介護経営コラム

Column

介護事業所の利益を最大化するには?
経営者が見直すべき経営改善のポイント

片山 海斗 氏
更新日:2026年5月22日
介護事業所の利益を最大化するには?経営者が見直すべき経営改善のポイント

介護事業所を運営する中で、「売上はあるのに、思ったより利益が残らない」と感じることはありませんか。

利用者数を増やすために営業を強化する。人手不足を解消するために採用費をかける。加算を取得して売上を上げる。どれも大切な取り組みですが、売上が増えたとしても、それ以上に経費や、管理コストが増えてしまえば、最終的に利益は残りません。

そもそも利益とは、簡単にいえば「売上から費用(経費・コスト)を差し引いたもの」です。つまり、介護事業所の利益を最大化するためには、売上を上げることと、経費や業務負担を適正に管理することの両方が必要なのです。

特に介護業界では、人材不足や採用コストの上昇、利用者獲得競争、運営指導への対応など、経営者・管理者が向き合うべき課題が増えています。

だからこそ、「どうすれば売上を伸ばせるのか」だけでなく、「どこで利益が圧迫されているのか」までを正しく見極め、自社の状況に合った経営戦略を立てることが重要です。

介護事業所が利益を最大化するために見直すべき経営改善のポイントを整理していきましょう。

1. なぜ介護事業所は「売上があるのに利益が残らない」のか

介護事業所の経営では、目の前に起きている問題がそのまま「本当の課題」に見えてしまうことがあります。

職員が足りない。
利用者が増えない。
稼働率が上がらない。
書類業務が追いつかない。
管理者が現場対応に追われている。

こうした状況が続くと、経営者や管理者はどうしても「早く何かしなければ」と考えます。
しかし、利益が残らない事業所ほど、「何をやるか」から考えてしまいがちです。

人が足りないから求人をかける。利用者が少ないから営業を増やす。書類が整っていないから、とにかく作成を急ぐ。もちろん、どれも必要な場面はあります。

ただし、ここで大切なのは、その施策が本当に今の事業所に合っているかどうかです。

本来は、「なぜ利益が残らないのか」「どこに改善すべき原因があるのか」を先に見極める必要があります。ここを飛ばしてしまうと、経営改善のつもりで始めた施策が、かえって現場を忙しくし、経費を増やす結果になってしまいます。

たとえば、採用費を増やしても、職員が定着しなければ意味がありません。営業件数を増やしても、利用開始や契約につながらなければ、管理者や職員の時間だけが使われます。書類整備を急いでも、日々の運用が追いつかなければ、結局また不備が出てしまいます。

つまり、利益が残らない原因は、売上不足だけではありません。

施策の順番が間違っていること。
本当の原因とは違うところに時間やお金を使っていること。
現場の負担が増え、経営者や管理者が経営戦略や現場改善に使う時間を失っていること。

こうした積み重ねが、介護事業所の利益を少しずつ圧迫していきます。経営改善で重要なのは、「何をやるか」より前に、「なぜその問題が起きているのか」を見ることです。

2. 利益を増やすために経営者が見るべき数字

介護事業所の経営では、数字ではなく、経験や感覚をもとに判断している場面が少なくありません。

「最近、稼働が落ちている気がする」
「紹介はあるのに、なかなか利用につながらない」
「人が足りないから、まず採用を強化しなければいけない」
「管理者が忙しそうだから、とりあえず業務を減らした方がいい」

このような判断は、現場を見ている経営者や管理者だからこそ出てくるものです。ただ、感覚や経験だけで経営判断をしてしまうと、本当の原因とは違うところに時間やお金を使ってしまうことがあります。

たとえば、売上が伸びていないときに「利用者を増やそう」と考えるのは自然です。しかし、実際には利用者数ではなく、稼働率の低さ、加算の取り漏れ、キャンセルの多さ、職員配置のムダ、訪問系であれば移動時間の長さが原因になっている場合もあります。

採用も同じです。「人が足りない」と感じていても、応募が来ていないのか、応募後の連絡が遅く面接につながっていないのか、採用後に定着していないのかによって、考えるべき対策は変わります。

つまり、利益を増やすためには、まず感覚で捉えている課題を数字に変える必要があります。

「売上が足りない」ではなく、売上のどこが足りないのか。
「人が足りない」ではなく、採用のどこで止まっているのか。
「忙しい」ではなく、どの業務にどれだけ時間が取られているのか。

このように課題を数値化し、分解することで、ようやく根拠を持った経営判断ができます。
経営改善とは、思いついた施策を順番に試すことではありません。数字をもとに原因を絞り込み、優先順位を決め、自社に合った戦略を立てることです。

2-1. 売上を「利用者数・平均単価・稼働率」で分解する

まず見るべきなのは、売上の中身です。

月商だけを見ていると、「売上が足りない」という大きな課題に見えます。しかし、売上は一つの数字ではなく、いくつかの要素が組み合わさってできています。

介護事業所の売上は、大きく分けると「利用者数」「平均単価」「稼働率」で考えることができます。

利用者数が少ないのか。
利用回数や提供時間が少ないのか。
算定できる加算を取り切れていないのか。
空き枠やキャンセルが多く、稼働率が低いのか。
訪問系であれば、移動時間が長く、サービス提供に使える時間が少なくなっていないか。

このように分解すると、同じ「売上が伸びない」という状態でも、原因がまったく違うことが分かります。

こうした場合、「もっと営業して利用者を増やす」だけでは解決しません。むしろ、提供エリア、訪問ルート、職員配置、空き時間の使い方、キャンセル時の対応など、運営の中身を見直さなければ、売上は伸びにくくなります。

ここで押さえておきたいのは、介護事業は一般的なビジネスとは違い、制度ビジネスであるという点です。

介護保険サービスや障害福祉サービスは、料金体系やサービス提供内容などの基本的な枠組みが制度によって決められています。飲食店や小売業のように、自社の判断で自由に価格を上げたり、商品内容を大きく変えたりして差別化することは簡単ではありません。

だからこそ、介護事業所では、運営体制の差が売上や利益に直結します。

算定できる加算を適切に取れているか。
職員配置に無理やムダがないか。
空き枠やキャンセルに対応できているか。
訪問系であれば、移動時間や訪問ルートにロスがないか。
施設系や通所系であれば、定員に対する稼働率を維持できているか。

こうした一つひとつの数字を確認することで、どの数字を改善することが利益につながるのかを判断する必要があります。

2-2. 事業フェーズに合わない施策は利益を削る

数字を見るうえで、もう一つ重要なのが、自社の事業フェーズです。

同じ介護事業所でも、開業直後なのか、一定の売上がある段階なのか、複数拠点を展開している段階なのかによって、見るべき数字も優先すべき取り組みも変わります。

開業直後や立ち上げ期であれば、まずは利用者獲得、紹介元づくり、稼働率の向上が重要です。売上の土台を作る段階なので、問い合わせ数、紹介件数、新規利用者数、空き枠数、営業件数などを追う必要があります。

ただし、立ち上げ期に必要なのは営業だけではありません。

運営規程、重要事項説明書、契約書類、各種指針、研修、委員会、BCPなど、事業所運営に必要な書類やルールも整えておく必要があります。この土台が弱いまま走り出すと、後から加算算定や運営指導の場面で問題が出やすくなります。

一定の売上がある事業所では、ただ利用者を増やすだけでは利益が残りにくくなります。この段階では、人件費率、加算の取得状況、稼働率、キャンセル数、移動時間、採用定着率、管理者業務など、運営の中身を見る必要があります。

売上はあるのに利益が残らない事業所では、この段階の見直しが不足していることが多くあります。利用者数は増えているのに、職員配置にムダがある。加算を取り切れていない。キャンセルが多い。採用費が増えている。管理者が日々の対応に追われ、改善に時間を使えていない。

こうした状態では、売上が増えても利益は残りにくくなります。

さらに、複数拠点を展開している段階では、事業所ごとのばらつきが課題になります。

ある事業所は稼働率が高いが、別の事業所は低い。
ある管理者は書類管理ができているが、別の管理者は不備が多い。
加算の取り方や研修の実施状況が事業所ごとに違う。
職員定着率やケアの質に差が出ている。

このような状態で現場任せの運営が続くと、法人全体としての利益が安定しません。

フェーズに合わない施策は、どれだけ正しそうに見えても成果につながりにくいものです。

立ち上げ期なのに、組織化や本部機能ばかりに力を入れる。
収益改善が必要な段階なのに、営業量だけを増やす。
複数拠点になっているのに、各事業所の管理を現場任せにする。

こうしたズレは、経営改善のつもりでも、結果的に利益を削る原因になります。

利益を増やすためには、まず数字で現状を把握すること。そのうえで、自社がどのフェーズにあるのかを見極め、今見るべき数字と優先すべき取り組みを決めることが重要です。

売上、利用者数、平均単価、稼働率、相談件数、利用開始率、応募数、面接数、採用数、入職数、定着率、人件費率、加算、移動時間、管理者業務など。

これらを感覚ではなく数字で捉えることで、ようやく「何を優先すべきか」が見えてきます。

イメージ画像

3. 経営管理の仕組みづくり

数字で現状を整理すると、改善すべき課題が見えやすくなります。

ただ、介護事業所の経営では、課題が一つだけ見つかることはほとんどなく、複数の課題が同時に出てくることが多いです。

ここで重要なのは、見つかった課題をすべて同時に改善しようとしないことです。

限られた人員と時間の中で利益改善を進めるには、「今、何から取り組むべきか」を決める必要があります。そして、決めたことを現場で実行できる形に落とし込み、継続して確認できる状態をつくることが大切です。

分析だけで終わらせず、数字を見て、優先課題を絞り、現場で実行し、継続的に管理する。この流れを事業所の中に定着させることが、利益が残る運営体制につながります。

3-1. 数字をもとに優先課題を絞り込む

数字を確認した後にまず行うべきことは、優先課題の絞り込みです。

介護事業所には、改善したいことが常に複数あります。売上を上げたい、人件費率を下げたい、採用を強化したい、職員の定着率を上げたい、加算を取りたい、運営指導に備えたい。どれも大切ですが、すべてを一度に進めると、現場の負担が増え、結果として何も定着しないことがあります。

優先課題を決めるときは、「目立つ課題」ではなく、「利益への影響が大きい課題」から考えるべきです。

たとえば、人件費率が高い場合でも、単純に人件費を削ればよいという話ではありません。平均単価が低く、売上に対して人件費が重くなっているのか。利用者数は一定数いるものの、移動時間や待機時間が多く、職員の勤務時間に対してサービス提供時間が少ないのか。あるいは、利用者数に対して職員数が多く、配置のバランスが合っていないのか。

同じ「人件費率が高い」という数字でも、原因によって優先すべき取り組みは変わります。

平均単価が低いのであれば、加算の算定状況やサービス提供内容を確認する必要があります。移動時間が長いのであれば、訪問ルートや提供エリアの見直しが優先になるかもしれません。職員配置のバランスが悪いのであれば、シフトや担当の組み方を見直す必要があります。

つまり、数字を見た後は、「どの課題が利益に最も影響しているのか」を判断することが重要です。

優先順位を決める際は、売上への影響、利益率への影響、現場負担への影響、放置した場合のリスクを総合的に見ます。売上に直結する課題を優先する場合もあれば、採用費や離職による損失を減らす方が重要な場合もあります。また、加算要件や書類不備のように、すぐに売上を増やすものではなくても、返還リスクや運営指導のリスクを考えると早めに対応すべき課題もあります。

ここで大切なのは、「やった方がいいこと」を増やすのではなく、「今やるべきこと」を絞ることです。

経営改善は、施策の数で成果が決まるわけではありません。限られた人員と時間を、最も効果の大きい課題に集中させましょう。

3-2. 現場のムダと属人化を減らし、実行できる体制にする

優先課題を決めても、それが現場で実行できなければ意味がありません。

経営者や管理者が「稼働率を上げよう」「採用を改善しよう」「加算を見直そう」と方針を決めても、現場の業務が整理されていなければ、日々の対応に流されて終わってしまいます。

そのため、もしすぐに課題に着手できない状況なのであれば、まずは現場のムダと属人化を減らすことが必要です。

利益が残らない事業所では、本来、現場改善を進めるべき管理者が非常に忙しいケースが多くあります。

現場対応、職員対応、利用者対応、家族対応、請求業務、書類管理、研修、委員会、行政対応。事業所によっては、管理者がほとんどすべてを抱えている状態もあります。

この状態が続くと、管理者は日々の業務を回すだけで精一杯になります。

本来であれば、管理者は稼働率、人員配置、職員定着、加算、書類管理、業務効率などを見ながら、事業所全体を改善していく立場です。しかし、目の前の対応に追われていると、数字を確認する時間も、課題を整理する時間も、職員と向き合う時間も削られていきます。
すると、事業所運営はどうしても後追いになります。

職員が辞めてから採用を急ぐ。
稼働率が下がってから営業を増やす。
書類不備に気づいてから慌てて整える。
運営指導が近づいてから確認を始める。

このような対応が続くと、問題が起きるたびに管理者の負担が増えます。そして、管理者の負担が増えるほど、根本的な改善に使う時間はさらに減っていく悪循環に陥ります。経営判断に必要な時間が取れないままでは、いつまでも目の前の対応に追われる運営になってしまいます。

たとえば、空き枠があるのに事業所内で共有されていない。キャンセルが出ても振替や再調整の流れが決まっていない。紹介や問い合わせが入った後、誰が確認し、誰が返答するのかが曖昧になっている。

こうしたムダは、毎日の中では小さく見えます。しかし積み重なると、売上機会の損失や職員負担の増加につながります。

属人化も同じです。

「あの利用者はこの職員しか対応できない」「この書類は管理者しか分からない」「この紹介元とのやり取りは特定の職員しか知らない」といった状態が続くと、特定の人に負担が集中します。

介護では、利用者との相性や信頼関係はとても大切です。ただし、それと「特定の職員にしか対応できない状態」は別です。

利用者ごとの支援内容、声かけの注意点、生活歴、家族との関係性、ケアで気をつけるポイントなどを記録し、事業所内で共有できていれば、複数の職員が一定の水準で対応しやすくなります。

属人化を減らすとは、人の個性や経験をなくすことではありません。うまくいっている対応を、事業所全体で再現できるようにすることです。

現場で実行できる体制をつくるには、改善策を「方針」で終わらせないことが大切です。

誰が確認するのか。
いつまでに行うのか。
どの数字を見て判断するのか。
改善できたかどうかを、どのタイミングで確認するのか。

ここまで決めておくことで、経営改善は現場で実行しやすくなります。このように、改善策を業務の流れに落とし込むことで、現場任せではなく、事業所として改善を進めやすくなります。

イメージ画像

3-3. ICT・DXで数字と業務を継続管理する

優先課題を決め、現場で実行できる体制をつくったら、次に必要なのは継続管理です。

介護事業所の経営改善は、一度取り組んで終わるものではありません。利用者の状況、職員体制、地域の競争環境、制度改正、加算要件などは常に変わります。だからこそ、数字や業務の状況を継続的に確認できる仕組みが必要です。

ここで役立つのがICTやDXです。

ただし、ICTやDXは、単に新しいシステムを入れることではありません。目的は、経営判断に必要な情報を、必要なタイミングで確認できる状態にすることです。

多くの事業所では、情報が分散しています。売上は請求ソフト、採用状況は求人媒体やメール、研修記録は紙ファイル、加算要件は管理者の記憶、紹介元とのやり取りは担当者のメモ。こうした状態では、経営判断に必要な情報を集めるだけで時間がかかります。

さらに、情報が人に依存していると、担当者が変わったときに過去の経緯が分からなくなります。

ICTやDXを活用する際は、まず「何を見える化したいのか」を明確にすることが大切です。

稼働率を改善したいのであれば、曜日別・時間帯別の空き枠やキャンセル状況を確認できるようにする。訪問系で移動時間が課題であれば、移動時間、提供時間、担当エリアを確認できるようにする。採用を改善したいのであれば、応募、面接、採用、入職、定着までの流れを管理する。運営指導や加算管理が不安であれば、必要書類、研修、委員会、加算要件の確認状況を一覧で見られるようにする。

大切なのは、現場に入力作業だけを増やさないことです。

入力した情報が経営判断に使われていないのであれば、現場にとっては負担になります。必要な情報を絞り、管理者や経営者が確認しやすい形にすることが重要です。

ICT・DXは、経営を自動化するものではありません。数字を見やすくし、抜け漏れを防ぎ、担当者が変わっても同じ基準で確認できるようにするためのものです。

利益改善を継続するには、数字を見て、優先課題を決め、実行し、その結果をまた確認する流れを回し続ける必要があります。このサイクルを定着させることが、経営管理の目的だと言えるでしょう。

まとめ. 介護事業所の利益最大化は、根拠ある経営改善から始まる

介護事業所の利益を最大化するには、目先の売上や課題を追うだけではなく、経営判断の精度を高めることが重要です。

感覚や経験だけに頼ったままでは、課題の所在が曖昧になり、採用・営業・加算取得などの施策も場当たり的になりやすくなります。

まずは自社の状態を数字で捉え、どこに売上を伸ばす余地があるのか、どこで利益が圧迫されているのかを明確にすること。そのうえで、優先課題を絞り、現場で実行できる形に落とし込むことが大切です。

人材不足や競争の激化が続く中、これからの介護経営に必要なのは、気合いや経験に頼る経営ではなく、根拠を持って改善を続けられる経営体制です。

利益が残る事業所へ変えていくためにも、まずは自社の数字を見直すところから始めてみてはいかがでしょうか。

ライター紹介
片山海斗
片山 海斗 氏
Professional Care International株式会社 代表取締役

史上最年少で介護事業所を経営し、介護の学校やWeb会社など複数のスタートアップに参画。グラフィックデザイナーやSEとしての経験もあり、データサイエンス、DX、AI、デジタルマーケティングに精通。また、介護保険や総合⽀援法などの各法令に関する⾒識を持つ。

URL:https://pcig.jp/
お問合せはこちらから:https://pcig.jp/contact/


無料簡易査定で会社がいくらで売れるのか確認できます
今すぐ売却相談をしたい方はこちら