1,骨太の方針2024に介護保険外サービスが明記された
2024年6月21日、骨太の方針2024が閣議決定された。
この中で、「深刻化するビジネスケアラーへの対応も念頭に、介護保険外サービスの利用促進のため、自治体における柔軟な運用、適切なサービス選択や信頼性向上に向けた環境整備を図る。」
と記されたことから、再び、介護保険外サービスが注目される事となった。
ヤングケアラー問題については、ケアマネジャーの法定研修カリキュラムに盛り込まれ、特定事業所加算の算定要件に位置づけられてため、関心が高まっている。
ビジネスケアラーとは、働きながら親などの介護をする人を言う。現在の高齢化社会の中で増え続けていて、
経済産業省は、2030年には家族介護者のうち4割、318万人がビジネスケアラーになると予測した。
その離職や労働生産性の低下に伴う経済損失額は9兆円に上るとされている。
仕事と介護を両立するための手段として介護保険外サービスに脚光が浴びているのだ。
2,これまでの保険外サービスへの取り組み
介護保険外サービスが大きく注目されたのは、2016年厚生労働省から「地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの参考事例集」が出され、
厚生労働省から「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」通知が2018年9月28日付けで発出された頃が一つのピークであった。
これらによって、介護保険外サービスへの記載緩和措置が明確になった。当時は、東京都豊島区において、混合介護のモデル事業が実施され、
通所サービスの保険外サービスの一環として、送迎費用を取っての移動支援や同行援助を行うモデル事業の実施が検討された。
この時の検討が、令和6年度介護報酬における共同送迎の規制緩和や福祉Moverサービスにつながったと言える。これらの試みが表面化したことで、
保険外サービスが一層の拡大されることが期待された。しかし、介護業界は慢性的な人材不足であり、
介護保険外サービスにも人材が必要と言うこともあって、尻つぼみで現在に至った経緯がある。
3,介護保険外サービスとビジネスケアラー
ビジネスケアラーへの支援の方法として介護保険外サービスが再注目されている。
問題は全額が自己負担となる事につきる。
しかし、介護保険サービスは、緊急の対応が出来ず、事前にケアプランへの位置づけが必要など、融通が聞かないことが欠点である。
ビジネスケアラーが仕事をする上で、急な出張や夜の雪駄などで家に居ることが出来ない時間などに、保険外の訪問介護サービスがあると便利である。
ただし、前述したように、費用負担も馬鹿にならない。使いすぎると、生活に支障をきたす。
今後は、国が主導しての管理機能も必要であろう。
また、SOMPOホールディングスとRIZAPグループとの業務提携で、SOMPOケアの介護保険サービスと、RIZAPの保険外サービスがシームレスに提供される環境が構築されていく。
SOMPOケアの利用者家族は、特別価格でRIZAPやChocoZAPを利用出来る。それはビジネスケアラーである介護者の健康維持にも繋がる。これも一つの介護保険外サービスの形となっていく。
4,現時点での介護保険外サービスの緩和措置
現時点での介護保険外サービスの緩和措置をまとめておこう。
この通知は、未だに浸透しているとは言えないからだ。厚労省は、2018年の通知で、以下①~④については、通所介護とは明確に区分されたサービスであるために、
一定のルールを遵守する場合に介護保険外サービスとして提供可能とした。
解禁された保険外サービスは
- ① 事業所内において、理美容に加え、巡回健診、予防接種を行うこと。
- ② 利用者個人の希望により事業所から外出する際に、保険外サービスとして個別に同行支援を行うこと。
- ③ 物販、移動販売、レンタルサービス
- ④ 買い物等代行サービス。
の4点である。
これらを提供する場合のルールは
- ① 両サービスを明確に区分して、それぞれ文書で記録すること。
- ② 利用者等に対して、あらかじめ運営規程や重要事項説明書で保険外サービスの内容等を詳細に説明して、同意を得ていること。
- ③ 通所介護の利用料とは別に、請求書などで費用を請求すること。通所介護の提供時間には保険外サービスの時間を含めないこと。
- ④ 保険外サービスを提供する事業者からの利益収受は禁止。たとえば、予防注射を依頼した病院からのバックマージンの授受などは不可ということです。
- ⑤ 消費者からの苦情・相談窓口の設置等の措置を講じること。
- ⑥ 外部事業者が保険外サービスを提供する場合、事故発生時の対応を明確化すること。
である。なお、これらの規定は、通所サービスにのみ適用されている。
そして、訪問介護サービスについては、大きな緩和措置が無く、現在に至っている。
唯一、サービス提供責任者の兼務が緩和されている。2018年の通知以前は、常勤専従の規定があるサービス提供責任者は保険外サービスを担当することを認めない指導が一般的であった。 この通知によって、サービス提供責任者の業務に支障が無い場合については、保険外サービスを提供することを認めることが明記されて、一部の規制緩和も盛り込まれた。
今回の骨太の方針2024によって、訪問介護サービスについての規制緩和が期待される。