2024年7月24日
事業運営

デイサービスの今後
~SOMPOホールディングスとRIZAPグループの提携から見える景色~

デイサービスの今後

1.SOMPOホールディングスとRIZAPグループが連携

7月1日、SOMPOホールディングスとRIZAPグループが、資本業務提携契約を締結したとの共同記者会見が行われた。先行して、プレスリリースが6月7日に出されている。
今後は、SOMPOケアの介護保険サービスと、RIZAPの保険外サービスがシームレスに提供される環境が構築されていくだろう。 これによって、既存のデイサービスやデイケアの淘汰が進むことが懸念される。RIZAPやchocoZAPはアウトカムを明確に示すことに長けている。
リハビリ特化型デイサービスとバッティングするとともに、単なるレスパイト型デイサービスの経営環境が厳しくなっていくだろう。 これからは、成果が見えるリハビリテーションの提供が成功要因となる。なんちゃってリハビリでは生き残れない時代がやってくる。
しかし、RIZAPグループでは対応出来ない分野も存在する。
それは、障害者へのリハビリテーションを行う共生型の分野である。共生型サービスは、ノウハウを共有するマニュアル化が難しい。 そのため、FCにおいても、共生型の併設は進んでいない。これからのデイサービス経営のキーワードは、リハビリ特化の共生型デイサービスであるのではないか。

2.デイサービスの利用者層の変化

昨年5月8日から、新型コロナウイルス感染症の位置づけが五類となった。 そのような中で、デイサービスなどの稼働率が戻らないという経営相談が増えていた。 利用者が戻らず稼働率が上がらない傾向がレスパイト中心の長時間デイサービスにおいて多く見かけられた。
それに対して、短時間型のいわゆるリハビリテーション型のデイサービスにおいては、比較的早めに利用者が戻り、稼働が安定している事業所も多かった。 各地域のケアマネジャーと話していても、レスパイト中心のデイサービスが苦戦しているが、リハビリテーション型のデイサービスは多くの地域で不足していると言う話を聞くことが多い。この傾向は、今も続いている。

その原因を考える時、コロナ禍によって利用者が利用控えした期間が長期化した結果、必ずしもデイサービスに通わなくても良いことが分かってしまったことが大きい。
そのため、これまで粛々と通っていた利用者が戻らなかった。それに対して、自宅に引きこもる期間が長期化した結果、体力や筋力の低下の問題と共にフレイル・サイクルのリスクが高まって健康状態の悪化が懸念された。
ケアマネジャーの判断でリハビリテーションを提供するデイサービス等をケアプランに位置づけるケースが増加した。コロナ禍が収束する中で、明らかに利用者やケアマネジャーのニーズに変化が起こった。 いま、デイサービスにはリハビリテーションが必須になっている。

3.デイサービスの現状~デイサービス業界は飽和状態~

デイサービスは、介護サービス中で最も事業所数の多いサービスである。そして、平成28年から令和5年の8年間で、通所介護と地域密着型通所介護の合計事業所数は43,000件台から変わっていない。すなわち、デイサービス市場は飽和状態にある。
そして、毎年の事業所数が殆ど変わらない中で、新規開業するデイサービスも多い。これは、新規開業と同数の廃業する事業所が存在することを意味する。 利用者に求められないデイサービスは自然淘汰され、非常に厳しい生き残り競争が日常化しているのがデイサービスである。 デイサービスは、今まで以上に介護サービス事業所としての存在意義が問われている。

4.共生型サービスという選択

2018年改定で創設された共生型サービスは、なかなか普及が進んでいない。
理由の多くが、職員が不安に思う事であったり、利用者が障害者と同じスペースにいることを好まないだろう、などの先入観である。
実際に、複数のデイサービスで共生型生活介護を併設している事業所は、業績は尻上がりで好調だ。
あるデイサービスは短時間リハビリデイサービスで、障害者にも機能訓練を提供している。
利用者からは、夜によく眠れる。気持ちが落ち着くなど、概ね好評である。体調も改善されており、就労支援に移行した利用者もいる。親が要介護認定者、子供が障害者の親子は、一緒にデイサービスに通っている。
介護事業で共生型を運営する理由の一つが稼働率のアップである。 共生型サービスの許認可では、障害福祉独特の資格であるサービス管理責任者の配置等が免除されることである。現在の人員配置で、障害福祉サービスの許認可を受けることが出来る。
その代わり、基準該当サービスと同じ報酬体系となるが、予防の利用者を受け入れたと考えれば許容範囲である。一日に一人でも二人でも障害者を受け入れることで、確実に稼働率がアップする。一般的に障害福祉サービスのニーズは、レスパイトである。
しかし、リハビリテーションのニーズは潜在的に多く存在する。それが今、大きく注目されているのだ。
令和6年度障害福祉サービス報酬改定は、過去には無い激変の様相を呈している。
障害グループホームに一人暮らしへの支援を求める。就労支援も先にある階段として、一般就労を明確にしてきた。 今後の制度は、一般就労への移行や一人暮らしの支援といった自立に方向が向いていくだろう。単なるレスパイトから自立支援に大きく舵を取りつつある。
コロナ禍が明けて、人々の価値観やニーズが大きく変わった。一般でも安価で気軽にエクササイズを24時間利用出来るサービスが急成長している。それが、chocoZAPである。もはや、リハビリテーションや機能訓練は介護サービスに於いては必須になっている。介護保険より長い歴史を持ち、制度として熟成した感のあった障害福祉が、自立支援へ大きく変貌する方向が見えてきた。

5.確実に利用者を満足させるサービスを提供する

この環境変化は、デイサービスに限った問題では無い。すべての介護サービスが今後、直面する問題である。新たな時代に対応した経営マネジメントが急務となっている。
二宮尊徳は、「経済なき道徳は寝言である」という名言を残した。いくら立派なことを言っても、結果を伴わなければ寝言に過ぎないと言うことだ。 介護サービスにとって結果とは、利用者の獲得であり、稼働率のアップである。 自己満足ではなく、確実に利用者を満足させるサービスを提供することが、今まで以上に求められる時代になる。 いずれにしても、SOMPOホールディングスとRIZAPグループが連携には、デイサービス事業者は危機感を抱かなくてはならない。時代は、大きく変わろうとしている。

SOMPOホールディングス・プレスリリース
https://www.sompo-hd.com/-/media/hd/files/news/2024/20240607_1.pdf?la=ja-JP

ライター紹介
小濱 道博
小濱 道博 氏
小濱介護経営事務所 代表。 一般社団法人日本介護経営研究協会専務理事。 一般社団法人介護経営研究会 専務理事。 一般社団法人介護事業援護会理事。 C-MAS 介護事業経営研究会最高顧問。

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