業界動向

セクションナンバー 急増する介護事業者

平成11年の介護保険制度創設以降、有料老人ホームを始めとした介護事業所の数は急速に増加してきました。これに加えて、平成23年の高齢者住まい法の改正により、サービス付高齢者向け住宅(サ高住)への手厚い支援が開始されたため、特に中低価格帯の高齢者向け施設・住宅市場は利用者獲得の激しい競争にさらされています。

施設数としては増えていますが、事業所数は頭打ちになっており、市場が飽和状態になっています。また、後述いたしますが、事業所数が伸びない背景に、従業員不足もあると推測されます。

【資料1-1】その他の介護事業所数の推移 (出典:厚生労働省) 【資料1】高齢者施設の定員数推移 
(出典:厚生労働省)

居宅系はコロナの利用控えから回復基調ではありますがまだ完全には戻ってきていないため、看多機や訪問看護以外は微増から微減になっています。また施設系と同様に従業員の獲得競争が激しくなり、事業数が減っている理由になっています

【資料1-1】その他の介護事業所数の推移 (出典:厚生労働省) 【資料2】居宅系事業所数推移 
(出典:厚生労働省)

セクションナンバー 競争激化による入居率・利用率の低迷

一般的に入居率が70%に満たない高齢者向け施設・住宅の運営状況は厳しいと言われています。
上記の様に、短期間で急激な建設ラッシュが起きた結果、立地条件の悪い施設や価格設定の高い施設等は新設施設等との競争において不利な状況にあり、その結果入居率が低迷するという事態に陥っています。
PwCコンサルティング合同会社の「令和3年度 高齢者向け住まい及び住まい事業者の運営実態に関する調査研究」によりますと、有料老人ホームの9%、サ高住の11.1%が入居率70%を下回っているというアンケート結果が出ています。

入 居 率 介護付有料
老人ホーム
住宅型有料
老人ホーム
サ 高 住
70%未満 6.7% 9.0% 11.1%
70%以上 93.3% 99.0% 88.9%
【資料3】令和3年度 高齢者向け住まい及び住まい事業者の運営実態に関する調査研究(PwCコンサルティング合同会社)

この数値は高く見えますが、実は施設類型でも令和2(2020)年から令和3(2021)年にかけて平均の入居率が下がっており、ここでもコロナ禍の影響がうかがわれます。

入居率の平均 2019年度 2020年度 2021年度
介護付有料老人ホーム 91.9% 92.1% 88.7%
住宅型有料老人ホーム 89.7% 90.3% 90.0%
サ 高 住 92.6% 92.1% 90.8%
【資料4】令和3年度 高齢者向け住まい及び住まい事業者の運営実態に関する調査研究(PwCコンサルティング合同会社)

弊社の売りニーズ2位、買いニーズ1位のデイサービスは2021年度介護報酬改定により基本報酬が引き上げられたものの、2020年度と比べ、利用者1人1日当たりサービス活動収益は低下しており、平均利用率も低迷、競争の激化が窺えます。

地域密着型 通常規模型 大規模型(ⅰ) 大規模型(ⅱ)
利用率 73.5% 68.4% 74.7% 74.7%
【資料5】独立行政法人福祉医療機構 「2021年度(令和3年度)通所介護の経営状況について」より

一般的にデイサービス経営では稼働率80%以上が理想といわれています。80%あれば多少の利用者の増減があっても安定した収益が見込めます。
しかしながら平均をみると、そこに達していな事業所が多いことが見受けられます。

セクションナンバー 介護人材の不足と採用コストの増加

コロナが5類になり、飲食業を中心に採用意欲が回復傾向にある中、相対的に給与水準が低い介護分野の有効求人倍率は、全産業平均より高い水準で推移しています。
また、事業所の規模が小さくなるほど、離職率が高くなる傾向にあり、小規模事業所の採用コスト負担は高くなる傾向にあります。

弊社のお客様も人員確保に限界を感じ、売却を決意された方も多くいらっしゃいます。グラフからも同じ社会福祉業界の求人倍率と比べても介護分野の倍率が高いことがわかります。

  • 【資料6】有効求人倍率の推移(出典:厚生労働省) 【資料6】有効求人倍率の推移
    (出典:厚生労働省)

セクションナンバー 介護報酬改定の影響

社会保障制度の持続可能性を確保するため、政府は社会保障給付費の抑制策として、介護予防の充実や、施設介護から在宅介護へという大きな方針を打ち出しております。
3年に1度の見直しが行われる介護報酬の改定に大きく反映されます。

令和4年度の介護報酬改定は、介護・障害福祉職員の処遇改善を目的とする臨時報酬改定でした。今回の臨時改定では、新たに「介護職員等ベースアップ等支援加算」が設けられました。「介護職員改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」に次ぐ3つ目の処遇改善加算です。これらの加算によって低いといわれている介護職の平均賃金を上げ、介護職の有効求人倍率を下げることが期待されています。

【資料7】介護報酬改定の改定率と基本給(出典:厚生労働省) 【資料7】介護報酬改定の改定率と基本給 
(出典:厚生労働省)
※94.5%の事業所が加算をしている加算(Ⅰ)を取得済みの事業者の基本給

資料7の通り、基本報酬はマイナスや小幅プラス改定ですが、加算(加算Ⅰでプラス約37,000円)により見かけ上は他業種に引けを取らない金額になってきています。
しかし介護職員処遇改善加算をまったく取得していない事業所もまだ5.9%はあります。
そして令和4年度に新設された特定処遇改善加算も、約3割の事業所がとっていないという結果も出ていますので、有効求人倍率を下げることが出来るかどうかは、まだ未知数です。

全体 加算(Ⅰ) 加算(Ⅱ)
取得率 75.00% 41.70% 33.30%
【資料8】特定処遇改善加算の取得率(出典:厚生労働省)

加算の届け出をしない理由の多くは「事務作業が煩雑」と小規模事業所での人員不足によって加算が取れていないことが窺えます。
加算が取れないため給与が上がらない、よってますます採用難に陥るという負のスパイラルにはまってしまう小規模事業所が出てくることが想定されます。

セクションナンバー 大手企業によるM&Aが積極化

上記の様な状況のもと、効率的な運営が得意な介護事業者や、ブランド力・資金力をもった介護事業者等は積極的に施設等の新設を行い、施設数を大きく拡大することで、スケールメリットを活かした経営を行ってきましたが、立地条件のよい土地の売却が少なくなってきたことや、業態によっては総量規制により制度的に新設が制限されていることから、M&Aにより事業や会社ごと買収したいと考える事業主が急速に増加してきています。

また、日本における数少ない成長市場として介護業界が注目を浴びていることから異業種からのM&Aによる新規参入も活発になってきています。

二極化の方向へ
【資料8】介護事業者の二極化
新規参入の事例をさらに詳しく見る

セクションナンバー 介護市場におけるM&Aの今後の展望

今後もスケールメリットを活かすため、資金力のある大手の介護事業者は積極的にM&A戦略をとることが予想されます。
また、異業種の大手企業も、更に参入してくると思われます。

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