2023年12月22日
介護保険制度

令和6年度介護報酬改定で大規模化が加速する

令和6年度介護報酬改定で大規模化が加速する

令和6年度介護報酬改定は、大規模化を促進するための改定であり、事業所自体の質の向上を求める改定であると感じている。

巷では、処遇改善の実施とプラス改定である旨の報道が先行して、楽観的な雰囲気が漂っている。実際にセミナーを対面で開催することが通常となった今、会場の参加者の表情には危機感が乏しい。

しかし、時間の経過と共に皆、厳しい顔つきとなる。終了時には、大変だという雰囲気が漂い、ボリュームがありすぎて消化出来ないという声が充満する。そうなのだ。令和6年度介護報酬改定は過去最大規模の改定であり、介護事業者を直撃する改定である。経営陣は、最大限の危機感を持って挑む必要がある。

今後のスケジュール

令和6年度介護報酬改定については、12月4日の審議の後、運営基準の変更部分がパブリックコメントに挙げられている。1月3日までの公示の後、決定となる。また、12月8日には、居宅介護支援事業所の介護予防支援事業の許認可についてと、全事業所対象の財務諸表の提出の義務化についての介護保険法施行規則の一部を改正する省令案がパブリックコメントに公示された。この財務諸表の提出の義務化も事務員などが雇用されていない小規模な事業所には大きな負担となるだろう。12月11日には令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)が出されて審議は、審議報告の承認に向けて最終段階に入っている。

各サービスにおける介護報酬改定の方向性

1.デイサービスと訪問介護の複合型サービス

そのような中で、新たなデイサービスと訪問介護の複合型サービスは、今回の創設が見送られている。昨年の介護保険部会で創設が決定し、5月12日に通常国会で成立した介護保険法にも位置づけられ、介護給付費分科会において、許認可要件や報酬体系まで示された上での見送りは異例である。しかし、モデル事業などの実証が全く行われず、机上の理論だけの見切り発車であったことも事実で、今後の3年間で実証を行って、改めて3年後に審議すると言う結論は納得が出来る。

2.通所リハビリテーション

通所リハビリテーションでは、大規模減算の縮小が打ち出された。基本報酬に於ける区分で、大規模ⅠとⅡが統合されて通常規模との2区分の報酬体系となる。さらには、リハビリテーションマネジメント加算の算定率とリハ職の配置次第では、大規模居事業所でも通常規模の報酬を算定出来ることは画期的だ。これによって報酬面での大規模化の不利を払拭して、大規模化を推進する方向が明らかになった。

3.居宅介護支援

居宅介護支援事業所では、介護支援専門員1人当たりの取扱件数が、39件から44件に拡大され、ケアプランデータ連係システムを導入し、事務員を配置している場合は49件とされた。また、予防ケアプランのカウントが二分の一から三分の一となったことは賛否両論が渦巻く。明らかに言えることは、この改定項目は大規模な居宅介護支援事業所に非常に有利であると言うことだ。ICT化が促進し、事務員が配置され、ケアプランデータ連係システムが導入されていれば、業務の効率化が促進されているために担当件数の拡大は容易であろう。もちろん、ケアマネジャー個々人のスキルや担当の難易度などに左右されるが、全体的に担当件数の底上げは容易である。逆に、小規模な居宅介護支援事業所には重荷となるだけであろう。モニタリング訪問の特例でのTV電話等の活用も同様だ。今回の改定で、小規模事業所と大規模事業所の収益性の格差は一層、拡大して行くだろう。

BCP、虐待防止措置への対応

また、BCPの作成と高齢者虐待防止措置への未対応事業所には減算が適用される。BCPは令和8年4月からであるが、虐待防止措置は来年4月から適用される。注意すべきは、BCPの義務化は令和6年4月であることには変わりはないという事だ。減算とならなくても、運営指導で運営基準違反として指導対象となる。やはり、BCPの作成と高齢者虐待防止措置は年度内に完了しておくことが必要だ。この2つの課題についても、小規模事業所ほど、対応が遅れている。この傾向は、介護サービス全体に言える傾向だ。

報酬改定は小規模事業所へのさらなる逆風に

介護事業の経営モデルでは、スケールメリット、規模の利益が重要となる。厚生労働省は大規模化を推奨している。11月10日に令和5年度介護事業経営実態調査結果が公表された。利用者数が少ない、すなわち小規模事業所ほど赤字である。そして、利用者数が多い、事業所規模が大きい事業所ほど収支差率が高くなる。これは、いずれの介護サービスにも言える傾向だ。即ち、同じ事を同じようにやっていても、事業所規模が大きくなるほど、手元に残る利益が高くなる。これをスケールメリット、規模の利益と呼ぶ。令和6年度介護報酬改定によって、更に大規模化が加速するであろう。逆に、小規模の事業所運営はより厳しさを増す。同一建物減算の適用の方向も、小規模事業所には逆風となる。コロナ禍が終わり、時代は新たな時間に移行が進んでいる。

令和6年度介護報酬改定で大規模化が加速する

図は、3年毎に行われる各年度の介護事業経営実態調査結果から、事業規模別の収支差率をグラフ化したもの。平均して、事業規模が大きくなるほど収支差率が高くなる傾向が見て取れる。

ライター紹介
小濱 道博
小濱 道博 氏
小濱介護経営事務所 代表

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