成約者インタビュー

成約者インタビュー Vol.12

【訪問マッサージ】地域に根ざした整骨院から、高齢者への恩返しへ──M&Aで叶えた世界一周の夢と事業の両立

地域密着で好調だった整骨院から、高齢者への恩返しとして訪問マッサージ事業へと転換された河北様。将来の事業承継を見据えて売却をご相談いただきましたが、買い手企業との価値観の一致と信頼関係が築けたことで、想定よりも早いタイミングでM&Aを決断されました。 現在も変わらぬ働き方を続けながら、事業のさらなる拡大と、夢である「世界一周旅行」に向けて一歩ずつ前進されています。 今回は、そんな河北様の想いと歩みについて、お話を伺いました。

インタビュアーブティックス株式会社 田中


訪問マッサージ事業を始められたきっかけをお伺いできますでしょうか。

私は27年前に整骨院を開業し、地域に根ざした活動を続けてきました。
当時はまだデイサービスが少なく、整骨院は地域の高齢者が自然と集まる場所でした。歩いて通院すること自体がリハビリになり、待合室では患者さん同士の交流も生まれ、心身ともに良い効果を感じていました。
しかし、時代の流れとともにデイサービスが普及し、治療の機会が徐々に減少。しばらくすると、以前は頻繁に通っていた患者さんが寝たきりになったという連絡を受けることが増えてきました。週に5回ほど顔を合わせていた方が、突然来られなくなり、再会したときにはまるで別人のように変わってしまっていたこともありました。
さらに、かつては良好な関係に見えていた患者さんとそのご家族が、家庭での介護をきっかけに、虐待のような状況に陥ってしまうケースも目の当たりにしました。
そんな現実を前に、「自分に何かできることはないか」と思っていました。

私自身、おばあちゃん子として育ちました。祖母からは「今日の豊かな日本があるのは高齢者のおかげ。感謝しないといけないよ」と教えられ、いつか何らかの形で恩返しをしたいという気持ちを持ち続けてきました。
そんな中、寝たきりになった方々への治療に取り組みたいという想いが芽生えました。
寝たきりの方は、仰向けのまま天井だけを見て過ごす時間が長くなります。私たちが訪問リハビリマッサージで介入することで、寝返りが打てるようになれば、視界に動きが生まれ、見える景色が変わります。それだけで、人生の価値が大きく変わると感じています。
人生の終盤の時間を、少しでも豊かで前向きなものにしたい——そんな想いで取り組んでいます。
こうした経緯から、当時運営していた整骨院を訪問マッサージ事業へと転換しました。
自分で言うのも何ですが、整骨院は地域で一番流行っていたと思います。だからこそ、事業転換を決めたときは「もったいない」と周囲から言われました。それでも、自分の信念を貫いて進めてきて、気づけばもう15年が経ちました。

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(河北様と利用者様)

河北様の想いを行動に移される形で、事業を進められてきたのですね。15年ほど事業を続けられる中で、何か悩みや課題はありましたか?

はい、いくつかの課題がありました。
まず、業種的にスタッフの採用が非常に難しいという点です。訪問マッサージには「あん摩マッサージ指圧師」という国家資格が必要なのですが、この資格を持っている人自体が少なく、人材確保が常に課題でした。
また、訪問マッサージという業態そのものが、社会的に弱い立場にある業種でもあります。ちょっとした法律の改定や医療費の改定、コロナ禍など事業に大きな影響が出ることもありました。、小規模な院としての経営には、そうした外部環境の変化に対応する難しさを常に感じていました。


そのような中で、M&Aという決断をされたと思うのですが、M&Aはいつごろから考えていたのですか?

私自身、50代半ばを過ぎた頃から「60歳くらいになったら売却も選択肢の一つかもしれない」と、漠然と考えるようになりました。自社の価値を知りたいという好奇心から、ブティックスさんに問い合わせをしたのがきっかけです。業績は好調でしたし、正直なところ、当時は売却するつもりはまったくありませんでした。私の中では「M&A=経営が厳しくなった事業所のための手段・高齢化により引退を考える際の手段」という固定概念があったんです。
ただ、担当の矢野さん(弊社アドバイザー)との面談で、私の考えや不安、そして今後実現したい夢について丁寧に耳を傾けていただきました。何度も対話を重ねるうちに、「将来の安定と発展のためにはM&Aという選択肢も有り得るのではないか」と、少しずつ気持ちが変化していきました。
夫婦2人で先頭に立って走り続けてきましたが、それに伴う疲弊感もありましたし、今後も事業を引っ張っていくことに限界を感じていたのも事実です。今は業績が良くても、今後さらに競争が激しくなる中で、生き残っていけるのかという慢性的な不安もありました。


そうだったのですね。矢野との話の中で、少しずつM&Aという選択肢が具体化していったのですね。

そうですね。本当に少しずつです。
M&Aをして無職になってしまったらどうしようとか、買い手企業の傘下に入ったことで、自分の意思とは違う働き方を強いられるのではないか——そんな不安もあり、当初はあまり前向きにはなれませんでした。


そのような不安がある中で、M&Aという決断ができたのは、買い手様との面談でその不安が解消されたからでしょうか?
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(スタッフの方と利用者様)

そうですね。矢野さんから「この買い手様であれば、自信を持ってご紹介できます」と言われて面談をしたのですが、買い手企業は医科・歯科・看護・介護といった多職種で事業展開をされていて、偶然にも本社が私たちと同じ地域だったんです。実は以前、介護系の勉強会に参加した際に、その企業の方々と同席していたことがあり、今回本社に伺った際に再会して驚きました。
面談では、買い手企業の代表者様と仕事観について深くお話することができました。「仕事を単なる作業としてではなく、関わる人を幸せにするための手段と考える」という想いを伺い、非常に共感しました。また、スタッフが安心して働ける環境づくりに真摯に取り組まれている姿勢にも強く惹かれました。 この方のもとで、医療・介護・福祉が連携する環境で働けるのであれば、私自身だけでなく、スタッフにとっても大きなプラスになると確信し、今回の買い手企業への参画を決断しました。

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(スタッフの方と利用者様)

買い手様とのお話の中で、ご自身のM&Aに対する不安が解消されたことで、決断に至ったということですね。

そうですね。ただ、単に買い手様から条件提示があっただけでは、決断には至らなかったと思います。何度か面談を重ねる中で、少しずつ気持ちが固まっていったという感じです。
その間も矢野さんと面談を重ね、不安なことはすべて確認させていただきました。もう聞くことがないくらい、しっかりと話し合えたと思います。


現在は、どのような働き方をされているのですか?

働き方はまったく変わっていません。執行役員として、以前と同じように現場で活動しています。M&Aを決断した後も、「働き方が変わってしまうのでは」「ノルマが課されるのでは」「スタッフへの対応が変わってしまうのでは」といった不安は正直ありましたが、実際にはそうしたことは一切ありませんでした。
むしろ、代表の方がスタッフの負担を減らす働き方を一緒に考えてくださったり、従業員の給与ベースアップにもすぐに賛同してくださったんです。これまで組織として弱かった部分も、本社の支援を受けながら強固な体制づくりが進んでおり、私が抱えていた不安は徐々に安心感へと変わってきています。
これまでは「訪問マッサージを組織化すること」にあまり関心がなかったのですが、今では明確なビジョンを持って、しっかりとした組織づくりに取り組みたいという意欲が湧いています。


それは素敵ですね。買い手企業への参画によって、新しいことに挑戦しながら、これまで通りの働き方も続けられているのですね。

私はもともと、大きな組織を作ることが苦手だと思っていたので、「地域に根付いた会社を作る」ということだけを目標にしていました。でも、心強い企業の傘下に入ったことで、もう少し大きなビジョンを持って、近隣地域にも訪問マッサージの事業所を複数展開していこうという話もできるようになりました。

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(河北様と利用者様)

当初は60歳以降に売却を検討しようかなということだったのですが、今回早く売却を決断され、今後やりたいことなどはございますか?

世界一周の船旅をしたいと思っています。
矢野さんとの面談では、事業に対する不安やM&Aの話だけでなく、私自身の夢や、やりたいことについてもお話しさせていただきました。子どもの頃からの夢だった「世界一周旅行」を実現したいという想いを伝えたんです。
その旅には約3ヶ月半かかるのですが、もし私だけで会社を運営していたら、3ヶ月半も離れていたら会社は潰れてしまうだろうと思いました。だからこそ、「この夢を実現するためにも、M&Aという選択は良いかもしれませんね」と、面談の中でも話していました。


弊社アドバイザー矢野の対応はいかがでしたか?

矢野さんは、これ以上親身になって対応してくださる方はいないのではないかと思うほど、丁寧にサポートしてくださいました。いろんな話を相談させてもらって、矢野さんだったからこそ、今回の決断に至ったと思っています。


そのように言っていただけて、大変ありがたいです。最後に、M&Aにお悩みの経営者の方に向けて、一言いただけますでしょうか。

まずは、自分で話をしてみることが大切だと思います。
自分の中の固定概念だけで判断してしまうと、せっかくのチャンスを逃してしまうかもしれませんし、自分の考え方が実は違っていたということもあるかもしれません。
お話してみて、情報交換をするだけならお金もかかりません。
もし不安があったり、自己実現したい夢があるなら、M&Aというのも一つの手段として、まずは相談してみることが、経営者としても大事なことだと思います。


貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。