介護経営コラム

Column

【2025年最新版】訪問介護のM&A完全ガイド~後悔しない売却・譲渡の進め方~

更新日:2025年11月11日

「人材不足で運営が限界…」「他社との差別化ポイントが分からない…」「そろそろ引退を考えている」そんなお悩みを抱える訪問介護事業者様へ。本コラムでは、訪問介護のM&Aを進める上で後悔しない事業譲渡・売却ができるよう、実務的なポイントを最新の業界動向や実際の成約事例を交えて詳しく解説します。

訪問介護とは

訪問介護とは、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問し、日常生活を支える介護サービスを提供することです。具体的には以下の3つのサービスが含まれます。

  1. 身体介護:排泄、入浴や食事、更衣など、身体に直接触れて行う介助やその準備・後片付け。
  2. 生活援助:掃除、洗濯、調理などの家事の援助や薬の受け取り。
  3. 通院等のための乗車、降車の介助:訪問介護員による通院時の車両乗降や移動の介助、受診手続きの補助。

また身体介護には、治療食や流動食の調理、利用者との共同作業による家事方法の助言・見守り、条件下での医療的ケア(痰の吸引など)が含まれます。
訪問介護員になるには、介護福祉士資格や介護職員実務者研修(450時間)、介護職員初任者研修(130時間)の修了が求められます。生活援助では生活援助従事研修(59時間)の修了でも可とされています。また、訪問介護事業所にはサービス提供責任者が配置され、計画書作成、相談業務、訪問介護員の指導などを担当します。M&Aの評価においても引継ぎ可能かを重要視される人材です。

【人員基準】
訪問介護職員等 常勤換算方法で2.5以上
サービス提供責任者 介護福祉士、実務者研修修了者、旧介護職員基礎研修修了者、旧1級課程修了者
管理者 常勤で専ら管理業務に従事するもの

出典:厚生労働省 訪問介護

訪問介護のM&Aが注目される背景

訪問介護業界では、施設の増加や需要増加にもかかわらず、人材不足、倒産リスク、収益性の課題が伴います。さらに、厚生労働省調査によれば超高齢社会の深刻化に伴い要介護者数が増加。2030年には要介護・要支援認定者数が1,000万人を超えると予測されています。そのため、経営基盤を強化し、小規模事業者の脱却や事業承継を目的としたM&Aの動きが加速しています。

背景①:人材不足と採用難

介護職は慢性的な人手不足です。特に訪問介護は単独行動が多く、離職率も高い傾向にあるため、M&Aによって人材を確保し、既存スタッフの負担軽減やサービスの安定化を図る動きが活発です。

背景②:競争激化と差別化の必要性

訪問介護は初期投資が少なく参入しやすいため、事業所数が増加し続けています。M&Aによってサービスの質を高め、他社との差別化を図る戦略が取られています。差別化が難しいと判断する事業所も多くM&Aの相談が増加しています。

訪問介護 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
施設・事業所数 34,825 35,075 35,612 36,420 36,905

出典:令和5年介護サービス施設・事業所調査の概況 参考表 施設・事業所数(基本票)

背景③:地域包括ケアシステムへの対応

国が推進する「地域包括ケア」の中核として訪問介護が位置づけられており、地域密着型の事業展開が求められています。地域に根差した事業の継承・拡大を目的としたM&Aが増加しています。

訪問介護M&Aの特徴3選

訪問介護M&Aの特徴①~事業譲渡が主流~

多くの訪問介護事業所は賃貸物件で運営されているため、拠点の営業権を対象とした事業譲渡が一般的です。
営業権の譲渡は、「事業譲渡契約」や「営業譲渡契約」として法的に整理され、買い手は既存の事業基盤を活用して即座に運営を開始することが可能になります。事業譲渡では、既存の利用者との契約、スタッフ、ノウハウ、地域の信用などをそのまま引き継ぐことができます。
訪問介護事業所は、個人事業主や小規模法人が多く、会社譲渡に不向きなケースも多いです。事業譲渡は、こうした事業者が柔軟に出口戦略を描ける手段として活用されています。

訪問介護M&Aの特徴②~規模拡大を目指す買い手市場~

既存の大手介護事業者が地域での競争力を高めるため、積極的にM&Aを利用しています。特徴①の理由で、買い手は、新規開業に比べて初期コストや立ち上げ期間を大幅に短縮でき、譲受後すぐにサービス提供が開始できます。

訪問介護M&Aの特徴③~利用者データの重要性~

利用者数や契約者層(地域性・年齢層・介護度)などが、M&A評価の重要な要素とされています。訪問介護は利用者数に比例して収益が構成されるため、安定した利用者数を持つ事業所は高く評価されます。また、要介護度の高い利用者が多い場合、サービス提供頻度が高くなり、報酬単価も上がる傾向があります。

訪問介護事業者がM&Aを選ぶメリット

M&Aを選ぶ売り手にとってのメリットとしては下記が考えられます。
【M&Aを選ぶメリット(売り手側)】
・後継者不在でも事業承継が可能
→親族や社内に後継者がいない場合でも、第三者への譲渡で事業を継続できます。
・従業員や利用者の雇用・サービスを守ることができる
→廃業ではなく譲渡にすることで、スタッフの雇用や利用者の介護サービスが継続されます。
・譲渡益(売却益)を得られる
→事業の価値に応じた対価を得ることができ、老後資金や次の事業資金に充てられます。
また、銀行から借り入れて事業運営している場合、譲渡益で銀行への返済も可能です。
・廃業コストの回避
→廃業時に発生する退職金、契約解除費用、設備処分などのコストを回避できます。
・精神的・時間的負担の軽減
→経営から退くことで、日々の業務負担や将来への不安から解放されます。現場が好きで管理業務から手を引きたいという想いからご相談いただくことも多々あります。

【M&Aを選ぶデメリット(売り手側)】
・人材の離職リスクがある
訪問介護はスタッフの個別対応力や信頼関係が重要な業種です。M&Aによる経営者交代や方針変更により、ヘルパーが不安を感じて離職するケースも稀にあります。特に登録ヘルパー中心の事業所では、雇用形態が不安定なため離職しやすい傾向があります。また、利用者にとっても、担当ヘルパーとの信頼関係でサービスを継続していることが多く、スタッフの変更や事業所の雰囲気の変化に敏感です。M&A後に「サービスの質が変わった」と感じると、他事業所へ乗り換える可能性があります。
※当社では多数の成約実績を基にしたノウハウで、しっかりとした雇用契約の引継ぎを譲受先に求めます。そのため離職リスクがかなり低減されております。

・地域密着型ゆえの引き継ぎ難
訪問介護は地域のケアマネジャーや医療機関との連携が重要です。M&Aによって経営者が変わると、紹介ルートや信頼関係がリセットされる可能性があります。買い手との面談などでしっかりとすり合わせを実施することが重要です。

・賃貸物件の契約問題
多くの訪問介護事業所は賃貸物件で運営されており、物件契約の引き継ぎができない場合は移転が必要になります。これにより、スタッフや利用者の通勤・訪問ルートに影響が出ることもあります。この点においても買い手との面談時にしっかりと話し合っておきましょう。但し、訪問介護事業所の多くはアパートの一室などで運営されていることも多いことから、代替ができる事業所が多いです。

訪問介護の売却価格の相場は?

売却価格は事業規模、立地条件、財務状況、利用者の属性などに左右されます。厚生労働省によると、訪問介護事業所の平均年間収入は1拠点あたり約1億円とされ、収益性の高い事業所は相場を上回る価格で取引される傾向があります。
詳細な査定を希望する場合は、専門機関と相談し客観的な価格算出を行うことが推奨されます。

【当センターの売却価格査定サービス】
どのくらいの譲渡額が付くのか、60秒で簡単無料査定!


無料簡易査定で会社がいくらで売れるのか確認できます
今すぐ売却相談をしたい方はこちら


訪問介護のM&A成約事例ピックアップ

当センターで実際にM&Aを経験された、訪問介護事業者様へインタビューを実施させていただきました。経験者の生の声だからこそ参考になるのではないかと思います。是非ご覧ください。

~M&A成約事例~
コロナの流行、後継者不在のなか自身も高齢に…従業員と利用者を守るための大きな決断
訪問介護、居宅介護、移動支援「あけぼの」を経営する株式会社フルショウの代表である古庄様は、数年前から従業員の採用難に見舞われ、お一人で経営を行っていること、後継者がいないこと、そして新型コロナの流行が原因となり、リタイアを決断されました。一緒に働いてくれている従業員や「あけぼの」を頼りにしてくれている利用者を守るためにも早めに動いてよかったと語ってくださった古庄様。実際に譲渡をご経験されたご心境と現在のお気持ちを古庄様に伺いました。
成約事例インタビューをもっと読む

他にも介護業界のM&A・売却・譲渡に成功された経営者様のインタビューを多く掲載していますのでご覧ください。
インタビューをもっと読む

まとめ

訪問介護市場は高齢化や社会的な背景により、今後も需要が高まる見込みです。しかし、人材不足や収益性の課題が経営に影響を与える中、M&Aは課題解決の有効な手段となっています。今回のコラムでは、訪問介護のM&A(売却・譲渡)について、訪問介護のM&Aにお悩みの経営者の皆様にむけ、特徴やメリット・デメリット、事例をご紹介しました。
訪問介護のM&Aについてお悩みの場合はぜひ、介護業界特化のM&A仲介、介護M&A支援センターにご相談ください。

無料簡易査定で会社がいくらで売れるのか確認できます
今すぐ売却相談をしたい方はこちら