2023年11月17日
介護保険制度

令和6年度介護報酬改定のゆくえ

令和6年度介護報酬改定のゆくえ

令和6年度の介護報酬改定は6年に一度の診療報酬との同時改定であり、障害福祉サービス等報酬改定も加えたトリプル改定となります。

また、新型コロナの感染症法上の位置づけが5類となった後の初めての報酬改定であり、大きな変化と厳しい改定内容の予測も囁かれています。介護事業者は、その変化の方向性を読み解き、次回改定に備えた対策をしっかりと進めていくことが重要であり、以下に、改定のゆくえを論考したいと思います。

いよいよ、介護給付費分科会における次期改定に向けた議論が本格化しており、各サービスの具体的な見直し内容も示され始めました。年内中には、全ての議論が終了する見通しとなっています。合わせて、全体改定率の決定も年内に行わることとなります。

コロナ禍と、物価高騰による大きな影響を受けている介護事業者の状況や、世の中の賃上げ気運に合わせて、介護従事者も、大幅な処遇改善が求められており、大きなプラス改定が必要であると思います。いずれにせよ、改定に向けた動きは最終局面を迎えています。

その後、年が明けて、例年通りであれば、1月後半から2月中旬ごろの時期に、全てのサービスの単位数、見直しの中身が発表されることとなります。しかしながら、現在、報酬改定の施行時期を例年通りの4月ではなく、6月実施の可能性についても検討されています。同時改定となる診療報酬は6月実施の可能性が高まってきており、介護報酬改定についても時期を合わせるべきではないかと問題提起されています。現時点では、まだ施行時期は確定しておりませんが、仮に6月改定となれば、詳細発表のタイミングが、1カ月程度後ろ倒しとなる可能性はあるかもしれません。

また、今般、政府は補正予算による追加経済対策を閣議決定し、来年2月から介護職の月額6000円の処遇改善が行われることとなりました。これはあくまで税金による対応であり、利用者への負担が求められるものではありません。

ただし、まず来年2月からの税金による先行した処遇改善が行われ、4月もしくは6月の改定において、この6000円は介護報酬に取り込む形になるのだと思います。

また、処遇改善関連の加算については、現在3種類となっておりますが、1本化の方針が示されていることから、1本化された新処遇改善加算に6000円が上乗せされることになると思います。更には、年内で決定される全体改定率の数字次第では、更なる処遇改善の上乗せの可能性もあると思います。

令和6年度介護報酬改定の基本的な視点

ここからは、令和6年度介護報酬改定の中身についての見通しを論じていきたいと思います。

令和5年10月11日に開催された介護給付費分科会において、「令和6年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)」が示されています。

4つの基本的な視点として、

①地域包括ケアシステムの深化・推進

②自立支援・重度化防止に向けた対応

③良質な介護サービスの確保に向けた働きやすい職場づくり

④制度の安定性・持続可能性の確保

とされています。

これは、令和3年度つまり、前回の介護報酬改定で示された5つの分野横断テーマを踏襲した考え方となっており、前回改定では、「自立支援・重度化防止」「科学的介護」「生産性の向上」といった新しい概念に基づく見直し項目でありましたが、トライアル的な導入の意味合いが強く、次期改定において、これらが本格的な導入へと繋がっていくことが推察されます。合わせて、「認知症対応」「医療連携・看取り」「ケアマネジメントの公正中立性」といった以前より課題指摘されていた項目に対する拡充も、次期改定のポイントとなってくると思います。

プラス改定が想定されるサービスとマイナスが想定されるサービス

各サービス個々についての具体な見直し案も示され始めていますが、当然ながら、サービスごとの、プラスとマイナスが織り交ざった濃淡のついた改定となることは間違いありません。現時点での私の見立てでは、プラスの評価を受ける可能性が高いサービスは、施設では、特別養護老人ホーム。在宅では、通所介護、訪問介護、居宅介護支援などを予測しています。

いずれも、コロナ禍での影響が大きく、収益環境が悪化傾向にあることや、圧倒的なヘルパー不足の状況や、居宅介護支援においては、ケアマネジャーの業務過多や、成り手不足など様々な問題指摘が行われており、次期改定においては対策を講じるためにも、プラスの改定影響を受ける可能性が高いと思います。

他方で、厳しい改定となる可能性のあるサービスは、サービス付き高齢者向け住宅や、住宅型有料老人ホームなどの集合住宅であり、同一建物減算の更なる措置が講じられる可能性や、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、定期巡回型随時対応型訪問介護看護は、総合マネジメント体制強化加算の基本報酬への組み込みが検討されており、収益へのマイナス影響が危惧されています。更には、訪問看護は、看護師の配置要件の見直しの可能性があるなど、今後の議論を注視していくべきサービスであると思います。

まとめ

以上、令和6年度介護報酬改定のゆくえについて論考してまいりましたが、介護事業者は、次期改定は将来の大改革に向けたターニングポイントとなる改定であると理解し、変革に向け、経営・運営の在り方、現場の介護の在り方を見直していかなければなりません。次期改定は、マイナス改定となる可能性は低いことからも、3年間の変革に向けた準備期間が与えられたと捉えて、きたる大変革・大競争時代に生き残るために、制度改革・報酬改定のゆくえを正しく読み解き、必要な備えを行っていくことが大切であります。

ライター紹介
斉藤 正行
斉藤 正行 氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

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