2023年11月6日
介護保険制度

令和6年度介護報酬改定でのプラス改定実現は困難か?

令和6年度介護報酬改定でのプラス改定実現は困難か?

10月18日の朝日新聞に、政府内には月6千円引き上げる案があり、最終調整している。来年2月の実施を目指す。と言う記事が載った。
この6,000円相当の処遇改善の実施を提言した自民党の厚生労働部会の重点事項の中身が問題だ。この中で、医療・介護・障害福祉等分野に於ける物価高騰への対応等という提言がある。
提言では、支援と言う言葉を使っている。すなわち、物価高騰対策は、補助金・助成金の類での対応であることが推測され、介護報酬への反映は最低限でのものである可能性が高い。そもそも、物価は一過性の問題であり、今の状況が永続するものではない。
一時期、卵の値段が300円を超えた時期があった。あれは、鳥インフルエンザが原因で、WHOが終息宣言を行った今、卵の値段は徐々に下がりつつある。介護事業に多大な影響を与えたコロナ禍の3年弱においても、介護報酬に反映されたのは、令和3年4月からの半年だけであった。それ以外は、掛かり増し経費などの補助金、助成金の類で対応したことからも明らかだ。
そもそも、現政権が掲げる重点施策「異次元の少子化対策」費用3.5兆円の資金財源が未だに確定しない。この捻出に社会保障費用を充てるという憶測も強くある。
自己負担2割の対象者拡大議論での審議結果も大きな影響を与えるだろう。令和6年度介護報酬改定については、大きなプラス改定となる要素が、実は少ないことに気づく。そのため、現実的には3回連続で1%に届かないプラス改定を予想している。
介護職員処遇改善加算の一本化と加算率の引き上げの可能性がある中で、その増額部分もプラスの改定率に含まれる。実質的にマイナス改定の可能性も高い。

在宅サービスの二巡目の審議が開始

そんな中で、介護報酬審議は第二ラウンドに移った。
12月中旬の審議終了まで、残り2月を切ったことになる。今回の改定審議の大きなテーマが、介護報酬の簡素化と指定基準の緩和である。
そうした中で、10月23日と26日の介護給付費分科会に於いて、在宅サービスの二巡目の審議が行われた。
23日は、定期巡回サービス、小規模多機能型、看護小規模多機能型などが論点に上がった。
まず、3つのサービスに共通する「総合マネジメント体制強化加算」が基本報酬に包括される方向が示された。これも介護報酬の簡素化の一環であるが、サービスを提供する事業者側からは、戸惑いの声が上がった。
月に1000単位という大きな加算である。過去の包括化の事例を見ても、必ずしも現行の報酬に1000単位が乗ることは無い。実質的に減収に繋がった事例が多い。
さらに、区分支給限度額から除外されている加算である。その理由は、福祉用具貸与などを併用する利用者に限度超過のリスクにある。
今回、基本報酬に包括された場合には除外の特例にはならない。限度超過のリスクが現実化することへの懸念もある。

通所介護、通所リハビリテーション、ショートステイの行方

26日には、通所介護、通所リハビリテーション、ショートステイなどが議論された。この中で、通所介護の個別機能訓練加算に見直しが提案された。

在宅サービスの二巡目の審議が開始 第229回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料

区分Ⅰ(ロ)という高い報酬単位の区分では、機能訓練指導員の配置が二名体制であり、かつ、一名は常勤専従で勤務時間のすべてで機能訓練指導員として配置が必要である。
しかし、現実的には、勤務時間を通じて機能訓練を実施することは無いとして、機能訓練の時間帯だけの配置に緩和することが示された。しかし同時に、非常勤配置で人件費が下がるという理由で、報酬単位の減額も示された。
これも事業所に取っては減収に繋がる。また、人員基準で非常勤となったからと言って、常勤で雇用契約した職員を非常勤として勤務時間を減らすことも出来ずに人件費は持ち出しとなるだろう。

その他にも、複数の加算で、上位区分を設ける代わりに、現行の加算区分を減額する手法が行われる。
上位区分の算定要件を満たせない事業所は減収となる。新区分の報酬を、下位区分を減額する事で賄うのだから、トータルでは変わらない。
この手法は、前回の令和3年度改定でも多用された。入浴介助加算などである。しかし、上位区分の算定率が10%に満たない状況で、結局は加算の単位が減額されただけというのが実態である。

令和6年度介護報酬改定でのプラス改定実現は?

このように、介護報酬の簡素化、人員基準の緩和という名の下に、加算の基本報酬への包括化と加算単位の減額の方向性が出た。
令和6年度介護報酬改定は、決して楽観視出来ない。しかし、加算等の単位が減額となっても、最終的に基本報酬がプラスとなり、トータルで改定率がプラスとなれば問題はないのだが、それも期待薄かも知れない。
業界団体ヒヤリングにおいて、大部分の関係団体が介護報酬のアップを要求し、それが必然である意見が高まっている。しかし、最初に記した理由で、介護報酬改定に物価高は、ほとんど反映されないだろう。危機感を持って、残りの改定審議の推移を見守りたい。

ライター紹介
小濱 道博
小濱 道博 氏
小濱介護経営事務所 代表

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