【目次】
1.2025年に新たに設置された検討会と2027年介護保険法改正のゆくえ
2025年の年の瀬が迫ってまいりました。本コラムをご愛読の皆様には本年も大変にお世話になりました。今年最後は、本年の介護業界を振り返るとともに、2026年の業界展望を述べたいと思います。
今年は、いくつもの重要な公的検討会が設置され、様々な議論が行われました。まず年初より「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会」が設置され、地域ごとに今後の人口構造に大きな変化が訪れることを踏まえて、中期的な制度改革の方向性について議論されました。7月には報告書が取りまとめられ、全国一律の介護保険制度の運用の見直し方針が示されるなど、今後の制度改革・法改正・報酬改定に向けた議論の土台となる重要な検討会となりました。更には、4月より「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」が設置され、有料老人ホームの意義や役割の再構築とともに、住宅型有料老人ホームなどの集合住宅における囲い込み問題等への規制強化など様々な視点での議論が行われました。11月には報告書が取りまとめられ、有料老人ホームの届出制から登録制への転換方針や有料老人ホーム紹介センターに対する指針など、様々な改革提言が示されています。
そして、2027年介護保険法改正に向けては、介護保険部会での議論が白熱しました。中山間地域等での複合型サービスの創設や、訪問介護の包括報酬への移行方針とともに、ケアマネジャーの更新制度の廃止の方針などが示されています。そして、給付と負担に関するテーマにおいては、軽度者改革(要介護1と2の介護保険外し)は見送られることとなりましたが、利用者の2割負担の対象拡大や、ケアプランの有料化に向けて集合住宅に限定した一部導入が議論されています。取りまとめに向けては年内でまとめきれなかった部分もあり、年明け以降に継続議論されていくことになります。
2.高市政権の誕生と令和7年度補正予算及び令和8年度臨時改定のゆくえ
7月に行われた参議院選挙では私も介護業界を代表してチャレンジをさせていただきました。力及ばずの大変に悔しい結果となりましたが、介護現場の声を国届けるための挑戦の意義は大きなものとなりました。
その参議院選挙を経て、高市政権が誕生し、26年間続いた公明党との連立から、日本維新の会との連立へと政権の枠組みが大きく変化することとなりました。初の女性総理、初の積極財政を標ぼうする高市政権では、令和7年度補正予算による総合経済対策において、過去最大規模の予算を確保いただきました。介護では、居宅介護支援・訪問看護などのサービスへの処遇改善支援を初めて講じていただき、介護従事者1人あたり月額1万円~1.9万円の予算を確保いただくとともに、従来の枠組みとは異なる補助金による法人・事業者への支援もいただくこととなりました。
同時に、来年2026年6月に、次期介護報酬改定を待たずに臨時での報酬改定を行う方針も示され、単年度では過去最大の上げ幅となるプラス2.03%の改定となる方針が示されました。処遇改善加算に1.95%、施設の基準費用額(食費)に0.09%を充てることになり、処遇改善加算の内訳は補正予算での配分とは少し異なり、居宅介護支援等を含む全体に対して月額1万円程度、生産性向上への取組み評価分として0.7万円、定時昇給分として0.2万円となる方向性です。
3.介護業界にとっては3年に1度の大切な2026年のはじまりと展望
来年2026年は介護業界にとっては、大切な大切な1年間となります。年明け以降は、6月の臨時報酬改定に向けての詳細な議論を詰めていくことになります。処遇改善加算については、書類や手続きの簡素化をしっかりと行っていくことが重要となります。
そして、いよいよ2027年介護報酬改定に向けて介護給付費分科会での議論が本格化していくこととなります。来年12月には全体改定率の決定と、報酬改定の見直し方針が固まっていくこととなります。3年に1度の報酬改定のサイクルにおいて、最も大切な1年間を迎えることになります。
物価高や他産業の賃上げによって、事業者の経営環境はいっそう厳しさを増しており、倒産件数は過去最多を更新し続けており、業界にとっては厳しい1年間であったと言えます。来年は明るい未来へと繋がる展望が示せる1年間となるように、私自身はこれからも、介護の制度改革を現場主導での実現を目指し、業界の活性化を果たすために、全力で取り組んでまいります。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。それでは皆様良いお年をお迎えください。

斉藤 正行 氏

