【2025年最新版】訪問看護の売却・M&A完全ガイド~業界動向と譲渡の成功事例~
「人材不足で運営が限界…」「報酬改定に振り回されるのは疲れた…」「そろそろ引退を考えているが後継者がいない…」そんなお悩みを抱える訪問看護事業者様へ。本コラムでは、訪問看護事業のM&A(事業譲渡・売却)を成功させるための実務的なポイントを、最新の業界動向や当センターの成約事例を交えて詳しく解説します。
訪問看護とは
訪問看護は、病気や障害を持った方が住み慣れた地域やご家庭で、その人らしい療養生活が送れるように支援するサービスです。介護保険での訪問看護の場合には、65歳以上で要支援・要介護の認定を受けている人が対象であり、40~64歳の人は「16の特定疾病」に該当し、要支援・要介護認定を受けた場合に利用可能です。
また、訪問看護を利用する場合には、医師が必要と認めた要介護1〜5と認定された利用者に対し、家族の同意を得た上で、介護保険の居宅サービス計画に基づいた「訪問看護計画書」に沿って行われます。
事業者には、病院・診療所が訪問看護を実施するものと、独立した形態である訪問看護ステーションが実施するものの2種類があります。 訪問看護ステーションの場合、看護職員が常勤換算で2.5名以上が必置となることに加え、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士を配置することが認められています。利用者については、病院・診療所が実施する場合、その医療機関で受診している患者に限定されますが、訪問看護ステーションの場合には、主治医は限定されません。
| 指定訪問看護ステーション |
病院又は診療所である指定訪問看護事業所 ※介護保険のみ |
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| 看護師等の員数 |
・保健師、看護師又は准看護師(看護職員)常勤換算で2.5以上となる員数 うち1名は常勤 ・理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士指定訪問看護ステーションの実情に応じた適当数 |
・指定訪問看護の提供に当たる看護職員を適当数 |
| 管理者 | ・専従かつ常勤の保健師又は看護師であって、適切な指定訪問看護を行うために必要な知識及び技能を有する者 | ― |
【設備基準】
| 指定訪問看護ステーション |
病院又は診療所である指定訪問看護事業所 ※介護保険のみ |
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・事業の運営を行うために必要な広さを有する専用の事務室 ・指定訪問看護の提供に必要な設備及び備品等 |
・事業の運営を行うために必要な広さを有する専ら事業の用に供する区画 ・指定訪問看護の提供に必要な設備及び備品 |
出典:厚生労働省 訪問看護
訪問看護のM&Aが注目される背景
日本の高齢化が急速に進む中、訪問看護の需要は年々高まっています。厚生労働省の資料によると、訪問看護の事業所数は2023年時点で16,423カ所と報告されています。2022年の14,829カ所から10.7%増加しています。新規開設が活発になっている一方で、廃止・休止する事業所も増加しており、介護人材の慢性的な不足や報酬改定による収益圧迫など、経営環境は厳しさを増しています。そんな訪問看護業界でM&Aが注目される背景をご紹介します。
背景①:人材確保の困難
日本の看護職員数は長期的に増加傾向にあります。1990年には約83.4万人だった看護師等の就業者数は、2020年には約173.4万人に達しています。訪問看護ステーションや介護保険施設等で働く看護職員も増加していますが、年齢構成を見ると60歳以上の割合が顕著に増加しており、看護職員の高齢化が進行しています。
さらに、2022年度の訪問看護分野における看護師・准看護師の有効求人倍率は2.20倍と高水準であり、看護職員数は増加していても慢性的な人手不足が続いています。これは、生産年齢人口の減少と相まって、訪問看護事業者が人材を安定的に確保することが困難になっている現状を反映しています。
出典:厚生労働省 訪問看護 参考資料
背景②:高齢化による在宅医療ニーズの拡大
日本の高齢化率は2024年時点で29.3%に達し、今後も上昇が見込まれています。高齢者の増加に伴い、病院から在宅への移行が進み、訪問看護の需要が急増しています。厚生労働省は「地域包括ケアシステム」の推進により、在宅医療・介護の充実を図っており、訪問看護はその中核的役割を担っています。そのため、事業所数は増加しています。新規参入や規模拡大のためM&Aが注目されています。
背景③:小規模事業者の経営課題と事業承継
訪問看護ステーションの多くは小規模運営であり、人材確保や収益性の確保が難しい状況です。創業者の高齢化や後継者不在により、事業承継の必要性が高まっており、M&Aによる解決策が注目されています。
厚生労働省が医療法人や介護事業者の経営安定化の手段としてM&Aの活用を提言している背景もあり訪問看護業界でM&Aが活発化しています。
訪問看護M&Aの特徴3選
訪問看護M&Aの特徴①~営業権譲渡が中心(物件よりも人材と利用者)~
多くの訪問看護ステーションは賃貸物件で運営されており、M&Aでは不動産の売買ではなく、営業権(事業運営権)の譲渡が主流です。そのため、取得コストが比較的低く抑えられる傾向があります。
訪問看護M&Aの特徴②~介護保険・医療保険の両方に対応可能~
訪問看護は、介護保険と医療保険の両方で提供可能なサービスであり、収益構造が複雑です。M&Aでは、保険請求の割合や報酬改定の影響も評価対象になります。
訪問看護M&Aの特徴③~地域密着型の事業展開が多い~
訪問看護ステーションは、地域密着型で展開されることが多く、買い手は地元での拠点拡大や人材ネットワークの活用を目的にM&Aを検討します。
利用者の自宅を訪問するサービスであるため、利用者との継続的な信頼関係が事業価値に直結します。また、医師の指示書に基づいてサービスを提供するため、地域の医療機関との連携状況が評価に影響することが特徴です。
訪問看護事業者がM&Aを選ぶメリット
訪問看護M&A(売却・譲渡)のメリット・デメリットをご紹介します。
M&Aを選ぶ売り手にとっては下記のメリットが考えられます。
【M&Aを選ぶメリット(売り手側)】
・人材不足からの脱却
訪問看護は常勤看護師の配置が義務付けられており、人材確保が事業継続の生命線です。M&Aにより人材確保力のある大手企業の傘下に入ることで、採用力・教育体制・福利厚生が強化され、離職率の低下にもつながります。
・譲渡益(売却益)を得られる
事業の価値に応じた対価を得ることができ、老後資金や次の事業資金に充てられます。また、銀行から借り入れて事業運営している場合、譲渡益で銀行への返済も可能です。
・後継者不在問題の解決
創業者が高齢で後継者がいない場合、事業承継は大きな課題です。M&Aは第三者へのスムーズな事業引き継ぎ手段となり、従業員や利用者への影響も最小限に抑えられます。
・従業員の雇用継続と待遇改善
M&A先が大手企業であれば、従業員の雇用が継続されるだけでなく、待遇やキャリアパスの向上も期待できます。離職率の高い業界だからこそ、従業員の安心感は事業価値にも直結します。
・地域医療・介護ネットワークの強化
M&Aにより、医療機関や介護施設との連携が強化されるケースも多く、サービスの質向上や利用者の満足度向上につながります。
【M&Aを選ぶデメリット(売り手側)】
・人材の離職リスクがある
訪問看護はスタッフの個別対応力や信頼関係が重要な業種です。M&Aによる経営者交代や方針変更により、看護師が不安を感じて離職するケースも稀にあります。また、利用者にとっても、担当看護師との信頼関係でサービスを継続していることが多く、スタッフの変更や事業所の雰囲気の変化に敏感です。M&A後に「サービスの質が変わった」と感じると、他事業所へ乗り換える可能性があります。
※当社では多数の成約実績を基にしたノウハウで、しっかりとした雇用契約の引継ぎを譲受先に求めます。そのため離職リスクがかなり低減されております。
・利用者の離脱リスク
経営体制の変更により、利用者がサービスの質や方針の変化を懸念して離れる可能性があります。地域密着型の事業では、「顔の見える関係性」が重視されるため、引き継ぎの丁寧さが重要です。この点においても新しい体制へのしっかりとした説明ができれば問題なく進められることがほとんどです。ご不安がある場合は担当のアドバイザーに伝えておくことをお勧めします。
訪問看護の売却価格の相場は?
各業態により評価の仕方が変わってくるため、「売却価格の相場」を明確にはお伝えすることはできません。ここでは評価の際に重視されるポイントをご紹介します。
なお、具体的な金額が知りたい場合は、企業の売却価格を査定できるサービスを提供している仲介会社が多数ありますので、そのようなサービスの利用をおすすめします。
・看護師の在籍数
・PTやOTが在籍しており、リハビリの対応が可能
・医師との連携が十分に確保され、利用者の紹介を定期的に受けている
赤字経営や人材不足の事業所は、無償譲渡や低価格での売却となるケースも多数ございます。買い手企業の戦略や地域ニーズによっても価格は変動しますので、より正確な価格帯を把握しておくためにも、無料簡易査定の活用をお勧めします。
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訪問看護のM&A成約事例ピックアップ
当センターで実際にM&Aを経験された、訪問看護事業者様へインタビューを実施させていただきました。経験者の生の声だからこそ参考になるのではないかと思います。是非ご覧ください。
M&A成約事例①
成長するため買収して大きくする、ではなく売却して大きな企業へグループイン
訪問看護を運営されていた三縄様。会社のこれから、を考えて10年運営された会社の売却を決断されました。 訪問の時間が午前中、午後など大まかな設定に疑問を持たれ、 医療業界の常識を変える努力をされてきた三縄様のM&Aに至る経緯や当初検討されていた買い手から売り手へ変わった理由をお伺いいたしました。
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M&A成約事例②
黒字化への道のりを模索の中、本業の後継者が退職希望…従業員と利用者を守ったM&A成約事例
「こもれび訪問看護ステーション」を運営されていた合同会社えいわの若原社長は、本業とは別に訪問看護を運営されていました。しかし黒字化への道のりはまだまだ長く、試行錯誤されている際に、本業の後継者である息子様より転職をしたいと申し出がございました。本業との両立は難しいと判断をされ、今回譲渡を決断されました。
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他にも介護業界のM&A・売却・譲渡に成功された経営者様のインタビューを多く掲載していますのでご覧ください。
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まとめ
今回のコラムでは、訪問看護のM&A(売却・譲渡)について、訪問看護のM&Aにお悩みの経営者の皆様にむけ、特徴やメリット・デメリット、事例をご紹介しました。
訪問看護のM&Aについてお悩みの場合はぜひ、介護業界特化のM&A仲介、介護M&A支援センターにご相談ください。


