マーケ便り

2023年4月12日

Vol.1 社会福祉法人の譲渡~介護ビジョンのインタビューより~

介護ビジョン3月号に弊社がM&Aを担当させていただきました社会福祉法人靖心会を事業譲渡された金子様の記事が載りました!!

そこでそのインタビューにも参加させていただきました武田から、記事をご覧になっていない方、またはもうちょっと知りたいという方のために担当アドバイザーからのコメントも加えながら案件の情報をご案内いたします!

今回ご縁があって弊社がサポートをさせていただきました金子様は千葉県船橋市で55年以上幼児教育を手掛けていらっしゃる方です。現在も2つの学校法人の理事を務めていらっしゃいます。 子供たちとの交流のために老人施設を作ろうと思われ、昭和62年に社会福祉法人を設立、平成2年から令和3年までの32年間特別養護老人ホーム、ショートステイ、デイサービス、居宅介護支援の4事業を運営されてきました。

平成2年はまだ措置の時代で、特別養護老人ホームの入居者は事業者がさがすのではなく自治体から紹介されるというスタイルでした。

当時社会福祉法人は福祉、という観点で運営されるため、理事が報酬を受け取ることはできず、無償で運営するという今では考えられないスタイル。その流れのまま運営されてきた施設は残念ながら建物の老朽化と大部屋時代から個室志向へのニーズになかなか合わず、赤字経営が続いていました。

5~6年前から譲渡を検討されていた金子様。そんな中コロナで入所のための対面での面談ができなくなり、入居者が減ってしまう、または入居の方が病院に入院してしまうなどがあり、ますます苦境になってしまいました。

そんな折に弊社のダイレクトメールが届き、ご連絡いただきましたのが、ご縁の始まりでした。ご担当させていただきましたのは弊社のエグゼクティブコンサルタントの土居です。少しだけ土居のお話を。

「1986年、広島大学卒業。
株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)入社。
1993年、リードエグジビション ジャパン株式会社に入社。IT、製造技術、宝飾、農業等の各分野で、展示会の総責任者を歴任し、2004年、同社取締役就任。2007年、同社常務取締役就任。2017年、株式会社ユニマットプレシャス取締役副社長就任、2018年、当社に入社。」「弊社HPから抜粋」
というのが経歴ですが、社内の人間から見た土居はとっても気さくな方です。
好奇心旺盛でとても気づかいができる方、という印象があります。今回の案件のように役所も前例がなく、二の足を踏まれるような案件でもこれまでの経験や、持ち前の探求心で解決していきます。
ですので、売り手オーナー様からとても信頼されています。

金子様からも絶大な信頼をいただいたようで、インタビュー中にもたびたびお話しいただきました。実はインタビュー中、あまりに土居の話がたくさん出てきたので、ちょっとびっくりしてしまいました。
土居が何気なくしている細やかな気配りや豊富な知識のなせる業、ですね!

DMをご覧いただいた金子様からご相談をいただき、初回面談としてお話を伺いました。3時間ほどお話ししたとのこと(金子様談)。
金子様のご希望は「社会福祉法人で運営している介護事業を、利用者様と従業員ごと引き受けてくれること」という事業譲渡のスキーム。譲渡対価も最初は0円で構わない、ということでしたが、法人に損害を与えるということで0円は法律でNG。(0円でも正当性があれば問題ないのですが、今回は企業価値が高かったため、0円ではなく適正価格となりました。)
企業価値を算定し、適正価格を出して買い手様を募集しました。
(簡易版はWEBでチェック可能です!もっと詳しく知りたい、全国平均との比較を知りたいという方はお問い合わせください!)

赤字、ということもあり、買い手はつかないのではと思ってらっしゃった金子様。
複数の企業から手を挙げて頂いたのですが、金子様の今後も施設を存続させていきたい、という思いを汲んで、しっかり引き継いでもらえる会社かどうか、実績や、会社規模から2社に絞りました(土居談)。

そのうちの1社へ絞った経緯は雑誌でも紹介されておりますが、やはり譲渡先企業様の想いと入居者様、従業員を任せられるという信頼から1社に決定されました。

そこからは譲渡のための準備です。
社団福祉法人という特殊な法人が運営する事業のため、関係省庁からの許可が必要になります。
流れとしては船橋市からの承認、補助金の承認(国、県、市)をとっていく必要があります。

船橋市からの承認は社会福祉法人の事業を譲渡するM&Aは前例がない、ということで市の担当者への説明ではたくさんの質問をいただきました(ちなみに船橋市との初回面談では5つの部署から15名の船橋市職員が参加されました)。あまりにも色々聞かれるので、船橋市は譲渡させてくれないのか、と金子様は心配されたそうですが、土居からM&Aの流れについて、今回のスキームについて詳しく、そして細かく丁寧に説明をすることで、無事承認していただくことが出来ました。

金子様は施設を建設するにあたり、補助金を利用されました。
当時千葉県で補助金を受け取るためには50床以上が必要でした。また補助金は国、千葉県からだけでなく周辺地域の市(船橋市、市川市、習志野市、浦安市、八千代市、松戸市)からも出ており、8つの行政に対し補助金申請を行う必要がありました。当時あまり老人福祉施設はなく、周辺地域の市からベッドを確保するためにベッド当たりいくら、という形で補助金が出ていたそうです。

この補助金なのですが、実は50年以上社会福祉法人の運営をしない場合は返還が必要となっていたのです。今回の譲渡時は運営開始から約35年。一見、補助金の返還が必要になると思われましたが、補助金のルールを1つ1つ行政とも確認することで、今回は返還の義務がないということが結論付けられました。金子様、とってもほっとされていたと思います。
また関係省庁への申請と同時に実施していたのがDD。デューデリジェンスと呼ばれる買収監査です。

こちらは買い手様によって実施内容や方法はさまざま。
とっても厳しい買い手様もいれば、そうでもない買い手様もいらっしゃいます。
今回も財務、法務、ビジネスなどの観点から調査が行われました。ここで一番大変なのが提出資料の作成です。総勘定元帳や賃借対照表だけでなく、従業員情報やこれまでの離職率、運営の部分では平均的な要介護度など多岐にわたってきます。
こちらも土居のこれまでの経験からお手伝いさせていただき、無事完了しました。

この二つの山場を越え、もう一つの山場、従業員の方と利用者様への説明になります。
記事にも出ていましたが、金子様は一人一人に説明のお手紙をお送りし、従業員の方には買い手様と一緒に説明会を実施されました。
「運営者が変わっても、ほかは何も変わらない」この部分をきちんと説明することで現場での混乱もなく移行することが出来ました。

ここまでを最初の市役所への確認の訪問から約9か月で行いました。
その間の金子様と土居のメールのやり取りの数は膨大でした。
金子様はメールをすべて印刷してお持ちでしたので、そのファイルを見せていただいたのですが、大分分厚いファイルでした。
こまやかな対応がそれを見るだけでもわかりますね。

そしてさすがなのが、スケジュール管理です。
実はこの記事を書くにあたり、土居の作成したファイルを見ているのですが、市役所への承認申請時に作成しているスケジュールがほぼきちんと守られているのです。
もちろん、承認時時間がかかることも見越し、実行の日にちに2ヵ月ほどバッファーを持ったものではありましたが、そのなかに収まるようにスケジュールを調整しているのはそう簡単なことではないのではと思います。

最後に土居から今回のM&Aへのコメントです。
「今回の社会福祉法人の事業譲渡は弊社で初めて取り扱うケースでしたが、行政でも事例がなく、相談しながら行政とともに進めさせていただきました。
国は、赤字経営で事業継続が難しくなっている介護事業を他社に譲渡し、立て直してもらうことで事業継続を図ることを目指しており、そのために事業譲渡マニュアルも作成しています。
しかしながら、現実的にはまだまだ実例がなく、今回のケースがその先駆者となる事例ということで非常に意義があったと思います。
利用者、職員、地域にとって事業を継続することは非常に重要ですので、このケースが参考事例になれば幸いです。
いいお相手に譲受して頂きよかったです。」

それぞれの専用フォーム、
またはお電話( 0120-377-051 0120-377-051 )より、お気軽にお問合せください。

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