事業を展開する中で、資金調達方法の確保は経営を安定させるためには必要不可欠です。介護事業者も例外ではありません。金融機関からの融資によって資金調達を行うのが一般的ですが、その他にも、さまざまな資金調達方法がありますのでご紹介します。
介護事業者の資金調達方法一覧表
資金調達方法 | 概要 |
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金融機関等からの融資 | 民間の銀行、ノンバンクなどからの融資 |
福祉医療機構(WAM)からの融資 | 介護事業者等に融資を行う事業を展開している厚生労働省管轄の独立行政法人 |
政策金融公庫からの融資 | 政府系金融機関 |
自己資金や身内からの調達 | 経営者自身や事業者が保有する資金、経営者の身内からの融資や出資 |
補助金・助成金 | 国や地方自治体が医療機関向けに提供している補助金や助成金 |
介護報酬ファクタリング | 介護報酬(介護給付費)債権を売却し、早期に資金化する |
介護事業者の資金調達方法のメリットとデメリット
金融機関等からの融資
最も一般的な資金調達手段で、地域金融機関を主としたいわゆる銀行や、ノンバンクなどから融資を受ける方法です。
金融機関の場合、借入限度額が大きく、比較的低金利(1%台~)かつ数千万円単位で融資を受けることも可能です。また、一旦信頼関係を築けば中長期的な支援が受けられるのもメリットです。一方、銀行借入のデメリットには基本的には担保・保証を必要とする点、事業計画書等の作成が必要となるなど手間がかかり、審査が厳しく、時間がかかる点が挙げられます。
中には無担保・無保証で借りられる事業性ローンもありますが、銀行からの借入に比べ金利が3%〜15%程度と高く、また、借りられる限度額も小さくなる傾向にあります
福祉医療機構(WAM)からの融資
福祉医療機構は医療機関などへ向けた融資を行っている厚生労働省管轄の独立行政法人です。この融資制度を介護事業者も利用できます。
福祉医療機構から融資を受けるメリットは、融資の上限金額が大きい点と、金利が低い点です。金利0.5%~と設定されています。
デメリットは不動産の担保が必要な点です。借入金額は担保の評価額内に限られ、そして、その担保の抵当権を他の金融機関に優先して第一位にすることが原則求められます。既に銀行借入を実施している場合、新たな担保を用意するか、抵当権順位引き下げの承諾を得なければならない点に注意が必要です。多くの場合、この対応が難航します。
政策金融公庫からの融資
日本政策金融公庫とは政府系の金融機関で主に中小企業への低金利融資を行っています。
こちらのメリットは低金利(1.3%~)で、しかも無担保・無保証で借りられる場合もある点です。また、国の機関であるため、社会的貢献度が高い介護事業者は融資を受けやすい場合が多いです。事業に対するアドバイスももらえるため創業時の開業資金の調達に向いています。
デメリットとしては審査が長く、数ヶ月かかる場合もある点です。また、既存の負債の借り換えには対応していません。
自己資金や親族・知人からの借入
まず自己資金とは経営者自身の資金や法人の余剰資金を経営資金にする方法です。
自己資金のメリットは第三者からの調達ではないため、当然ですが、返済や利息、配当金の支払が不要な点です。デメリットとしては、経営者個人の資金の場合、事業が上手くいかず倒産した場合に、資金が戻ってこない点です。また、個人資金の場合、金額に限りがある点もデメリットと言えます。
親族・知人からの借入とは、経営者の個人的な知り合い等からお金を借りて資金に充てることを言います。返済は必要ですが、利息や配当金が不要な場合もあり、資金使途も融通が利きやすい点はメリットと言えます。
デメリットとしては自己資金同様、調達金額が少額である場合が多い点です。また、資金の貸し借りが両者の関係に軋轢を生む可能性があるため、慎重に検討したい調達方法です。
補助金・助成金
国や多くの地方自治体では介護事業者が活用できる補助金や助成金を出しています。各自治体によっても異なりますので、申請可能なものがないか調べてみましょう。
メリットは返済がいらない点です。負債ではないので、担保や保証人も不要です。補助金や助成金には審査があるため、認定支援機関などと協力して事業計画書を書かないといけません。その過程で事業計画や経営状態の見直しができるという副次的なメリットもあります。
デメリットは条件が細かく決められている点です。条件の確認や手続きが複雑で手間がかかる場合も多く、実際の入金までに時間を要したり、交付決定が為されてから取り消される可能性がある点には注意が必要です。
介護報酬ファクタリング
介護報酬(介護給付費)の債権を売却することで資金を調達する方法です。例えば「2ヵ月先に国保連から入金を受ける権利」をファクタリング会社に売却し、日程を前倒して入金を受けます。簡潔に言えば、「借りる」のではなく「入金を早める」資金調達方法です。
ファクタリングは借入とは異なり、資金使途の制限や月々の返済負担がありません。また、原則担保が不要で、借入に比べると審査も通りやすく、申込から短期間でスピーディーに現金化できる点がメリットです。
デメリットとしては手数料(額面の0.25%~)を負担する必要がある点です。入金を早めることができる一方で、入金額は目減りします。ただ、介護報酬ファクタリングの場合は支払先が国保連であり債権の信用力が高いため、手数料は比較的安く抑えられる傾向にあります。
なお、当社(アクリーティブ)では、医療・介護業界において、このファクタリングによる資金調達支援を行っています。
介護事業者の資金調達にファクタリングが有用なケース
M&A案件を急いでまとめたいが、銀行借入が間に合わない
M&Aのための資金調達としては、金融機関からの借入をまず検討するかと思いますが、前述の通り、審査資料の準備・審査に時間がかかる場合がほとんどです。しかし、案件によっては期を逃さず急ぎで資金を用意しなければならないケースがままあります。そうした場合に、手続き・審査がスピーディーで資金調達可能なファクタリングは、有用な手段のひとつとなります。
新規事業所をオープンしたいが、新たな借入は避けたい
多店舗展開や設備投資などを進める際に、ファクタリングによって、金融機関の借入枠を温存したまま新たな資金が調達できます。また、担保等の都合もあり、現段階で借入限度額がいっぱいだという場合でも、新たに保険請求額の1~2ヵ月分相当を上限に資金を確保できます。決算書上の「負債」にあたらないため財務状況への影響も最小限です
まとめ
介護事業は少子高齢化の中で社会的需要や貢献度の高い事業です。開業時金融機関から資金調達しやすい面もありますが、介護報酬の入金サイクルが特殊で資金繰りが難しい面があるのも事実です。資金調達手段を複数把握しておくことで、急な資金ニーズにも柔軟に対応でき、強い経営基盤を築くことができます。
当社では、介護事業者様へファクタリングサービスを提供しています。また、「人手不足」や「業務効率化」といった課題を抱える事業者様へ、レセプト請求代行をはじめとした事務代行サービス(BPO)もご提案しております。お気軽にお声がけください。