2025年3月26日
事業運営

「介護職員人数が初の減少。大幅処遇改善に向けた対策が不可欠」

一般社団法人全国介護事業者連盟

理事長 斉藤正行

介護職員人数が初の減少。大幅処遇改善に向けた対策が不可欠

介護業界最大の課題である人材確保

介護業界にとっての最大の課題は人材確保であることは周知の通りであります。厚労省は2023年度の介護職員数が調査来初めての減少となる212万6千人(前年度比2万8千人減)となったと発表され、業界に大きな激震が走っています。 ただし、この発表にいたる以前に2022年度の介護職員の入職超過率が初めてマイナスとなったデータが以前に示されており、今回の数字はそれを受けた結果数字であるので、目新しいデータではありません。 また、入職超過率は翌年にはプラスに改善されており、今後も継続的に介護職員が減少していくわけでないことは知っておくべきです。とはいえ、2040年までに介護職員を57万人増やす必要がある中で、大変危機的な人材確保状況であることは間違いありません。

処遇改善の重要性

人材の確保に向けた最優先課題は言うまでもなく処遇改善です。介護従事者の所得は年々少しずつですが、着実な上昇をしています。しかしながら、近年の物価高の影響による他産業の賃上げには遅れており、全産業平均との所得差はまた開き始めています。
介護職員の全国平均年収は300万円代の半ばとされています。全産業平均年収は400万円代の半ばであり、年収で100万円近い開きがあります。この差をいち早く埋めると同時に、私は介護の仕事は専門性の高いプロフェッショナルな仕事であるから、他産業以上の所得水準である平均年収500万円を目指すべきであると考えています。
介護従事者の所得を大幅に引き上げるためには、これからの2年間が極めて大切です。2027年4月の報酬改定までに、これから3度の賃上げの機会があります。まず1度目は、今年の7月以降です。 政府は昨年末の補正予算において、介護職員1人当たり5万4000円程度(9000円×6カ月間)の補助金支給を決定しており、今年6月までの手当が予算化されています。7月以降の処遇改善の対策が必要であり、今国会において審議されている令和7年度予算案が可決された上で、年度代わりの早い時期に補正予算の検討可能性もありえます。
次に、2度目の機会は、令和8年度(2026年4月)からの処遇改善の検討です。前回の報酬改定において0.98%分の処遇改善加算が上増しされましたが、2年分(令和6年度と令和7年度分)の予算として確保されており、その後の状況を踏まえて令和8年度分の処遇改善の検討可能性はすでに示されています。2026年4月の新たな処遇改善策が期待されます。
最後の3度目の機会は、令和9年度介護報酬改定における更なる処遇改善加算の上増しです。物価高が継続される予測の中で大きなプラス改定を実現し、処遇改善加算の更なる簡素化とともに大きな単位数増を期待したいと思います。

最後に

この3度の機会において、令和9年度(2027年4月)より、介護従事者の平均所得の500万円の実現を業界が一致団結して声をあげて、目指していきたいと思います。

ライター紹介
斉藤 正行
斉藤 正行 氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
立命館大学を卒業した後、株式会社ベンチャー・リンクに入社。飲食業のコンサルティング、事業再生などを手がける。 その後メディカル・ケア・サービス株式会社に入社し、「愛の家」ブランドでグループホームを全国に展開し、取締役運営事業本部長に就任。 2010年に、株式会社日本介護福祉グループへ入社。「茶話本舗」ブランドで小規模デイサービスをフランチャイズ展開し、取締役副社長に就任。 2013年に、株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立。 一般社団法人日本介護ベンチャー協会の代表理事、介護業界最大級のイベント「介護甲子園」を運営する一般社団法人日本介護協会副理事長、 その他にも多くの介護関連企業・団体の役員・顧問を務めている。