デイサービス事業所数が減少 これからのゆくえと展望
一般社団法人全国介護事業者連盟
理事長 斉藤正行
厚生労働省より最新の統計データが示され、今年4月時点での事業所数が明らかになりました。
デイサービスは全国で4万3018事業所となり、昨年の4万3379事業所から361事業所が減り、2年連続での減少となります。
内訳は、地域密着型通所介護が388事業所の減少、通常規模・大規模が27事業所の増加となります。
2015年の介護報酬改定による大幅なマイナス改定以降、デイサービスは、地域密着型が減少し続け、通常規模・大規模が微増の状況となり、トータルの数はほとんど横ばいに近い状況が続いています。
この10年間も要介護高齢者は増加し続けている状況の中で、事業所数が横ばいの状況となっており、デイサービスの飽和感を感じるところでもあります。
しかしながら、デイサービスの給付額は昨年と比べて増加していることからも、デイサービスのニーズは要介護高齢者数とともに増加していることも確かです。
受給ニーズは地域によって大きく異なる状況にあると言えます。
このような状況を踏まえた上で、これからのデイサービス事業に影響を及ぼす政府や関係省庁の動向をいくつかお伝えしながら、未来を考察したいと思います。
軽度者改革について
まずは、2024年4月16日に、財務省による財政制度等審議会財政制度分科会で提出された軽度者改革の意見提言です。
訪問介護の生活援助とともに通所介護の要介護1と2の利用者を介護保険給付から総合事業への移管を促す提言です。
6月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太の方針2024)」においても検討の方向性が示されており、来年より介護保険部会において本格的な議論が行われることとなります。
しかしながら、訪問介護の生活援助が先行して議論される予測となっており、デイサービスの軽度者改革はまだ少し先の議論となり、2027年の制度改革での実現可能性は低いと思います。
ただし、中長期で考えれば軽度者改革の議論が進んでいく可能性は十分あり得えます。
10年先を見据えるならば、介護保険外サービスの確立による新たな収入源の確保や、要介護3以上の中重度者への対応強化など、デイサービス事業のビジネスモデルの見直しを検討していかなければならないと思います。
本質的な取組みに向けた準備を
また、4月に行われた令和6年度介護報酬改定での見直し項目をしっかりと分析し、将来の変革への備えが重要です。 例えば、自立支援・重度化防止への対応や、「LIFE」を中核とした科学的介護への取組み、アウトカム評価などは、次期介護報酬改定において、いっそう評価・拡充されることは確実視されています。 多くの事業所では表層的な加算への対応のみに留まっているケースが散見されますが、本質的な取組みに向けた準備をいよいよ進めていくことが重要であると思います。
訪問と通所を組み合わせた新サービスの創設の可能性
加えて、2027年改定において、24年改定で見送りとなった「訪問と通所を組み合わせた新サービス」の創設の可能性が高まっています。 今年度に厚労省による委託調査事業が開始されており、新サービス創設に加えて、既存のデイサービスにおける制度改革の方向性と、2方面からの調査と今後の議論が行われることとなります。 この新サービスのゆくえもデイサービス事業者にとっては注目の1つです。
まとめ
今後も要介護高齢者が増加し続ける人口動態の中、
デイサービスは在宅介護サービスにおける3大機能の1つである「通い」機能の中核サービスであることからも、必要不可欠な事業であることは疑う余地がありません。
他方で、制度改革、環境変化が大きくなることも確かであり、時代のニーズと変化に合わせた新しい通所介護のカタチを見出していくことが重要であると思います。