介護経営コラム
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介護施設の倒産が過去最多!潰れる理由・前兆と特養や老健の経営難などを解説

更新日:2026年9月18日
介護施設の倒産が過去最多!潰れる理由・前兆と特養や老健の経営難などを解説

介護施設・介護事業者の倒産が増えています。東京商工リサーチによると、2025年の介護事業者の倒産は176件に達し、過去最多を更新しました。訪問介護を中心に、人手不足や人件費・光熱費の上昇、利用者不足、介護報酬改定などが重なり、経営難に陥る事業者が相次いでいます。

このような状況の中、「特養や老健も潰れることはあるのか」「潰れる介護施設にはどのような特徴や前兆があるのか」と不安を感じている方もいるでしょう。

そこで本記事では、公的機関や調査会社のデータをもとに、介護施設が倒産する理由や倒産件数の推移、経営悪化の前兆を解説します。介護施設の倒産を防ぐための経営改善策に加え、自力での事業継続が難しい場合に検討できるM&A・事業譲渡についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。


【目次】

介護施設・介護事業者の倒産は過去最多を更新

介護サービスの需要は高齢化に伴って拡大していますが、介護施設・介護事業者の経営環境は厳しさを増しています。人手不足や人件費の上昇、物価高、介護報酬改定などが重なり、倒産や休廃業・解散に至る事業者が増えているためです。

ここでは、2025年の介護事業者の倒産件数やこれまでの倒産件数の推移、具体的な倒産事例などについて解説します。

2025年の介護事業者の倒産は176件

まず、2025年の介護事業者の倒産状況について解説します。

事業区分 2025年の倒産件数 前年比
訪問介護 91件 12.3%増
通所・短期入所 45件 19.6%減
有料老人ホーム 16件 11.1%減
その他 24件
合計 176件 2.3%増

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出典:東京商工リサーチ「2025年『介護事業者』倒産 過去最多の176件」

東京商工リサーチによると、2025年に発生した「老人福祉・介護事業」の倒産は176件でした。前年の172件から2.3%増加し、2年連続で過去最多を更新しています。コロナ禍前の2019年に発生した111件と比べると、約6割増加しました。

特に多かったのが訪問介護事業者です。2025年の倒産176件を事業別に見ると、訪問介護が91件で全体の半数以上を占めました。訪問介護の倒産は3年連続で最多を更新しています。

訪問介護では、利用者宅を一軒ずつ回る必要があるため、移動時間を含めた効率化が難しいという課題があります。小規模事業者も多く、ヘルパーを確保できなければ依頼があってもサービスを提供できません。2024年度介護報酬改定で基本報酬が引き下げられたことも、経営環境を厳しくした要因の一つと考えられます。

また、2025年の「人手不足」関連倒産は29件に達し、過去最多を更新しました。このうち求人難が15件を占めています。利用者の需要があっても必要な職員を配置できず、売上を確保できない事業者が増えていることがうかがえます。

なお、介護業界の動向については以下の記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

▶︎介護業界動向

介護事業者の倒産件数の推移

介護事業者の倒産件数は、年によって増減しながらも、中長期的には高い水準で推移しています。

倒産件数 前年比
2019年 111件 4.7%増
2020年 118件 6.3%増
2021年 81件 31.4%減
2022年 143件 76.5%増
2023年 122件 14.6%減
2024年 172件 40.9%増
2025年 176件 2.3%増

出典:東京商工リサーチ「老人福祉・介護事業」各年調査
※2022年にはステップぱーとなーグループ31社の連鎖倒産を含む。

2019年の111件から2020年には118件へ増加しましたが、2021年は新型コロナウイルス関連の資金繰り支援などもあり、81件に減少しました。しかし、2022年は、ステップぱーとなーグループ31社の連鎖倒産という特殊要因もあり、倒産件数が143件へ急増しました。新型コロナ関連の資金繰り支援によって抑えられていた倒産が表面化したことや、物価・光熱費の上昇も経営を圧迫したと考えられます。

2023年は122件まで減少したものの、2024年には172件、2025年には176件となりました。2024~2025年は、2022年のような大規模な連鎖倒産がなくても過去最多を更新している点に注意が必要です。個別企業の特殊事情だけでなく、介護業界全体を取り巻く経営環境が厳しくなっていると考えられます。

2024年の介護会社倒産状況については、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

▶︎上半期、過去最高の介護会社倒産!事業再編・M&A更に加速

倒産だけでなく休廃業・解散も増加している

介護サービスから撤退した事業者の全体像を把握するには、法的な倒産だけでなく、休廃業・解散も確認が必要です。倒産は法律上の正式な用語ではなく、一般に、企業が債務を通常どおり支払えず、事業継続が困難になった状態を指します。破産や民事再生などの法的整理のほか、調査会社の集計によっては銀行取引停止処分などが含まれる場合があります。

一方、休廃業・解散には、資産と負債を整理したうえで自主的に事業を終了したケースも含まれます

倒産 休廃業・解散 合計
2023年 122件 510件 632件
2024年 172件 612件 784件
2025年 176件 653件 829件

出典:東京商工リサーチ「2024年『老人福祉・介護事業』の倒産、休廃業・解散調査」、同「2025年『介護事業者』の休廃業・解散653件」

2024年には倒産が172件発生したほか、休廃業・解散が612件ありました。2024年は、倒産と休廃業・解散を合わせて784件に達しました。2025年の休廃業・解散653件のうち、訪問介護は465件に上りました。倒産176件を合わせると、829件の介護事業者が倒産または休廃業・解散した計算です。

休廃業には、経営者の高齢化や後継者不在を理由として、債務超過に陥る前に事業を畳んだケースも含まれます。そのため、倒産件数だけを見ていると、地域から介護サービスの担い手が失われている実態を過小評価する可能性がある点には注意しましょう。

特養や老健も倒産・閉鎖する可能性はある

特別養護老人ホームや介護老人保健施設は、公共性が高いため「倒産しない」と思われることがあります。しかし、運営法人の資金繰りが行き詰まったり、人員配置基準を維持できなくなったりすれば、事業継続が困難になる可能性はあります

施設形態 2024年度の赤字施設割合
従来型特養 45.2%
ユニット型特養 31.5%
介護老人保健施設 31.3%

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出典:福祉医療機構「2024年度 特別養護老人ホームの経営状況について」、同「2024年度 介護老人保健施設の経営状況について」
※WAMの融資先施設を対象とした集計であり、全国すべての施設を対象としたものではありません。特養の集計には公立施設を含みません。

独立行政法人福祉医療機構(WAM)が融資先の施設を対象に実施した調査によると、2024年度に赤字だった施設の割合は、従来型特養が45.2%、ユニット型特養が31.5%でした。介護老人保健施設でも31.3%が赤字となっています。

大手介護事業者も倒産した事例がある

介護事業者の倒産は小規模事業者が中心ですが、過去には多数の施設・事業所を展開していた企業が法的整理に入った事例もあります。ここでは、ニュースなどでも取り上げられた以下の3つの事例について解説します。

事業者 発生時期・手続き 規模 主な背景
未来設計 2019年・民事再生 有料老人ホーム37施設、負債約53億8,600万円 不適切会計や預り金をめぐる問題
ステップぱーとなーグループ 2022年・破産 グループ31社が連鎖倒産 利用者減少、急速な事業拡大、資金繰り悪化
都エンタープライズ 2025年・民事再生 住宅型有料老人ホームなどを運営、関連法人との負債約28億円 商況悪化、不動産取得に伴う借入負担

未来設計|2019年・民事再生

未来設計は、首都圏で「未来倶楽部」「未来邸」などの有料老人ホーム37施設を運営していた企業です。2019年1月に東京地方裁判所へ民事再生法の適用を申請し、負債総額は約53億8,600万円に上りました。

東京商工リサーチによると、入居者の預り金などに関する個人債権者は約1,500人、金額は約34億円でした。不適切な会計処理などが問題となった一方、施設はスポンサーの支援を受けて運営が継続されました。

この事例は、施設数や売上高が大きくても、財務管理やガバナンスに問題があれば経営破綻につながることを示しています。

出典:東京商工リサーチ「有料老人ホーム経営の未来設計」

ステップぱーとなーグループ|2022年・破産

ステップぱーとなーは、機能訓練型デイサービスを展開していた事業者です。2022年にグループ31社が連鎖倒産し、同年の介護事業者の倒産件数を大きく押し上げました。
2022年は新型コロナウイルスの感染拡大による利用控えや、物価・光熱費の上昇などが介護事業者の経営を圧迫していました。同グループでも介護報酬収入の減少や資金繰りの悪化が重なったとされています。

出典:東京商工リサーチ「2022年『老人福祉・介護事業』倒産状況」

都エンタープライズ|2025年・民事再生

都エンタープライズは、大阪府南部で住宅型有料老人ホームやホテルなどを運営していた企業です。2025年10月に民事再生法の適用を申請しました。関連する医療法人の負債と合わせた負債額は、約28億円とされています。

コロナ禍以降の商況悪化に加え、過去の不動産取得に伴う借入金の返済負担などが経営を圧迫しました。法的整理の申請時点では、各施設の営業は継続されています。

出典:東京商工リサーチ「都エンタープライズほか1社」

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介護施設・介護事業所が倒産する7つの理由

介護施設・介護事業所が倒産する理由は一つではありません。多くの場合、人手不足、コスト上昇、利用者不足、資金管理の不備など、複数の問題が重なって資金繰りが悪化します。ここでは、介護施設・介護事業所が倒産する代表的な7つの理由について解説します。

人手不足と採用難が深刻化している

介護事業は、人材を確保できなければサービスを提供できない労働集約型の事業です。定員に空きがあっても、必要な職員を配置できなければ利用者を受け入れられません。

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出典:介護労働安定センター「令和7年度『介護労働実態調査』結果の概要」

介護労働安定センターの「令和7年度介護労働実態調査」によると、従業員が不足していると回答した介護事業所の割合は65.8%に上りました。前年度の65.2%から0.6ポイント上昇しており、約3分の2の事業所が人材不足を感じています。


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出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」

また、厚生労働省は、2022年度に約215万人だった介護職員について、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人が必要になると推計しています。

採用費をかけても応募が集まらない、採用後すぐに退職する、夜勤や訪問を担当できる職員が不足するといった状況が続けば、既存職員の負担も増します。その結果、さらなる退職や受け入れ制限を招き、売上が減少する悪循環に陥る可能性があります。

人件費が上昇している

介護業界では、人材の確保・定着に向けた賃上げが進んでいます。厚生労働省の調査でも、介護職員の賞与込み給与は上昇傾向にあります。

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出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査による介護職員の賃金について」

厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、介護職員の賞与込み給与は、2024年の月額30万3,000円から、2025年には31万4,000円へ上昇しました。1年間で1万1,000円、約3.6%の増加です。

また、施設側が負担する人件費も増えています。福祉医療機構の調査では、2023年度から2024年度にかけて、従事者1人当たりの年間人件費が次のように増加しました。

施設形態 2023年度 2024年度 増加額
従来型特養 459万1,000円 472万1,000円 13万円
ユニット型特養 440万6,000円 450万6,000円 10万円
介護老人保健施設 482万8,000円 492万3,000円 9万5,000円

出典:福祉医療機構「2024年度 特別養護老人ホームの経営状況について」、同「2024年度 介護老人保健施設の経営状況について」

2023年度から2024年度にかけて、従事者1人当たりの年間人件費が従来型特養で13万円、ユニット型特養で10万円、介護老人保健施設で9万5,000円増加しました。

介護事業は人によるサービス提供が中心であり、費用に占める人件費の割合が高い事業です。基本給を引き上げれば、賞与や社会保険料の事業主負担も増える可能性があります。

介護職員等処遇改善加算によって賃上げに必要な財源の一部を確保できますが、加算収入は原則として職員の賃金改善へ充てなければなりません。光熱費や借入金の返済などへ自由に使用できる収入ではないため、人件費以外のコスト上昇を同時に吸収できるとは限りません。

利用者数や稼働率が伸びないまま人件費だけが上昇すると、事業者の利益や手元資金が減少し、資金繰りを圧迫する要因になります。

以下の記事では、最低賃金の引き上げによる介護事業者への影響について解説しているので、あわせて参考にしてみてください。

▶︎最低賃金が50円増!介護事業者の倒産が更に拡大か?

物価・光熱費・燃料費が高騰している

介護事業者は、食材費や電気・ガス代、車両の燃料費などの上昇に直面しています。特に、入所施設は24時間の空調や給湯、調理が必要であり、訪問介護や通所介護では送迎・訪問車両の燃料費がかかるため、物価上昇の影響を受けやすい業態です。

福祉医療機構(WAM)の調査からも、特養や老健の多くが物価・光熱費の上昇による影響を受けていることが分かります。

調査対象・指標 割合 対象年度・比較期間
原油価格・物価高騰の影響を受けた特養 97.1% 2023年3月調査
影響を受けた特養のうち、水道光熱費が増加した施設 95.4% 2022年4~12月と2021年4~12月の比較
水道光熱費が前年同期比20%以上増加した施設(特養) 69.2% 2022年4~12月と2021年4~12月の比較
定員1人当たり水道光熱費が前年度より増加した老健 75.6% 2024年度と2023年度の比較

出典:福祉医療機構「社会福祉法人経営動向調査(2023年3月調査)」、同「2024年度(令和6年度)介護老人保健施設の経営状況」

上記の表のとおり、WAMが2023年3月に実施した調査では、特別養護老人ホームの97.1%が原油価格・物価高騰の影響を受けたと回答しました。また、2022年4~12月と前年同期を比較すると、95.4%の施設で水道光熱費が増加し、69.2%の施設では増加率が20%以上となりました。

老健に関する2024年度の調査においても、2024年度と2023年度を比較した際、75.6%の施設が「定員1人当たり水道光熱費が前年度より増加した」と回答しました。

介護報酬改定の影響を受けている

介護事業者の収入は、国が定める介護報酬に大きく左右されます。介護報酬が引き上げられても、サービスごとの基本報酬や加算の内容によっては、すべての事業者が同じように増収できるとは限りません

2024年度(令和6年度)の介護報酬改定率は全体でプラス1.59%でした。一方、訪問介護では基本報酬が引き下げられています。

訪問介護のサービス内容 2024年3月まで 2024年4月以降 増減
身体介護・20分未満 167単位 163単位 -4単位
身体介護・20分以上30分未満 250単位 244単位 -6単位
身体介護・30分以上1時間未満 396単位 387単位 -9単位
生活援助・20分以上45分未満 183単位 179単位 -4単位
生活援助・45分以上 225単位 220単位 -5単位

出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」

2024年度改定では処遇改善加算の拡充なども行われましたが、加算を取得するには、賃金改善や職場環境の整備、計画書・実績報告書の作成など、所定の要件を満たさなければなりません。処遇改善加算による増収分は原則として職員の賃金改善に充てる必要があります。そのため、加算を算定できたとしても、訪問介護の基本報酬引き下げや物価高による経営負担をそのまま補えるとは限りません

さらに、2026年度(令和8年度)には、2027年度の定期改定を待たずに介護職員等処遇改善加算の期中改定が実施されました。対象職種や加算区分の見直しによって処遇改善を進める内容ですが、事業者側には制度変更への対応や届出、職員への配分管理が求められます。

介護報酬改定は増収要因になる場合がある一方、基本報酬の見直しや加算要件の厳格化、減算の新設によって経営を圧迫することもあります。改定内容を正確に把握し、自事業所への影響を試算できていない場合、想定していた収入を確保できず、資金繰りが悪化するおそれがあります。

なお、2024年度改定の全体像については以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。

▶︎令和6年度介護報酬改定で大規模化が加速する

利用者・入居者を十分に確保できていない

介護事業は、利用者数や入居率が一定水準を下回ると、介護報酬収入が減少します。一方、施設の賃料や減価償却費、管理者の人件費などの固定費は、利用者が減っても大幅には下がりません。そのため、利用率の低下が続けば、収支が急速に悪化する可能性があります。

福祉医療機構(WAM)がまとめた2024年度(令和6年度)の特養の経営データでも、黒字施設と赤字施設の間には利用率の差が確認されています。

施設類型・指標 黒字施設 赤字施設
従来型特養の入所利用率 93.9% 91.5% -2.4ポイント
従来型特養の短期入所利用率 86.2% 75.0% -11.2ポイント
ユニット型特養の入所利用率 94.3% 89.6% -4.7ポイント
ユニット型特養の短期入所利用率 84.6% 67.4% -17.2ポイント

出典:福祉医療機構「2024年度(令和6年度)特別養護老人ホームの経営状況について」

従来型特養では、赤字施設の入所利用率が黒字施設を2.4ポイント、短期入所利用率が11.2ポイント下回りました。ユニット型でも、赤字施設の入所利用率は4.7ポイント、短期入所利用率は17.2ポイント低くなっています。

また、赤字施設は黒字施設より待機登録者数や利用者単価も低い傾向にあります。WAMは、赤字施設が利用者の確保に苦戦していると分析しています。利用者や入居者を継続的に確保し、空床やキャンセルを減らすことは、介護事業の収益を安定させるうえで重要です。

資金繰りや経営数値を適切に管理できていない

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介護報酬は、サービスを提供してから実際に入金されるまでに一定の期間があります。その間にも、給与や社会保険料、家賃、食材費、光熱費、借入金の返済などを支払わなければなりません。損益計算上は黒字であっても、手元資金が不足すれば事業を継続できなくなる可能性があります。

厚生労働省は、介護サービス事業者の経営状況を把握するため、2024年度に「介護サービス事業者経営情報データベース」を整備しました。原則として報告対象となる介護サービス事業者には、介護サービス事業ごとの収益や費用、職員給与の総額などの報告が求められます。この制度は、国が介護事業者の経営情報を把握・分析するためのものですが、事業者側にとってもサービス別の収益と費用を把握する重要性を示しているといえるでしょう。

複数の施設やサービスを運営している場合、法人全体の決算だけを見ていると、どの事業が利益を上げ、どの事業が損失を出しているのか分かりません。月次試算表やサービス別損益、資金繰り表を作成しなければ、赤字の拡大や現金不足への対応が遅れます。

特に注意が必要なのは、税金・社会保険料の滞納、借入金返済のための追加借入、役員からの継続的な資金投入などで、一時的に支払いをつないでいる状態です。売上高だけでなく、営業利益、利用者単価、稼働率、人件費率、加算収入、借入金返済額、現預金残高を毎月確認する必要があります。

後継者不在や経営者の高齢化が進んでいる

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介護事業の業績に大きな問題がなくても、経営者の高齢化や健康上の理由、後継者不在によって事業継続が難しくなる場合があります。指定申請や人員管理、資金調達、行政対応などを経営者個人に依存している事業所では、突然の病気や引退によって運営に支障が生じる可能性もあります。

介護事業では、利用者や家族、職員、医療機関、自治体などとの関係が長期にわたるため、経営者が急に退任してから承継先を探すのは容易ではありません。親族や職員への承継が難しい場合は、第三者承継やM&Aも含め、資金と事業価値が残っている段階から準備を進めることが重要です。

潰れる介護施設・事業所に見られる10の前兆

介護施設や介護事業所が突然倒産したように見えても、それ以前から利用者の減少や職員の退職、支払いの遅延など、経営悪化を示す兆候が現れているケースがあります。

ただし、以下の項目に1つ当てはまるだけで、すぐに倒産するとは限りません。一時的な利用者減少や設備更新の延期など、合理的な理由がある場合もあります。複数の兆候が同時に現れ、それが数か月にわたって改善されない場合は、経営状況を詳しく確認する必要があります。

利用者数や入居率が下がり続けている

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利用者数や入居率の継続的な低下は、経営悪化を示す代表的な兆候です。介護事業者の主な収入は介護報酬であるため、利用者が減れば、その分だけ収入も減少します。一方、施設の賃料や減価償却費、管理者の人件費、システム利用料などの固定費は、利用者が減ってもすぐには下がりません

特に、特養や有料老人ホームでは空室の増加、通所介護では利用回数や曜日別稼働率の低下、訪問介護ではサービス提供件数の減少に注意が必要です。利用者の入院や死亡による一時的な減少であれば、その後の新規受け入れによって回復できます。しかし、ケアマネジャーや医療機関からの紹介が減り、新規契約も伸びていない場合は、地域での競争力や評判が低下している可能性があります。

利用者数だけでなく、問い合わせ件数、見学数、契約率、解約理由、紹介元別の件数なども確認し、減少の原因を早期に特定することが重要です。

職員の退職が相次いでいる

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介護職員や看護職員の退職が続くと、人員配置基準を満たせなくなり、受け入れられる利用者数を減らさざるを得ない場合があります。残った職員の業務負担が増え、さらに退職者が発生する悪循環に陥る可能性も否定できません。

特に、管理者、サービス提供責任者、介護支援専門員、生活相談員、看護職員など、指定基準や報酬算定に関係する職員の退職には注意が必要です。必要な職種・有資格者を補充できなければ、加算を算定できなくなったり、事業の継続そのものが難しくなったりします

退職者数だけでなく、欠勤や有給休暇の急増、求人を出しても応募がない状態、派遣職員や紹介会社への依存度の上昇なども確認しましょう。退職の背景に、処遇への不満、長時間労働、管理者との関係、将来への不安などがある場合は、給与だけでなく職場環境やマネジメント体制の改善も必要です。

給与や取引先への支払いが遅れている

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給与、賞与、社会保険料、税金、家賃、仕入代金などの支払いが遅れ始めた場合は、資金繰りが深刻化している可能性があります。会計上は利益が出ていても、手元に支払いに必要な現金がなければ事業を継続できません。

給与の支給日が突然変更されたり、賞与が十分な説明なく減額・延期されたりした場合も注意が必要です。取引先への支払いを翌月に回す、分割払いを繰り返す、経営者が個人資金を継続的に投入するといった対応も、資金不足の兆候と考えられます。

一度の支払い遅延だけで倒産すると断定はできませんが、給与遅配や税金・社会保険料の滞納が続けば、職員や取引先、金融機関からの信用を失います。採用や通常の取引が難しくなり、M&Aを検討する場合にも買い手の懸念材料となるため、早急な対応が必要です。

必要な備品や設備を更新できない

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介護ベッド、車いす、入浴設備、送迎車両、空調設備などの更新が繰り返し延期されている場合、設備投資に回せる資金が不足している可能性があります。業務用パソコンや介護記録システム、職員の制服、衛生用品といった比較的小さな支出が抑えられている場合も同様です。

設備の老朽化を放置すると、修繕費が増えるだけでなく、事故やサービス停止につながるおそれがあります。送迎車両が故障すれば通所介護の利用者を送迎できず、空調設備の不具合は入居者の健康にも影響します。必要な福祉用具や衛生用品が不足すれば、サービスの質や職員の業務効率も低下しかねません。

ただし、設備更新の延期には、建て替えや大規模改修に合わせて更新するなどの合理的な理由もあります。単に古い設備を使っているかではなく、安全性に問題が生じているにもかかわらず、修理や更新ができない状態になっていないかを確認することが大切です。

過度なコスト削減が行われている

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経営改善のためのコスト削減自体は必要ですが、利用者の安全や職員の負担を考慮しない削減が続く場合は注意が必要です。シフトの人数を必要以上に減らす、研修を中止する、修繕を先送りする、消耗品の使用を極端に制限するなどの対応は、経営に余裕がなくなっている兆候かもしれません。

過度な人員削減によって残業や休日出勤が増えれば、職員の離職につながります。研修や委員会の開催を省略すると、運営基準を満たせなくなったり、加算の返還や減算の対象になったりする可能性もあります。また、清掃や食事、レクリエーションなどにかかる費用を削りすぎれば、利用者や家族の満足度が下がり、退所や解約を招きかねません。

削減対象を一律に決めるのではなく、サービスの質や法令遵守に影響しない費用かの検討が必要です。短期的な支出削減によって利用者や職員が離れれば、中長期的には収益をさらに悪化させます。

管理者や経営陣の交代が続いている

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施設長や管理者、経営幹部が短期間に何度も交代している場合、経営方針が定まっていない可能性があります。交代の理由が明確に説明されず、意思決定や指示の内容が頻繁に変わる場合は、組織内部で問題が生じていることも考えられます。

管理者の交代が続くと、職員との信頼関係や利用者・家族との連絡体制、地域のケアマネジャーや医療機関との関係を再構築しなければなりません。申し送りが不十分であれば、加算の算定要件や行政への届出、職員配置、事故対応などの重要業務が抜け落ちるおそれもあります。

ただし、組織再編や事業承継に伴う計画的な人事異動もあるため、交代そのものが経営悪化を意味するわけではありません。後任者が決まらないまま兼務が続いている、責任の所在が不明確になっている、退任理由を職員へ説明できないといった状態には注意が必要です。

金融機関からの追加融資を受けにくくなっている

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金融機関から融資を断られたり、追加の担保や保証を求められたりするようになった場合、事業者の返済能力や将来性が慎重に評価されている可能性があります。借入期間の短縮や金利上昇、融資額の減額など、以前より厳しい条件を提示されるケースも同様です。

金融機関は、決算書だけでなく、毎月の試算表や資金繰り、借入金の返済状況、利用者数、稼働率、経営改善計画などを確認します。必要な資料を速やかに提出できない場合や、計画と実績の差を説明できない場合は、経営管理体制そのものに不安を持たれかねません。

融資が受けにくくなってから新たな金融機関を探しても、資金調達には時間がかかります。複数の借入先から短期資金を調達して返済をつなぐ状態になる前に、金融機関や税理士、経営支援の専門家へ相談しましょう。

介護報酬の請求ミスや返還が増えている

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介護報酬の請求ミスや返還が繰り返されている場合、請求業務や記録管理、職員配置に問題が生じている可能性があります。単純な入力ミスだけでなく、加算要件を満たしていない状態での請求、必要な記録や届出の不足、人員配置基準を下回った期間の請求などが見つかれば、過去にさかのぼって返還を求められることがあります。

返還額が大きくなると、当月の収入が減るだけでなく、すでに受け取った介護報酬を返すための資金も必要です。行政指導や監査への対応に時間を取られ、現場や管理部門の負担が増えるおそれもあります。重大な違反が認められた場合には、指定の効力停止や取り消しなどにつながる可能性も否定できません。

請求担当者だけに業務を任せるのではなく、サービス提供記録、勤務実績、加算要件、届出内容を定期的に照合することが重要です。ミスが増え始めた段階で原因を確認し、ダブルチェックや外部専門家による点検を行う必要があります。

利用者や家族からの苦情が増えている

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利用者や家族からの苦情が増えている場合、サービスの質や職員体制に問題が生じている可能性があります。職員の対応、連絡不足、食事、清掃、送迎時間、介助方法、事故発生時の説明など、苦情の内容は施設やサービスによってさまざまです。

同じ内容の苦情が繰り返されているにもかかわらず改善されなければ、利用者の解約や退所、地域での評判低下につながります。ケアマネジャーや医療機関からの紹介が減り、新規利用者を確保しにくくなることもあるでしょう。また、人手不足によって職員に余裕がなくなると、説明や情報共有が不十分になり、苦情がさらに増える悪循環に陥りかねません。

苦情件数だけで判断するのではなく、内容、発生部署、対応までの時間、再発の有無を記録して分析することが大切です。苦情が増えた原因を個々の職員だけに求めず、配置人数や業務手順、管理者の対応など、組織上の問題も確認しましょう。

月次の試算表や資金繰り表を作成していない

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月次の試算表や資金繰り表を作成していない場合、経営悪化への対応が遅れる可能性があります。年に一度の決算書だけでは、利用者数の減少、人件費率の上昇、不採算事業の拡大といった変化を迅速に把握できません。

特に複数の施設やサービスを運営する法人では、法人全体の売上高だけを見ても、どの事業が利益を出し、どの事業が損失を生んでいるか分からない場合があります。施設別・サービス別の損益を確認しなければ、黒字事業の資金で赤字事業を補填している状態を見落としかねません。

試算表に加えて、少なくとも数か月先までの入出金を示す資金繰り表を作成し、給与、社会保険料、税金、借入金返済などの支払予定を確認することが重要です。数字の作成が遅い、経営者が内容を把握していない、計画と実績の差を検証していないといった状態も、経営管理上の危険信号といえます。

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介護施設の倒産を防ぐための経営改善策

経営改善では、売上を増やす施策だけでなく、資金繰り、人員配置、加算、請求、不採算事業の見直しを並行して進める必要があります。ここでは、介護施設の倒産を防ぐための経営改善策を6つ紹介します。

月次の収支と資金繰りを可視化する

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月次試算表を早期に作成し、法人全体と事業所別の収支を確認します。さらに、最低でも3~6か月先までの資金繰り表を作成し、給与、税金、社会保険料、借入金返済などの支払時期を整理しましょう。

計画と実績の差が生じた場合は、利用者数、人件費、加算、キャンセル率など、原因を具体的に分解します。経営者だけでなく、管理者や会計担当者と数値を共有する仕組みも必要です。

利用者獲得と稼働率改善に取り組む

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地域の高齢者人口や競合事業所、病院からの退院動向などを確認し、自社のサービスが必要とされる利用者像を明確にします。

居宅介護支援事業所、病院、地域包括支援センターなどへの情報提供に加え、問い合わせから見学、契約までの件数を記録しましょう。単に営業訪問の回数を増やすのではなく、紹介後の受け入れ可否や断った理由まで分析することが重要です。

加算の取得状況と請求業務を見直す

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まず、2024年度・2026年度改定後の算定状況を確認し、取得可能な加算と必要な人員配置、研修、記録、届出を洗い出します。加算の取り漏れだけでなく、減算対象になっていないかも自主点検が必要です。勤務実績、個別計画、実際のサービス提供時間、介護記録、請求データを照合し、算定根拠を説明できる状態にします。

特に確認したいのは、次の項目です。

  • 人員配置基準を満たしているか
  • 必要な計画書や同意書がそろっているか
  • 届出と実際の運営内容が一致しているか
  • 委員会、研修、訓練を期限どおり実施しているか
  • 業務継続計画や虐待防止措置などの未実施減算に該当しないか
  • 加算収入を適切に配分・報告しているか

2027年度介護報酬改定も見据え、報酬や加算要件が変わった場合の収支計画を複数作成しておくと、制度変更への対応がしやすくなります。

介護職員等処遇改善加算については、以下の記事も参考にしてください。

▶︎2026年介護職員等処遇改善加算の臨時改定マニュアル

▶︎2026年処遇改善加算の変更点と実務対応|返還リスクを防ぐために今やるべきこと

▶︎令和8年度介護職員等処遇改善加算の算定要件と制度運用の実務

採用と定着の仕組みを改善する

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採用媒体を増やすだけでなく、職員が退職する理由を把握することが重要です。入職後の教育、業務量、シフト、上司との関係、評価制度、キャリア形成などを確認します。短時間勤務や固定曜日勤務など、働き方の選択肢を増やすことも有効です。ICTや介護ロボットを導入する場合は、現場の業務負担を実際に軽減できているかを検証しましょう。

職員の処遇改善や人材定着などについては、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。

▶︎令和6年度介護報酬改定を踏まえた処遇改善施策のゆくえ

▶︎人が足りない!定着しない!介護業界の人手不足問題にはどう向き合うべき?

不採算事業の縮小・統合を検討する

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複数の施設やサービスを運営している場合は、拠点別・サービス別の収支を確認します。赤字事業を放置すると、黒字事業の資金まで失う可能性があるため注意が必要です。

改善可能性が低い事業については、定員変更、営業日縮小、近隣拠点との統合、事業譲渡などを検討しましょう。ただし、利用者へのサービス継続や職員の雇用に配慮し、自治体や関係機関と調整しながら進める必要があります。

金融機関や専門家へ早めに相談する

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資金が不足してから相談するのではなく、数か月先の資金繰りに懸念が生じた段階で金融機関や税理士などへ相談しましょう。相談時には、月次試算表、資金繰り表、借入金一覧、利用者数、稼働率、改善計画を準備します。数値と改善策を示すことで、追加融資や返済条件変更について具体的な協議をしやすくなります。

介護事業者の資金調達については、以下の記事で詳細に解説しています。

▶︎介護事業者の資金調達とは?具体的な方法から、メリット・デメリットを解説

経営継続が難しい場合はM&A・事業譲渡も選択肢になる

自力での経営改善が難しい場合でも、直ちに倒産・廃業を選ぶ必要はありません。第三者へ法人や事業を譲渡し、運営を引き継いでもらう方法があります。ここでは、M&Aで事業を譲渡するメリットや具体的な事例などを解説します。

▶︎【2026年】介護業界のM&A事例から読み解く最新動向と成功ポイント

倒産とM&A・事業譲渡の違い

倒産とM&A・事業譲渡は、いずれも現在の経営者が従来どおり事業を継続できなくなる点では共通していますが、手続きの目的や利用者、職員、取引先への影響は大きく異なります。主な違いは以下の表の通りです。

比較項目 倒産・廃業・破産 M&A・事業譲渡
事業 終了する可能性が高い 買い手のもとで継続できる可能性がある
利用者 転居・他事業所への移行が必要になる場合がある 同じ施設・事業所を利用できる可能性がある
職員 解雇・雇用終了の可能性がある 雇用を引き継げる可能性がある
取引先 契約終了や債権回収問題が生じる 契約を継続できる場合がある
経営者 資産処分や廃業費用が発生する 譲渡対価を受け取れる可能性がある
借入・保証 債務整理が必要 買い手との交渉により個人保証を解除できる場合がある
地域への影響 介護サービスの供給が減少する 地域の介護機能を維持できる可能性がある

倒産は主に債務を整理する手続きであり、破産では施設の閉鎖や職員の解雇、利用者の転居・転所が必要になる場合があります。ただし、民事再生などによって事業を継続するケースもあるため、倒産した施設が必ず閉鎖されるわけではありません。

一方、M&A・事業譲渡は、経営権や事業を第三者へ引き継ぐ方法です。運営主体は変わりますが、条件が整えば、介護サービスや職員の雇用を継続できる可能性があります。

ただし、契約や債務、雇用、経営者の個人保証などがすべて自動的に引き継がれるわけではありません。承継範囲や条件について、買い手や金融機関、行政などと調整する必要があります。選択肢を残すためにも、資金が尽きる前の早い段階からM&Aを検討することが重要です。

訪問介護や通所介護(デイサービス)の事業売却・M&Aの方法については、以下の記事を参考にしてみてください。

▶︎【2025年最新版】訪問介護のM&A完全ガイド~後悔しない売却・譲渡の進め方~

▶︎【2025年最新版】通所介護(デイサービス)の売却・M&A完全ガイド~後悔しない事業譲渡の進め方と成功事例~

介護事業をM&Aで譲渡するメリット

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介護事業をM&Aで譲渡する大きなメリットは、経営者が事業から退いた後も、利用者への介護サービスを継続しやすいことです。廃業すると、利用者は別の施設への転居や他事業所との契約が必要になる場合があります。一方、M&Aによって運営が引き継がれれば、同じ施設や事業所でサービスを受け続けられる可能性があります。

職員の雇用を守りやすい点もメリットです。経験のある介護職員や管理者、ケアマネジャーは、買い手にとっても重要な経営資源となります。継続雇用が実現すれば、利用者も慣れた職員から支援を受けやすくなるでしょう。ただし、事業譲渡では職員本人の同意や雇用契約の再締結が必要になるため、給与や勤務地、有給休暇などの条件を事前に調整しなければなりません。

親族や職員に後継者がいない場合でも、M&Aを利用すれば第三者へ経営を引き継ぐことが可能です。さらに、買い手の採用力や資金力、運営ノウハウを活用することで、人材不足の改善や設備更新、管理業務の効率化を進められる場合もあります。

株式譲渡では法人の借入金は原則としてそのまま残りますが、買い手の信用力などを踏まえ、金融機関との協議によって旧経営者の個人保証を解除できる場合があります。事業譲渡で借入金を承継する場合には、原則として金融機関など債権者との個別調整が必要です。ただし、M&Aの成立だけで保証が自動的に外れるわけではなく、金融機関の同意と正式な手続きが必要です。

このようにM&Aは、後継者問題を解決するだけでなく、利用者へのサービスや職員の雇用、地域の介護インフラを維持する手段にもなります。ただし、これらのメリットが必ず実現するとは限らないため、譲渡価格だけでなく、雇用継続や運営方針、個人保証の扱いなども譲渡条件として調整することが重要です。

倒産前にM&Aを検討すべき理由

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資金が尽きた後では、通常のM&Aを進めることが難しくなります。買い手候補の探索、施設見学、資料確認、条件交渉、行政との調整には一定の期間が必要になるためです。給与遅配、税金・社会保険料の滞納、介護報酬の返還、職員の大量退職などが発生すると、買い手にとってのリスクが高まります。利用者や職員が離れれば、事業価値も低下します。

M&Aを実行するか決まっていない段階でも、資金と時間に余裕があるうちに、自力再建、縮小、廃業、M&Aを比較することが重要です。

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介護施設のM&A事例

介護施設・介護事業所のM&Aでは、後継者不在や人材不足、採算性の悪化などを抱えていても、第三者への譲渡によって事業を継続できる場合があります。ここでは、介護M&A支援センターが支援した成約事例のなかから、利用者へのサービスや職員の雇用を守りながら事業承継を実現した事例を紹介します。

この他の成功事例については、以下のページも参考にしてみてください。

▶︎成約事例

▶︎成約者インタビュー

株式会社フルショウが後継者不在を理由に介護事業を譲渡した事例

株式会社フルショウは、訪問介護・居宅介護・移動支援を提供する「あけぼの」を10年以上にわたって運営してきました。しかし、数年前から職員の採用が難しくなり、既存利用者へのサービス提供で手いっぱいとなったため、新規利用者を十分に受け入れられない状況が続いていました。

経営者は後継者の育成も検討していましたが、実現できないまま自身も年齢を重ねていきました。さらに、新型コロナウイルスの流行を受け、一人で経営を担う自分が感染した場合、事業を継続できなくなるのではないかという不安を抱いたことが、M&Aを具体的に検討するきっかけとなっています。

譲渡先を探すにあたっては、長年勤務してきた職員と、事業所を頼りにする利用者を守ることが重視されました。最終的には、経営体制が整い、明確な経営ビジョンを持つ企業への譲渡が実現しています。譲渡後も元経営者は、自身が担当していた利用者へのケアを続けながら、経営上の重圧から離れることができました。

この事例は、人材不足や後継者不在によって将来の事業継続に不安がある場合でも、早めにM&Aを検討することで、職員と利用者を守りながら経営を引き継げる可能性があることを示しています。

▶︎成約者インタビュー:【訪問介護・居宅介護・移動支援】コロナの流行、後継者不在のなか自身も高齢に…従業員と利用者を守るための大きな決断

合同会社えいわが経営改善途上の訪問看護事業を譲渡した事例

合同会社えいわは、本業とは別の新規事業として「こもれび訪問看護ステーション」を立ち上げました。しかし、開設当初は看護師を採用できず、約半年間にわたって事業を開始できない状態が続きます。人材を確保した後も、訪問先となる利用者を十分に増やせず、黒字化に向けた試行錯誤が続いていました。

さらに、本業の後継者として働いていた経営者の息子が転職を希望したことで、本業と訪問看護事業を両立することが難しくなりました。自力で黒字化するには時間がかかると判断し、訪問看護事業の譲渡を決断しています。

譲渡先の選定では、譲渡金額だけでなく、職員が安心して働き続けられることや、利用者を大切にする経営方針が重視されました。複数の候補企業と面談した結果、経営者と同様に職員・利用者を大切にする考えを持つ企業への譲渡が実現しています。

職員への説明時には退職を申し出る動きもありましたが、譲受企業との面談や個別説明の機会を設けたことで、最終的に退職者を出さずに承継できました。経営者は譲渡後、本業に集中できるようになり、今後の経営について考える時間も確保できたとしています。

この事例は、黒字化していない介護事業でも、職員や利用者、事業の将来性などを評価する買い手が見つかれば、M&Aが成立する可能性を示しています。また、複数事業の両立が困難になった場合に、不採算事業を廃止せず、第三者へ引き継ぐ選択肢があることも分かります。

▶︎【訪問看護】黒字化への道のりを模索の中、本業の後継者が退職希望… 従業員と利用者を守ったM&A成約事例


介護施設の倒産に関するよくある質問

介護施設の倒産に関するよくある質問とその回答を紹介します。

介護施設が倒産すると利用者はどうなる?

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倒産したからといって、施設が即日閉鎖されるとは限りません。民事再生や会社更生、スポンサーへの事業譲渡によって運営が継続される場合があります。

閉鎖する場合は、自治体、ケアマネジャー、地域包括支援センターなどと連携し、利用者がほかの施設・事業所へ移れるよう調整します。ただし、希望する地域や条件の受け入れ先がすぐに見つかるとは限りません。入居一時金や預り金がある場合は、契約内容や保全措置、倒産手続きによって返還額が変わる可能性があります。

特別養護老人ホームが潰れることはある?

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特養でも、運営法人の経営悪化によって閉鎖や他法人への事業承継が必要になる可能性はあります。社会福祉法人が運営しているという理由だけで、経営破綻の可能性がなくなるわけではありません。ただし、特養は地域の介護基盤として公共性が高いため、自治体との調整や他法人への承継によって、サービス継続が図られる場合があります。

介護施設が倒産する前兆は?

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介護施設が倒産する前兆としては、利用者数や入居率の継続的な低下、職員の大量退職、給与・取引先への支払い遅延、設備更新の先送り、管理者の相次ぐ交代などが挙げられます。一つの兆候だけで倒産すると判断することはできませんが、複数の問題が同時に発生し、改善されない場合は注意が必要です。

赤字になったらすぐに事業を売却すべき?

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単月の赤字だけで直ちに売却する必要はありません。季節変動や一時的な修繕費、採用費によって赤字になることもあります。ただし、構造的な赤字が続き、改善策を実行しても資金が減少している場合は、早めにM&Aを含む選択肢を比較する必要があります。資金が尽きるまで待つと、売却条件や買い手候補が限られてしまうため注意が必要です。

倒産と廃業は何が違う?

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倒産は、債務の支払いが困難になり、破産や民事再生などの法的整理に入った状態などを指します。廃業は、経営者が自主的に事業を終了することです。債務をすべて支払える状態で廃業するケースもあれば、債務超過により破産手続きを伴うケースもあります。また、法人を残したまま一部の介護事業だけを廃止する場合もあります。

まとめ

2025年の介護事業者の倒産は176件、休廃業・解散は653件に達し、いずれも過去最多となりました。特に訪問介護では、人手不足や移動コスト、介護報酬改定などの影響を受け、小規模事業者を中心に厳しい状況が続いています。

倒産を防ぐには、月次収支と資金繰りの把握、利用者獲得、加算・請求の点検、人材定着、不採算事業の見直しを早い段階から進めることが重要です。

それでも自力での事業継続が難しい場合は、倒産や廃業だけでなく、M&A・事業譲渡によって利用者へのサービスや職員の雇用を残せる可能性があります。

資金が尽きてからでは、選べる手段が限られます。経営や資金繰りに不安がある場合は、介護業界特化のM&A仲介「介護M&A支援センター」へ早めにご相談ください。

ライター紹介
太田丈史
太田 丈史
ブティックス株式会社
M&A事業 副事業部長
エグゼクティブコンサルタント

ブティックス(株)へ入社後、介護用品通販ショップの運営責任者、有料老人ホームの入居者紹介事業の責任者を歴任。その後、CareTEXの立ち上げメンバーとして、様々な介護福祉業界ニーズのマッチングに着手。
2015年にはM&A事業を立ち上げ、介護福祉業界における広い人脈を背景に10年間で120件の成約実績を持つ。


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