2024年10月4日
事業運営
介護事業者へ経営情報の提出が義務化!影響と対応について

介護事業者へ経営情報の提出が義務化!
影響と対応について

一般社団法人全国介護事業者連盟

理事長 斉藤正行

全ての介護事業者に経営情報の毎年の報告を義務付ける制度が、今年度から導入されることになります。
令和6年8月2日に厚生労働省より、新制度の内容や留意点などをまとめた通達が発出されました。 この新制度は、昨年の法改正に基づいて今年度での導入方針が示されていましたが、この度、具体的な中身が見えてきたことになります。
合わせて、介護事業者が経営情報を報告する仕組みとして、「介護事業財務情報データベースシステム(仮称)」の整備が進められており、 来年1月からの稼働予定となります。
この新しいデータベースシステムを通じて、広く介護事業者の経営情報が公表される仕組みとなります。
介護事業者は、毎年の経営情報を都道府県へ報告する義務が生じます。
原則、報告は事業所単位で行うこととされ、一部の例外を除く全ての介護事業者が対象となります。 報告する経営情報には、事業所の基本情報や収益、費用、職種別の職員数などであり、費用は給与費、業務委託費、減価償却費、水道光熱費などの内訳の提出も求められます。
介護事業者にとっては、介護人材不足の状況化の中で、業務負担を軽減することが政府方針として示されている中、 今回のこの報告の義務化は、更なる業務負担の増大に繋がることから現場には大変厳しい施策であり、不満の声が多数あがっている状況にあります。
厚生労働省もその声は理解をしており、少しでも業務負担が軽減できる仕組みが検討されているところであります。
例えば、報告の期限は、毎年の会計年度終了後から3ヵ月以内と設定されており、これは各社の決算期の違いに配慮し、全ての事業者に一律の提出期間を求めるのではなく、 個社ごとの決算期に合わせた提出が可能な仕組みとなりました。 ただし、初回にあたる今年度の報告に限っては、今年度中(来年3月)までの提出とされており、 令和6年12月末までの最新の決算情報を適宜報告する形となります。
いずれにしても、介護事業者にとっては、大きな業務負担が生じることは間違いありません。引き続き、少しでも負担軽減へと繋がる運用の工夫を求めることが大切でありますが、 一方で、既に決定されているルールとなるわけであり、そうであれば、決められたルールを意義ある活用に繋げることが重要ではないかと思います。

そのためには、まず、この制度が導入された意義をしっかりと理解することが重要です。 この制度の導入目的は、「介護事業者の経営状況を“見える化”し、経営実態をより正確に把握・分析できるようにすること」にあります。
3年に1度の介護報酬改定や介護職の処遇改善など、今後の重点施策の精度向上につなげる狙いがあるとされています。
つまり、毎年、介護事業者の経営状況については、経営概況調査及び経営実態調査によって、サービス分類ごとに無作為抽出による一部事業所の調査結果が示されています。
調査票の回収率は毎回50%を下回っており、正確な経営実態が掴めていないのではないかと問題指摘もされているところです。 毎年示されているサービス分類ごとの収支差率(いわゆる利益率)の内容に違和感を覚えている方も多いのではないでしょうか?
回収率が低下すれば、経営に余裕のある事業所を中心とした回答となり、実態よりも高い収支差率となってしまっている可能性も指摘されています。 また、直近の経営実態調査では、訪問介護が著しく高い収支差率となり、結果として令和6年度介護報酬改定の基本報酬のマイナスへと繋がりました。 ただし、集合住宅の併設と在宅訪問のみの訪問介護や、都心と地方の訪問介護の細かな分析不足であったとの指摘もされているところであります。
このような状況の中で、今回、全ての介護事業者に経営情報の報告が求められることがルール化されたのであれば、事業者には負担となることは間違いありませんが、 制度の意義・目的を正しく理解し、正しい経営情報を報告し、その結果として適切な経営支援や、報酬改定へと繋がるようにしていく発想が求められるのではないでしょうか。

ライター紹介
斉藤 正行
斉藤 正行 氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
立命館大学を卒業した後、株式会社ベンチャー・リンクに入社。飲食業のコンサルティング、事業再生などを手がける。 その後メディカル・ケア・サービス株式会社に入社し、「愛の家」ブランドでグループホームを全国に展開し、取締役運営事業本部長に就任。 2010年に、株式会社日本介護福祉グループへ入社。「茶話本舗」ブランドで小規模デイサービスをフランチャイズ展開し、取締役副社長に就任。 2013年に、株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立。 一般社団法人日本介護ベンチャー協会の代表理事、介護業界最大級のイベント「介護甲子園」を運営する一般社団法人日本介護協会副理事長、 その他にも多くの介護関連企業・団体の役員・顧問を務めている。

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