「令和6年度追加経済対策による介護事業者への支援策」
一般社団法人全国介護事業者連盟
理事長 斉藤正行
政府は「新たな総合経済対策」を取りまとめ、今年度補正予算案が臨時国会において衆参で採択されました。
介護分野に対する支援策の中身は、『足元の人材確保の課題に対応する観点から、令和6年度報酬改定において講じた医療・介護・障害福祉分野の職員の処遇を改善するための措置を確実に届け、
賃上げを実現するとともに、生産性向上・職場環境改善等による更なる賃上げ等を支援することとし、
職員の負担軽減・業務効率化、テクノロジー・ICT機器の活用、経営の協働化、訪問介護の提供体制の確保、障害者就労施設の経営改善といった取組を支援する。』と示されています。
介護従事者へのさらなる処遇改善
介護従事者への更なる処遇改善として、今回の報酬改定での処遇改善加算の1本化と単位数の上増しに加えて、来年に更なる対応が行われます。 予算は806億円。介護職員1人辺り月9000円の6ヶ月分として5,4万円の改善額となります。支給対象は、処遇改善加算の算定事業所であり、生産性向上や職場環境改善への取組みも算定要件となります。 今回、職員への支給のみに限定されておらず、事業者の支援費としての活用も可能なため、職員の処遇改善に寄与するか懐疑的な側面もあります。 加えて、支給対象に居宅介護支援が外れており、現場のケアマネジャーからの強い反発も予測されます。 ただし、居宅介護支援に対しては、「ケアマネジメントの諸課題に関する検討会中間整理」において、「他産業・同業他職種に見劣りしない処遇を確保する」との記載が盛り込まれていることから、 今後の改善に期待したいです。合わせて、この機会に、1本化された処遇改善加算の要件緩和の措置も講じられます。
その他、事業者に対して、テクノロジー活用や、零細事業者の協働化に向けた支援事業の予算200億円。注目は、「小規模事業者を含む事業者グループが協働して行う職場環境改善」と示されており、合同での人材募集費などの補助が行われます。
訪問介護に対する支援策
また、訪問介護に対する支援策も示されました。厚労省より令和7年度概算予算要求において示された3つの支援策を先行して実施するものです。
① 訪問介護等サービス提供体制確保支援事業として、人材確保に向けた研修体系の整備や、ヘルパー同行支援に係るかかり増し経費等の予算。
② 介護人材確保のための福祉施策と労働施策の連携体制の強化として、介護人材確保に向けた複合的な支援策の予算。
③ ホームヘルパーの魅力発信のための広報事業として、ヘルパーの魅力発信への広報を行っていく予算。
となります。①②の予算は訪問介護だけに限定したものではなく、また、予算運用は自治体の裁量によるところが大きいため、全国の訪問介護事業者にくまなく配分されるか疑問が残ります。 予算の具体的活用方法を、どの程度自治体に対して強く明示していくのか?運用面でのこれからの工夫が求められます。 いずれにせよ、政府が訪問介護への支援策の必要性を示したことに大きな意義はあると思います。
まとめ
これから令和7年1月以降に、具体的な支援策の詳細が決定されます。速やかな支援策の実行を期待するとともに、不足と感じる支援は、令和7年度予算での更なる対応を期待したいと思います。 特に、従事者に対する処遇改善は、6ヶ月分の予算が想定されており、以降の予算確保や、更なる対応がどのようになるかは今後の大きなポイントとなります。