1.骨太方針2026の策定に向けて
令和8年6月中には「骨太方針2026」が閣議決定される予定です。「骨太方針」とは、政府による経済と財政運営の関する基本方針であり、毎年春に策定されることとなっています。閣議決定されますので、「骨太方針」に記載された内容は確実の政策実現に向けて推進されることから今後の社会保障制度改革のゆくえを確認する上でも大変重要であります。
「骨太方針」は毎年注目すべきでありますが、来年4月に予定されている令和9年度(2027年)介護報酬改定に向けては直前となるのが「骨太方針2026」であり、いつも以上に今回は重要度が高く、どのような記載がされるかによって、早くも次期報酬改定の方向性が決定づけられることになります。
現在、政府及び与党と「骨太方針2026」の策定に向けて大詰めを向かています。その中で、財務省は主幹する財政制度等審議会財政制度分科会(通称は財政審)において、毎年春と秋は社会保障制度をテーマに議論を進めていますが、この春の分科会は「骨太方針」の策定を意識し改革提言が行われています。毎年「骨太方針」においてはこの分科会で提言されている内容のいくつかが盛り込まれています。
2.財務省による介護報酬改定のマイナス提言
そして、今回令和8年4月28日に財務省による財政制度等審議会財政制度分科会(財政審)が開催され、社会保障をテーマに厳しい意見提言が行われました。基本的には、財政を司る主幹省庁である財務省の基本スタンスは、財政規律を整えることを前提とした厳しい意見提言であり、我々、介護業界は毎回この提言内容に戦々恐々としています。
今回の財政審での提言内容を論考していきたいと思います。とりわけ今回インパクトの大きい内容は、令和9年度(2027年)介護報酬改定に向けての項目に、「介護サービスの利益率については、足元で、物価上昇の影響がある中でも、過去や他サービスと比較して高い水準にあり」「介護報酬を適正化する必要。」と記載されている点です。つまりは次期報酬改定でのマイナス改定を提言しているのです。この過去や他産業と比べて利益率が高いという根拠は、令和7年度介護事業経営概況調査による全サービス平均の収支差率が6.8%であり、他産業の中小企業平均3.8%と比較しています。しかしながら、経営概況調査はあくまで参考資程度の概略調査であり、報酬改定における改定率の根拠となる指標は、5月実施予定の令和8年度介護事業経営実態調査です。経営概況調査の数字をもとにこの時期にこのような数字を用いて発信することは世論をミスリードすることにもなりかねません。また財務省は以前から介護事業者の多くが中小事業者であるとのことで他産業の中小企業平均と比較していますが、確かに介護事業者には中小事業者が多いとはいえ、大手事業者も一定数存在し、昨今は経営の大規模化も促進されている政策面もあり、他産業の中小企業(大企業と比べて利益率は低い)と比較していることにも違和感を覚えます。
長引く物価高と賃上げへの対応に迫られ、介護事業者の倒産件数は近年では毎年過去最多を更新し続けているような厳しい経営環境の中では、次期介護報酬改定は各サービスの基本報酬単位を含めた大きなプラス改定が必要不可欠であると私は思います。介護事業者の皆さんには、5月実施予定の経営実態調査への協力を行うとともに、政府に対して一致団結して大きな声を上げていく必要があると思います。
3.財政審での個別具体的な提言と注目ポイントとまとめ
ここからは、今回の財政審での個別具体的な意見提言の内容を確認し論考していきたいと思います。今回の内容もほとんどは以前から指摘されている内容でありますが、介護に対して3つのテーマで計12の改革の方向性が示されました。
- 利用者負担の2割負担の範囲拡大
- ケアマネジメントの利用者負担の導入
- 補足給付の見直し
- 老健施設等の多床室の室料負担の見直し
- 介護分野の職員の処遇改善
- 介護現場の生産性向上
- 住宅型有料老人ホームにおける介護報酬の適正化
- インセンティブ交付金の在り方の見直し
- 介護保険事務の広域化・都道府県の役割強化
- 軽度者に対する生活援助サービス等の地域支援事業への移行
- 人口減少地域におけるサービス提供体制の構築
- 保険外サービスの活用
令和9年度介護保険法改正において、見送りとなった給付と負担の見直しに伴う「利用者2割負担の対象拡大」「ケアプランの有料化」「老健等の多床室の室料負担の見直し」「軽度者改革」についてはいつも通り記述され、令和12年改正に向けた早めの布石が打たれています。そして、今回注目すべき各論内容では、⑦住宅型有料老人ホームにおける介護報酬の適正化です。次期介護報酬改定に向けて住宅型有料老人ホーム等の集合住宅に対する訪問介護のマイナス改定とともに、次期が未定ながら新設が予定されている登録制移行に伴う有料老人ホーム等に対するケアプラン作成を担う「新たな相談支援類型」の報酬についても従来の居宅介護支援の単位数よりマイナスとすべきとの提言が示されました。
いずれにせよ、この内容はあくまで財務省の主張であり、全てが実現するわけではありません。今後年末に向けて意見集約される介護給付費分科会での議論のゆくえとともに、6月閣議決定予定の「骨太方針2026」の記述内容におおいに注目していきたいと思います。

斉藤 正行 氏

