2024年2月19日
介護保険制度

【介護報酬改定】答申結果の注目ポイントを解説

【介護報酬改定】答申結果の注目ポイントを解説

令和6年度介護報酬改定率は、現実的には0.61%のプラスに留まった。
この数字は、前回の0.7%を下回る。近年の物価上昇を考えると、実質的にマイナス改定である。

公表された改定率1.57%には、0.98%の処遇改善部分が含まれている。
2月から実施される6,000円相当の処遇改善は、介護職員支援補助金として5月まで実施される。6,000円相当の処遇改善は2.0%程度の賃上げに相当するとされている。日経新聞の賃金動向調査による賃上げ率3.89%に遠く及ばない。
支援補助金は、6月に創設される介護職員等処遇改善加算に統合されて、0.98%の処遇改善として改定率の一部となっていく。

訪問介護は、30分以上、1時間未満の身体介護で見た場合、基本報酬が-2.3%のマイナス改定となっている。
単位にして6単位のマイナスである。定期巡回サービスに至っては、-4.4%と最大規模のマイナスとなった。ホームヘルパー不足が表面化して稼働率が減少し、経営的に厳しさを増している訪問介護の大きなマイナスは、介護業界を震撼させている。
今回、答申された介護報酬で今後3年間の事業運営を進めなければならない。他の介護サービスであれば、加算を算定する事でマイナス分をリカバリーすることが考えられる。

しかし、訪問介護は加算の種類が最も少ないサービスであり対策も限られる。
訪問介護事業所が算定すべき加算は、特定事業所加算である。
加算率は請求金額の3%〜20%の5区分がある。
算定要件のハードルは高く容易に算定は出来ないが優先事項として検討すべきだ。

同一建物減算の見直し

同一建物減算は、訪問介護では更に強化され、居宅介護支援に創設される。訪問介護は、新たに12%減算の区分が創設される。前6ヶ月の提供件数の内、同一敷地内または隣接する建物に居住する利用者が90%以上である場合に適用となる。
居宅介護支援は5%の減算である。
事業所の所在する建物と同一敷地内、または隣接する建物に居住する利用者は、1名から減算。同一建物に居住する利用者が20人以上である場合に適用となる。
居宅介護支援の5%減算率は、次期改定で10%に引き上げられる可能性が高い。

デイサービスのポイントは?

デイサービスは、0.44%、地域密着型通所介護は、0.38%のプラスとなった。
デイサービスでは、入浴介助加算Ⅰの算定要件に、入浴介助担当者への入浴技術研修が義務化されたことが大きい。
入浴介助加算Ⅱについては、デイサービス、デイケアともに、介護職員がカメラマン的な立ち位置で居宅訪問が可能となった。
ただし、あくまでもビデオやZOOM中継のカメラマンであって、評価やアドバイスは医師等が行うことに注意すべきだ。
個別機能訓練加算Ⅰ(ロ)の算定要件である機能訓練指導2名配置中、一名が常勤専従である旨の要件が廃止となり、2名共に機能訓練の時間帯に配置する非常勤配置が可能となった。
同時に、非常勤化で人件費が減少するとして、加算単位が減額された。

基本報酬区分の統合も

デイケアは、通常型は0.7%であるが、現行の大規模Ⅰは、大規模型の統合の影響で-2.8%となっている。
基本報酬の区分である大規模ⅠとⅡが統合されて大規模型となった。
大規模型であっても、リハビリテーションマネジメント加算を全体の80%以上算定し、リハ職を10:1の割合で配置した場合、通常型の報酬を算定出来る特例も設けられた。
大規模Ⅰ相当のデイケアは、この特例の可否を検討すべきだ。
ただし、リハ職10:1配置の人件費次第ではあるが。
また、入院中の利用者が退院後に速やかにサービスが開始出来るための措置が多く盛り込まれた。
入院中に医療機関が作成したリハビリテーション実施計画書を入手することが義務化され、理学療法士等が、医療機関の退院前カンファレンスに参加し、共同指導を行ったことを評価する退院後共同指導加算が創設されている。
また、リハビリテーションマネジメント加算に、口腔アセスメント及び栄養アセスメントとLIFE活用を行った場合の新区分が創設された。

報酬区分による明暗の分かれ道

特別養護老人ホームは、2.8%のプラスとなっている。
しかし、介護老人保健施設では、報酬区分によって明暗が大きく分かれている。
在宅強化型が4.2%のプラスであるのに対して、その他型が0.86%、基本型が0.85%と大きく差が開いたのだ。加算型は加算単位が51単位に増額されて、特養並みの2.8%程度のプラスとなる。
介護事業経営実態調査結果が、特別養護老人ホームは、-1.0%、介護老人保健施設が-1.1%であったことを考えると1%に届かない改定率は非常に厳しい。
特に、その他型は令和7年度から多床室料が自己負担となり、利用者負担が月額で8,000円程度増額となる。
その他型、基本型は、長期滞在型の老健で、病院と居宅の中間施設という役割を果たしていないという評価があった。
今回の結果を踏まえて、長期滞在型老健の経営モデルは破綻したと考えるべきだろう。直ぐには転換出来ないとしても、中長期ビジョンの中で、強化型、超強化型への転換を早急に検討すべきだ。

さらなるレベルアップを求められる業態も

介護老人保健施設の基本報酬ランクを決める評価指標のハードルが上げられた。
入所前後訪問指導割合、退所前後訪問指導割合の指標が引き上げられ、支援相談員に社会福祉士の配置が無い場合は、点数が減額された。
これによって、さらに上位区分の基本報酬算定が難しくなった。
要は、介護老人保健施設は現状で満足せずに、さらにレベルアップが求められたと言うことである。
認知症短期集中リハビリテーション実施加算では、入所者の居宅を訪問し生活環境を把握する区分が設けられた。

短期集中リハビリテーション実施加算では、入所時及び月1回以上 ADL 等の評価を行うことなどを要件とする上位区分が設けられている。 また、ターミナルケア加算では、死亡日の前日及び前々日並びに死亡日を高く評価する変更が行われた。要は、老健も最後まで施設で看取り対応を求めるという事である。
特別養護老人ホームでは、社会問題化しつつある透析患者が施設に入所出来ない問題の解決として、施設職員による透析患者の病院への送迎を評価する特別通院送迎加算が創設された。

さらなるレベルアップを求められる業態も
介護施設系には特に、新興感染症対策が多く盛り込まれた。

新興感染症とは、コロナに続く新たなウィルスである。
コロナ禍の教訓を踏まえて、次に未知のウィルスへの準備を進めていく。また、入所者の体調急変に備えて、緊急時対応の準備や、24時間体制で相談、診察、入院の出来る医療機関との協力体制の義務化などが強化されている。
特別養護老人ホームの配置医師緊急時対応加算では、夜間、深夜、早朝に加えて、日中であっても、配置医師が通常の勤務時間外に駆けつけ対応を行った場合の区分も創設されている。

いずれにしても、詳しい算定要件は3月に発出される解釈通知とQ&Aを待たなければならない。
それまで、しっかりと1月22日に答申された内容を読み込んで、疑問点をリストアップしておくべきである。

令和6年度介護報酬改定での基本報酬の改定率

令和6年度介護報酬改定での基本報酬の改定率 出典:小濱介護経営事務所作成
ライター紹介
小濱 道博
小濱 道博 氏
小濱介護経営事務所 代表

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