【目次】
1.2027年改正介護保険法案の4つのテーマ
新年あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。本年も本コラムのご愛読をどうぞよろしくお願いいたします。
今年の介護業界も引き続いて物価高と他産業の賃上げによる厳しい経営環境が続くことが想定されます。その対策として、昨年末に高市政権によって決定された総合経済対策による介護業界への支援策と令和8年度臨時報酬改定が6月に行われることとなります。そして、いよいよ来年に迫った令和9年度(2027年)介護報酬改定の議論が本格化し、年末には全体改定率が決定する年であり、3年に1度の業界のサイクルの中で、今年は最も大切な1年となります。年初より衆議院の解散総選挙となり目まぐるしい1年の始まりとなりました。
また、介護報酬改定の議論に先行して、社会保障審議会介護保険部会で議論が重ねられてきた2027年改正介護保険法案の方向性が昨年12月25日付けで「介護保険制度の見直しに関する意見」として取りまとめられました。これから開催されることとなる通常国会において改正介護保険法案として審議され、来年4月の施行となります。
多岐にわたる論点がありますが、今回の改正介護保険法案には大きく4つのテーマが示されています。
- ① 人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築
- ② 地域包括ケアシステムの深化
- ③ 介護人材確保と職場環境改善に向けた生産性向上、経営改善支援
- ④ 多様なニーズに対応した介護基盤の整備、制度の持続可能性の確保
1つひとつのテーマのポイントを次項より解説していきたいと思います。
テーマ①「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築」
最初のテーマとなるのは『人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築』についてです。
昨年の年初より「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会」で議論され、昨年7月に取りまとめられた報告書に基づき、人口構造が今後地域によって大きく異なることから、全国を『中山間・人口減少地域』『大都市部』『一般市等』の3つに分類し、介護保険制度を全国一律のサービス基盤の整備という大原則を、地域ごとのニーズによって制度改革を進める大転換方針が示されました。
まず今回の法改正案では、サービス不足や人手不足が深刻な『中山間・人口減少地域』の改革を先行して進めることとなります。具体的には、例えば、ICTの活用を前提として人員配置要件を柔軟化した特例介護サービスの創設や、訪問介護と通所介護を組み合わせたモデルの構築、更には、移動距離を考慮し訪問介護に包括報酬制度を導入することなどが当該地域を特定して対応していくこととなります。今回の法改正案を皮切りに、これから地域ごとに異なる制度やサービスが創設されることへと繋がる最もインパクトの大きい内容であるとも言えます。
テーマ②「地域包括ケアシステムの深化」
続いてのテーマは『地域包括ケアシステムの深化』です。医療連携の推進、認知症施策の推進とともに、2つの大きな注目ポイントがあります。まず、有料老人ホームの在り方の見直しです。いわゆる囲い込み対策等を踏まえて、住宅型有料老人ホーム及びサービス付き高齢者向け住宅に対するサービス品質の向上や、運営の透明性の確保を実現するために、従来の届け出制から登録制へと移行し、規制を強化する方針が示されました。また、契約締結時の情報開示の在り方や、入居紹介事業者に対する新たな運営ガイドラインの枠組みの構築や、優良認定制度などが設けられることになります。
そして、もう1つの注目は、ケアマネジメントの在り方の見直しです。居宅介護支援にいくつかの大きな変化が訪れます。まずケアマネジャー資格の更新制度の廃止と法定研修が見直されます。以前より現場から大きな不満の声が上がっていた更新制度は廃止されることとなりますが、更新研修は引き続き義務化されることとなり、研修の内容や、開催時期やアーカイブの導入など研修制度の見直しが求められます。
続いては、前述した届け出が行われる有料老人ホーム等に対するケアマネジメントを担う新しい相談支援のサービス分類の創設です。この登録された有料老人ホーム等に対するケアプランには利用者の自己負担制を導入することとし、従来の居宅介護支援とは異なる新しい相談支援のサービス分類が創設されます。ただし、こちらは来年4月の開始ではなく、改めて介護給付費分科会等において人員配置要件や報酬単位などを検討し、開始時期は決定されることになります。
テーマ③「介護人材確保と職場環境改善に向けた生産性向上、経営改善支援」
そして3つ目のテーマは『介護人材確保と職場環境改善に向けた生産性向上、経営改善支援』についてです。都道府県単位で人材確保のためのプラットフォームを構築し、生産性向上や、経営の協働化支援などが自治体よりしっかりと行われることとなります。
テーマ④「多様なニーズに対応した介護基盤の整備、制度の持続可能性の確保」
最後の4つ目のテーマとなるのは『多様なニーズに対応した介護基盤の整備、制度の持続可能性の確保』についてです。中でも介護現場の最大関心事となるのは「給付と負担」に関する項目であり、今回3つの大きな注目ポイントがあります。
1つ目は、軽度者改革についてです。訪問介護及び通所介護の要介護1と2を介護保険から外し、総合事業へと移管する方針が長年議論されています。とりわけ訪問介護における生活援助については先行して対応が議論されています。ただし、この内容がすぐに実現されれば、大多数の事業所の経営が行き詰まり、閉鎖することに繋がり、在宅要介護高齢者の介護難民が多数となる恐れがあります。そのような背景も踏まえて、今回、軽度者改革は見送りとなり、3年後に再び議論されることとなりました。
2つ目は、ケアマネジメントの在り方について、居宅介護支援におけるケアプランの利用者負担の導入です。こちらも原則は見送られることになりましたが、前述の通り登録制となる有料老人ホーム等に対するケアプランは、居宅介護支援から切り離され、創設される新しい相談支援のサービス分類において対応され、そのケアプランには利用者負担が導入されることになります。一部限定的なケアプランの利用者負担が導入されることになります。また、今回は居宅介護支援のケアプランの利用者負担導入は原則見送りとなりましたが、3年後に再び議論され、今回の限定導入がどのような影響となるのか留意が必要です。
3つ目は、利用者の負担割合の対象拡大についてです。特に2割負担の対象拡大については、一定所得のある高齢者の定義の見直しを行うこととし、いくつもの案やシュミレーションデータも示されましたが、最終的には昨年末での議論では決着がつかずに、今年に議論が先送りされることとなりました。
以上が2027年改正介護保険法案の見直しの主たるポイントとその解説となります。改正介護保険法案は、この後通常国会において審議され春頃の法案可決が見込まれます。ただし、大枠の方針が示されたところであり、細目については、介護給付費分科会や、その他検討会などの場を通じて、更に議論が重ねられることとなります。いずれにせよ介護保険法改正の見直し方針は決定しました。次は6月の臨時介護報酬改定の議論をはさんだ後に、いよいよ2027年介護報酬改定の本格的な議論へと舞台は移ってまいります。これからの約1年間は介護業界にとって最も目が離せないテーマが議論されることになります。引き続き、本コラムでもその動向に注目していきたいと思います。

斉藤 正行 氏

