合せ割合上位5業態の内、4業態までが、成約指数で1倍を上回っているのは、単体では収益確保が難しい事業所においても、複数事業所をドミナント展開することで収益化が可能となることから、売却ニーズを捉えて積極的にドミナント戦略を進める買い手が多く存在していることを表していると言えます。

   逆に成約指数が低かったのが「グループホーム」です。より詳細に分析してみると、比較的収益性の高い2ユニット以上のグループホームの成約指数は1.40倍であるのに対して、1ユニットのグループホームの成約指数は0.18倍とかなり低い水準にあります。総量規制もあり、手堅い事業として人気のグループホームですが、実際に人気が集中するのは2ユニット以上の規模が中心で、1ユニットの小規模なグループホームの場合は、入居人数の少しの増減で収益性が大きく変動するため、買収企業も慎重に検討していることがわかります。

   一方、買収希望企業のニーズとしては、1位は「住宅型有料老人ホーム」でした。売却の問合せも多い一方で、収益を上げる仕組化に成功している事業者にとって、苦戦している施設を安価で買収することで、新たに施設を立ち上げるよりも、早期に成長を加速することができるためと考えられます。

   2位は「グループホーム」です。売却希望企業の項でも記載しましたが、総量規制のあるグループホームは手堅い事業として捉えられており、特に2ユニット以上の規模の売却情報が出た場合には、人気が殺到する傾向にあります。人気ランキングの上位に施設系の業態が多いのは、訪問系のサービスに比較して、人的要素(採用・教育等)の影響を受けるリスクが小さいため、経営が安定しやすいことが考えられます。

   当社では、これまでサポートしてきた数多くの介護事業者のM&Aにより、より効果的・効率的に最適なM&Aを実現するためのノウハウを蓄積してきました。介護保険は国の財政で成り立っているため、非効率な事業所の運営を中長期的に継続することは困難ですが、ドミナント展開や他事業とのシナジー効果で収益の改善を図ることは十分可能であり、これによって介護スタッフの待遇の改善がなされ、より質の高い介護へと結びつくものと考えております。
   また、業態・エリアに関わらず言えるのは、買い手の次の戦略にマッチした業態・エリアであれば、人気ランキングの低い業態であってもマッチングが可能であるということです。そのため、当社ではこれからもより多くの買い手企業のニーズを集めることで、多くの方にM&Aの機会を提供し、より円滑な事業承継のサポートを推進してまいる所存です。本データが、少しでもご利用される方のお役にたちましたら幸いです。

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