速水の眼

2020-03-05 介護M&Aコラム Vol.10

【速水の眼】「現状維持=衰退」の環境で拡大するということ

2000年の介護保険制度開始以降、新規参入が相次ぎ一気に全国に拡がった介護事業所は、2015年を境に群雄割拠の時代から統合の時代へと進み出しています。
その背景は大きく3つあげることができます。

1つ目は競争激化。待っていても入居者・利用者が集まる時代は終わり、地域のケアマネに対してこまめに空き状況を伝えたり、機能訓練の成果を数字で伝える等の地道な営業活動が必須となってきています。このため、情報システムの導入や営業の組織化等、組織的な対応が求められるようになってきています。

2つ目は時を同じくして急速に進んだ採用難。有効求人倍率が5倍近くまで高まり、5つの施設で1人の求職者を採り合う熾烈な採用環境となった結果、新設してもスタッフが集まらずに立ち往生するケースも増えており、より確実性の高い手段として、既存の施設の買収が好まれるようになってきています。

3つ目は介護報酬の絞り込みです。急速に進む少子高齢化の中、介護給付費が急増しないよう、24時間体制や医療連携等、組織的な対応が可能な事業所に加算を与えると同時に、旧態依然とした運営では減算になることも多く、政府の意思として、事業者の選別を図るステージに入っていると言えます。

この様な環境の中、経費削減努力にも限界があるため、新設・買収によってスケールメリットを得る拡大戦略を取るか、損失が拡大する前に廃業・譲渡する撤退戦略を取るかの二極化が大きく進んでいます。

拡大戦略を取る場合に先ず検討する必要があるのが、資金調達の方法です。一件一件、銀行借入で調達するのが主流ではありますが、拡大戦略を取る企業が多い中、他社より速く拡大するためには銀行借入は機動性に欠ける場合があります。

最近増えているのが、新規株式公開による公募調達です。
2019年から2020年3月までの15ヶ月間だけでも、介護事業を営む会社は7社が新規株式公開を行っています。

リビングプラットフォーム(介護・保育・障がい)
ミアヘルサ(介護・調剤・保育)
AHCグループ(障がい・介護)
global bridge HD(保育・介護)
アンビスホールディングス(介護)
フレアス(訪問マッサージ)
日本ホスピスホールディングス(介護)

これ以外にも、弊社でお付き合いのある会社で10社以上は上場準備に取り組んでいます。

各社の上場時の目論見書を見てみると、公募による調達資金の使途として、事業規模拡大に向けた新規開設・出店資金と記載されている会社がほとんどです。目論見書の資金使途の項目には、確実性の低いM&Aの買収資金を記載することはできませんが、事業承継を拡大戦略の柱として記載している会社もあり、実際には多くの会社が、新設と買収の両睨みで拡大戦略をたて、資金調達をしていると予想されます。

その他にもファンドの資金を得て一気に拡大を目指す会社もあり、資金力のある既存の大手上場会社も含めて、熾烈な陣取り合戦が繰り広げられていると言えます。

そういう意味では拡大戦略も、たやすい道ではありませんが、一つ間違いなく言えるのは、「現状維持=衰退」ということです。自社の勝ち筋を見極め、リソースを集中配分するとともに、ノンコア事業についてはそれを得意とする事業者に譲り渡すことが結果的に全てのステークホルダーにとってプラスとなると思います。

弊社では、常時100社以上の売り手と4,500社以上の買い手のM&Aのお手伝いをしています。是非お気軽にご相談下さい。

【速水の眼】「現状維持=衰退」の環境で拡大するということ

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