介護サービス事業者経営情報提供の義務化の詳細は?
令和6年度介護保険法に於いて、介護サービス事業者経営情報を、所轄する都道府県知事に報告することが義務化された。
そして、提出をしない、又は虚偽の報告を行った場合は、期間を定めて報告もしくは内容を是正することを命ずることが出来るとされている。
その命令に従わない時は、指定の取消もしくは業務停止の処分が出来るとされた。
義務化のポイントは以下。
1,情報提出にはGビズIDのアカウントが必要
今回の経営情報の提出は、情報公表システムに内包される介護事業財務情報データベースシステム(仮称)によって行われる。
この利用には、システムへのログインに際してGビズIDアカウントの事前取得が必要となる。
提出方法はシステムへの直接入力と、対応している会計ソフトによる電子データでの提出の2つである。
今後は、会計事務所が提出代行を行うなども想定される。そのため、今後は会計事務所の対応状況も問われるだろう。
2. 事業所の経営状態が公表されることは無い
この公表については、介護事業者が提出した個別の事業所情報を公表するのではなく、属性等に応じてグルーピングした分析結果を公表するとされた。
このため、一部で懸念されている、自事業所の経営状態や役員報酬の金額などが利用者・家族に把握されてしまうという懸念は杞憂である。
3. 提出対象は、令和5年度決算分から
令和6年度の提出対象は、令和5年度決算分です。
令和5年4月から令和6年3月の間に決算期を迎えたデータを、令和7年1月から3月の間で報告しなければならない。
また、すでに提出が義務化されている社会福祉法人についても、改めて、新システムでの報告が必要である。
今年度に於いては、令和5年度の財務データを令和7年1月から3月の間に都道府県に提出しなければならない。
これは、社会福祉法人を含む、原則としてすべての介護施設、介護サービス事業所が対象となる。みなし指定の保険医療機関等の事業所も例外ではない。
特例措置として、年間収入が100万以下の場合と、自然災害に被災して提出出来ない状況の場合は除外される。
提出対象外の介護サービスは、居宅療養管理指導、介護予防支援、養護老人ホーム、総合事業となっている。指定後1年未満のみなし指定事業所も報告の対象外とされた。
〇報告に向けてのスケジュールは以下の通り。
令和6年秋頃 報告システムにおける操作方法のマニュアル・動画の公表
令和7年1月以降 報告システムの運用の開始、令和6年度分報告の開始
令和7年3月末 令和6年度分(初年度分)報告〆切
4. 原則として、介護サービス事業所・施設単位での報告
経営情報の提出内容については原則として、介護サービス事業所・施設単位での報告であるが、
事業所・施設ごとの会計区分を行っていない場合など、やむを得ない場合については、法人単位での報告を認めている。
また、報告は、介護サービス事業に係る事項のみを対象とすることを基本とするとした。
ただし、医療・障害福祉サービス事業を併設している場合で、サービス毎の収益や費用が合算での経理であり介護サービスと区分されていない場合は、
介護、医療、障害福祉事業が合算された状態で報告しても差し支えないとした
5. 提出すべき経営情報とは
提出される経営情報は、最低限、下記の6つの大枠での提出となる。
内訳を記載しての提出は努力義務である。
この大枠に、現在の財務諸表の勘定科目を分類して集計して提出することとなる。
大枠とは、
1, 介護事業収益
2, 給与費
3, 業務委託費
4, 減価償却費
5, 水道光熱費
6, その他費用
である。
今回の経営情報で最低限に求められるのは営業利益であり、経常利益は任意項目となっている。
給与費、減価償却、水道光熱費が単独の集計となっているのは、処遇改善、内部留保、物価高騰を念頭に於いての設定であろう。
介護事業に精通している会計事務所を選ぶべき時代
会計事務所も、介護保険制度に精通していることは希で、税金の申告のみと言う顧問形態が大部分である。
会計の区分についての知識も皆無である場合が多い。これは、会計事務所が行っている業務が税金の申告であり、その為の税務会計が中心でことから当然である。
しかし、今回の財務諸表の提出の義務化は、その利用目的を大きく変える。税務申告と共に、財務諸表の提出のための資料作成を依頼する事になるからだ。
単に領収書を整理して、決算書を作るだけでは足りなくなった。
今後は、介護事業に精通している会計事務所を選ぶべきだ。今回の義務化を機に、その点をしっかりと見極める必要がある。
しかし、今年度の提出時期は令和7年1月から3月である。この期間は確定申告の最盛期で、多くの会計事務所が提出の義務化に対応できない事態が想定される。
早めに会計事務所と対応を協議することをお勧めする。