2024年6月26日
介護保険制度

介護保険制度の根幹をなすケアマネジメントの在り方の見直し

介護保険制度の根幹をなすケアマネジメントの在り方の見直し

一般社団法人全国介護事業者連盟

理事長 斉藤正行

今年度より厚生労働省は、「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」を設置し、ケアマネジャーの在り方に関する議論をしっかりと行っていくこととになります。
第1回目の検討会において、4つの検討事項が示されました。

4つの検討事項とは

「①ケアマネジャーの業務の在り方について」
「②人材確保・定着に向けた方策について」
「③法定研修の在り方について」
「④ケアマネジメントの質の向上に向けた取り組みの促進」
の4つの項目について検討されました。

各項目について解説いたします。
「①ケアマネジャーの業務の在り方について」は、居宅介護支援のケアマネジャーは、本来業務であるケアマネジメントに関することのみならず、 要介護高齢者の暮らしをサポートするあらゆる相談を受けるケースも散見されており、シャドーワークとも言われる附帯業務と本来業務の整理を行うことや、 主任ケアマネジャーの役割の見直しや、管理者の配置要件の見直し等が検討されることになります。
「②人材確保・定着に向けた方策について」は、介護保険制度施行時には、介護従事者の多くが、いずれは資格取得し居宅介護支援のケアマネジャーを目指していましたが、 現在は、なり手不足ともいえる状況にあります。今後ますます高齢者が増え続け、労働人口が減少する時代を迎える中で、ケアマネジャーの確保は、業界の最重要課題の1つとも言えます。 そのような状況の中で、居宅介護支援には処遇改善加算が創設されておらず、介護職との給与差も僅かとなってきています。ケアマネジャーに対する処遇改善に関する支援策等の検討となります。
「③法定研修の在り方について」は、更新制度や更新研修について、全国のケアマネジャーより廃止を求める声が上がっている中で、改めて制度・研修の在り方や見直しについて、 更にはケアマネジャー受験資格要件の見直し等が検討されることになります。
「④ケアマネジメントの質の向上に向けた取り組みの促進」は、認知症やお1人様高齢者への対応力の強化や、 公正中立なケアマネジメントの在り方、更には、生産性向上の進め方等が検討されることになります。
5月9日に開催された第2回検討会では、ヒアリング団体として全国介護事業者連盟を代表し、私も参加し、当連盟の居宅介護在り方委員会で議論した内容を基に、意見提言を行ってまいりました。
とりわけ大きな関心が寄せられているのが、③の「ケアマネジャーの更新研修の在り方」です。
全国のケアマネジャーから更新研修廃止の署名活動が行われているほどに不満の温床の1つとなっています。この更新研修について論考したいと思います。

ケアマネジャーの更新研修の在り方は?

まず、現場から多くの不満の声があがっている課題点をいくつか確認します。
ケアマネジャー資格は5年間での更新が求められますが、更新の回数や実務経験によって異なりますが、まずはなんと言っても更新研修が長時間であることです。
前述の通り、居宅介護支援のケアマネジャーは、24時間365日といっても過言ではない環境で、日々様々な相談を受けており、その多忙な中で、義務となる研修に膨大な時間数が割かれることに疑問の声が多数です。 そして、その研修の内容も、各地域によって統一カリキュラムであるものの、研修実施主体や講師の力量等によって大きく異なっており、画一的な研修も多く、学びの機会が少ないとの声も多数です。
加えて、その研修費用は一部の自治体において補助制度が存在するものの、原則は個人負担となります。 また、更新時期の管理も自治体によっては通知されないケースもあり、自己管理が求められ、冠婚葬祭など外し難い研修日程であった場合でも、参加しなければ資格が消失してしまうことにも大きな不満の声があがっています。

このような現状への不満が、更新を行わないケースや、新たなケアマネジャーの資格取得への意欲をそぎかねない状況となっており、ケアマネジャーのなり手不足の大きな要因の1つとなっており、 更新制度・更新研修の抜本的な見直しが不可欠であると思います。
また、そもそも、数ある資格の中で、なぜケアマネジャーには更新が求められるのか?更新制度そのものの必要性を問う声も多数聞こえてきます。
しかしながら、現状の政府の方針には、更新制度を廃止する方向性は見られません。介護保険施行間もない2003年より、制度の根幹ともいえるケアマネジャーの質の向上に向けて、公的な検討会が設置され、 丁寧な議論や、データ検証の結果、更新制度が導入され、その後も、継続的な議論が行われ、更新制度や研修の内容は都度見直されて、現在の制度運用となっています。
制度の廃止を求めるならば、これまでの議論の過程をしっかりと検証した上で、反証する確かな論拠がなければ実現は難しいと言わざるを得ません。
私は、その意味で、更新制度には、前述の通り多数の課題が山積していることは確かですが、そのことだけをもって現時点で制度の廃止を主張することには無理があり、制度の在り方を中期的に議論していくことが必要であると思います。
一方で、制度・研修の抜本的な見直しが必要であると考えていますので、現行制度の運用の中でも、
・更新頻度の期間延長
・研修時間数の簡素化
・研修カリキュラムの見直し
・研修実施方法の見直し、講師のレベル向上
・アーカイブ研修の導入
・研修受講費用の補助制度の創設
・研修未受講者に対するフォロー体制
などなど、様々な改善策を検討することは可能であり、早期にこれらの見直し策の実現が求められていると思います。
介護保険制度における根幹ともいえるケアマネジャーの在り方に関する議論が、これから本格的に行われることは大いに期待できることであり、是非とも今後の議論のゆくえに着目ください。

ライター紹介
斉藤 正行
斉藤 正行 氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
立命館大学を卒業した後、株式会社ベンチャー・リンクに入社。飲食業のコンサルティング、事業再生などを手がける。 その後メディカル・ケア・サービス株式会社に入社し、「愛の家」ブランドでグループホームを全国に展開し、取締役運営事業本部長に就任。 2010年に、株式会社日本介護福祉グループへ入社。「茶話本舗」ブランドで小規模デイサービスをフランチャイズ展開し、取締役副社長に就任。 2013年に、株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立。 一般社団法人日本介護ベンチャー協会の代表理事、介護業界最大級のイベント「介護甲子園」を運営する一般社団法人日本介護協会副理事長、その他にも多くの介護関連企業・団体の役員・顧問を務めている。

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