介護経営コラム

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介護DXとは?現場の負担軽減と経営改善につなげる進め方

片山 海斗 氏
更新日:2026年6月29日
介護DXとは?現場の負担軽減と経営改善につなげる進め方

介護業界では、人材不足や職員の業務負担への対応策として、介護DXが重要な経営テーマになっています。しかし、「介護ソフトを導入すればDXになる」「紙をなくせばよい」と考えてしまうと、期待した効果を得られないことがあります。

介護DXの本来の目的は、デジタル技術を導入することではありません。仕事の進め方そのものを見直し、限られた人員でも質の高い介護サービスを継続できる体制をつくることです。本記事では、介護DXの意味や対象となる業務、経営改善やM&Aにつながるメリット、導入時の注意点を解説します。

介護DXとは

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、AI、IoT、ビッグデータなどのデジタル技術を活用し、介護の労働生産性を向上させることが目的です。

介護現場では、介護記録の電子化、見守りセンサーの導入、ケアプランや請求データの連携などが代表的な取り組みとして挙げられます。ただし、紙の記録をそのままパソコンに移すだけでは、十分なDXとはいえません。それは業務の一部をデジタル化した段階です。記録した情報が申し送りや請求、経営判断にも活用され、業務全体の流れが改善されて初めて、介護DXの効果が生まれます。

厚生労働省は、介護現場の生産性向上について、業務から「ムリ・ムダ・ムラ」をなくして負担を軽くし、生み出した時間を直接的なケアに充てることで、介護サービスの質の向上につなげる考え方を示しています。介護DXは職員を減らすためのものではなく、職員が利用者と向き合う時間を確保するための仕組みづくりと捉えることが大切と言えるでしょう。

介護業界でDXが求められる背景

介護事業所では、利用者へのケアに加えて、記録、申し送り、請求、シフト作成、研修、委員会、各種書類の管理など、多くの間接業務が発生します。これらを紙やExcel、口頭で個別に管理していると、同じ内容を何度も入力したり、必要な資料を探したりする時間が増えてしまいます。

また、業務の進め方が特定の管理者やベテラン職員の経験に依存している事業所では、担当者の休職や退職によって業務が滞るおそれがあります。人材確保が難しい介護業界において、既存職員の負担を軽減し、誰が担当しても一定の水準で業務を行える体制を整えることは、重要な経営課題です。

DXによって情報を一元化し、業務手順を標準化すれば、職員間の情報共有が進み、新しく入職した職員も業務を覚えやすくなります。介護DXは単に人手不足を補うだけではなく、働きやすい環境を整え、人材の定着や組織力の向上を目指す取り組みでもあるのです。

介護業界でDXが求められる背景

介護DXで改善できる主な業務

介護DXは、介護記録を紙からデジタルへ置き換えるだけのものではありません。記録、情報共有、請求、勤怠管理といった業務を一連の流れとして見直し、現場と管理者の双方にかかる負担を減らすことに大きな意味があります。

例えば、タブレットやスマートフォンから介護記録を入力できるようになれば、事務所に戻らず、その場で記録を残せます。そのため、転記の手間や入力漏れがありません。

訪問介護や訪問看護では、記録や申し送りを外出先から行える環境を整えることで、職員が事務所へ戻る回数を減らすことも可能です。直行直帰を取り入れやすくなり、移動時間の短縮や働き方の柔軟化にもつながります。

介護記録と請求ソフトを連携すれば、サービスの実績を請求データへ反映しやすくなります。入力漏れや請求ミスの防止に加え、管理者や事務職員が実績を確認する負担も軽減されるでしょう。

また、介護DXの対象となる業務は、記録や請求だけではありません。シフト作成や勤怠管理、研修計画や研修の受講状況、委員会の議事録、BCPの訓練記録などといったものもデジタルで管理できます。書類の保管場所を統一し、必要な情報を検索できる状態にしておけば、管理者の確認作業や職員への周知も進めやすくなります。

さらに、介護DXは運営指導への備えとしても有効です。各種書類を電子データで管理している場合、運営指導ではディスプレイ上で内容を確認できるため、確認のためだけに大量の書類を印刷する必要はありません。

ただし、書類を電子保存しているだけでは、十分な対策とはいえません。必要な記録をすぐに表示できることに加え、計画の作成、利用者や家族からの同意、サービスの提供、評価、見直しまでの流れを確認できる状態にしておくことが重要です。日頃から情報を整理しておくことで、運営指導前の準備に追われることなく、適切な事業所運営にもつなげられます。

介護DXのメリット

介護DXの大きなメリットは、現場の負担軽減と経営改善を同時に進められる点です。書類作成や運営管理にかかる負担を減らすことができれば、残業時間もなくなり、利用者対応や職員教育に時間を充てやすくなります。

さらに、デジタル技術を活用することで、利用者数、稼働率、人件費、加算の取得状況、返戻件数などをデータで把握できれば、経営上の課題を早く発見できます。感覚や経験だけに頼るのではなく、数字を根拠に人員配置や営業活動、加算取得などの判断を行えることも、介護DXの重要な効果です。

こうした業務の標準化や経営情報の可視化は、M&Aや事業承継にも役立ちます。業務の進め方や管理方法が特定の担当者の頭の中にしかない事業所は、経営者や管理者が変わった際に運営が不安定になりやすいものです。一方、業務手順や必要書類、経営データが整理されていれば、買い手や後継者が事業の実態を把握しやすく、引き継ぎも円滑に進めやすくなります。

M&Aでは、売上や利益だけでなく、日々の業務が適切に管理され、買収後も継続できるかが重要です。介護DXによって属人化を解消し、必要な情報を確認できる状態にしておくことは、買い手の不安を減らし、買収後の円滑な事業運営にもつながります。

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介護DXを進める際の注意点

介護DXを成功させるには、システムの導入自体を目的にしないことが重要です。まずは「記録に時間がかかっている」「請求ミスや返戻を減らしたい」「運営指導に必要な書類をすぐ確認できるようにしたい」など、自社が解決したい課題を明確にしましょう。目的が曖昧なまま導入すると、機能を十分に活用できず、費用だけが発生する可能性があります。

導入前には、現在の業務の流れを整理することも必要です。紙の記録をそのままデジタルに置き換えるだけでは、かえって職員の負担が大きくなる場合があります。同じ情報を複数回記録していないか、不要な確認作業が残っていないか、特定の職員しか分からない業務がないかを確認し、業務そのものを見直したうえでシステムを選ぶことが大切です。

また、介護DXは経営者や管理者だけで進めるのではなく、実際に使用する現場職員の意見を取り入れる必要があります。操作が複雑なシステムや、現場の業務に合わない機能を導入すると、利用が定着せず、紙とデジタルの二重管理が続いてしまいます。導入する目的やメリットを職員に説明し、操作研修やマニュアルの整備、相談できる担当者の配置など、定着に向けた支援も行いましょう。

すべての業務を一度にデジタル化すると、現場が混乱するおそれがあります。まずは介護記録や申し送り、勤怠管理など、負担が大きく効果を確認しやすい業務から始める方法が現実的です。導入後は、記録時間、残業時間、入力ミス、返戻件数などが実際に減ったかを確認し、職員の意見をもとに運用を改善していきます。

ツールを選ぶ際は、導入費用だけでなく、月額料金、保守費用、端末購入費、職員研修にかかる時間なども含めて検討する必要があります。既存の介護ソフトや請求システムと連携できるか、制度改正への対応や導入後のサポートが受けられるかも確認しておきましょう。

さらに、介護事業所では利用者の健康状態や家族情報など、重要な個人情報を扱います。閲覧権限の設定、パスワード管理、端末の紛失対策、データのバックアップ、退職者のアカウント削除など、情報セキュリティ対策も欠かせません。業務効率だけを重視するのではなく、安全性や継続性も踏まえて、自社に合った介護DXを段階的に進めることが大切です。

【ポイント】
  1. システムの導入自体を目的にしない
  2. 導入前に現在の業務の流れを整理する
  3. 実際に使用する現場職員の意見を取り入れる
  4. 一気にデジタル化しなくてもよい
  5. 導入費用だけでなく、かかる時間や維持費についても総合的に検討する
  6. セキュリティ対策を欠かさない

まとめ

介護DXとは、デジタル技術を活用して業務を効率化し、介護の労働生産性やサービスの質を高める取り組みです。介護記録や請求、情報共有、研修、書類管理を見直すことで、職員の負担軽減だけでなく、運営指導への備えや経営状況の可視化にもつながります。

また、業務の属人化を解消し、経営情報を整理しておくことは、M&Aや事業承継を円滑に進めるうえでも重要です。まずは現場で時間がかかっている作業や、特定の職員に依存している業務を洗い出し、自社に必要な介護DXから段階的に進めていきましょう。

ライター紹介
片山海斗
片山 海斗 氏
Professional Care International株式会社 代表取締役

史上最年少で介護事業所を経営し、介護の学校やWeb会社など複数のスタートアップに参画。グラフィックデザイナーやSEとしての経験もあり、データサイエンス、DX、AI、デジタルマーケティングに精通。また、介護保険や総合⽀援法などの各法令に関する⾒識を持つ。

URL:https://pcig.jp/
お問合せはこちらから:https://pcig.jp/contact/


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