2024年1月31日
介護保険制度

「令和6年度介護報酬改定に向けた審議会報告を読み解く」

一般社団法人全国介護事業者連盟

理事長 斉藤正行


「令和6年度介護報酬改定に向けた審議会報告を読み解く」

新年あけましておめでとうございます。しかしながら、元日に「令和6年能登半島地震」が発生し、日増しに被害が拡大している状況に誰もが大変心を痛めている状況にあると思います。被害を受けられた全ての方に心よりお見舞い申し上げます。

能登地域の介護事業所の被害状況も判明してきており、未だに断水や停電の続いている事業所も複数あります。事業の継続が難しい事業所の利用者は、近隣事業所と受入れ調整を行い、順次対応が行われている状況です。

更には、避難所で生活されている方々で介護を必要としている方への支援も求められており、物的支援、人的支援が不足している状況にあります。当連盟においても、災害支援に向けて、見舞金窓口を設置し、人的支援への協力とともに、全国の会員事業所へ要請しています。出来うる限りの支援を継続していきたいと思います。

令和6年度介護報酬改定に関する審議報告の内容とは?

さて、本題に入りたいと思います。令和5年12月19日に、令和6年度介護報酬改定に関する審議報告が取りまとめられました。

全体改定率も翌20日には、1.59%(うち、処遇改善が0.98%)で決着し、各サービス・加算への単位数の割り振りと、見直し項目内容の最終取りまとめが行われ公表されます。また、改定実施時期についても、原則4月改定となり、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導の4サービスのみ6月改定となります。加えて、処遇改善関連加算が1本化される新しい処遇改善加算についても6月改定となることが決まりました。

改定実施時期がサービスや加算によって異なることは、過去初めてのことであり、事業者は実施時期の違いを正しく把握し、対応準備を進めていかなければなりません。

4つの基本的な視点

取りまとめられた審議報告の中身も確認していきたいと思いますが、4つの基本的な視点が示されており、そのポイントとともに整理します。

まず1つ目の視点は、『地域包括ケアシステムの深化・推進』です。同時改定であり、「医療と介護の連携の推進」「看取りへの対応強化」や「感染症や災害への対応力向上」「認知症対応力向上」「質の高い公正なケアマネジメント」などがポイントとなります。

2つ目の視点は、『自立支援・重度化防止に向けた対応』です。今後の制度改革の要ともなるテーマであり、「リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組等」「自立支援・重度化防止に係る取組の推進」「LIFEを活用した質の高い介護」がポイントとなります。

3つ目の視点は、『良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり』です。人口減少・労働人口減少社会での介護人材確保に向けた極めて困難な課題解決に向けたテーマであり、「介護職員の処遇改善」「生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり」「効率的なサービス提供の推進」がポイントとなります。

4つ目の視点は、『制度の安定性・持続可能性の確保』です。今回はプラス改定を確保できましたが、濃淡をつけたサービス・加算への割り振りへと繋がるテーマであり、「評価の適正化・重点化」「報酬の整理・簡素化」がポイントとなります。

今後、本コラムではこの改定の4つの視点に基づく、各サービスの見直し内容について、通所系、訪問系、施設・居住系、地域密着型サービス、居宅介護支援といったカテゴリーごとの解説と、事業者の取るべき対応についてお伝えしていきたいと思います。

事業者への影響度は限定的

今回の令和6年度介護報酬改定の審議報告を踏まえると、6年に1度の同時改定ではありますが、事業者への影響度については、前回改定(令和3年度)より限定的であると思います。

しかながら、ここで、事業者が安心感を得て、変革への意識が欠如してしまうことは絶対に避けなければなりません。前回改定で示された従来の介護保険制度とは異なる新しい概念、「科学的介護」「自立支援・重度化防止」「生産性向上」といったテーマに基づく改革を、確実に現場に浸透させるための令和6年度改定であるとの認識を持たなければなりません。

事業者は、運営する事業所の専門性を高める努力を行い、コンセプトや事業特性に応じて、制度改革の方向性を踏まえた対応が求められることとなります。

ライター紹介
斉藤 正行
斉藤 正行 氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

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