2025年2月28日
介護保険制度

「2027年介護保険法改正に向けた本格議論がスタート」

一般社団法人全国介護事業者連盟

理事長 斉藤正行

2027年介護保険法改正に向けた本格議論がスタート

2027年介護保険制度見直しの議論が、審議会においていよいよ本格化し、年末には方向性が固まる見通しです。 論点は多数ですが、業界の最注目は「給付と負担に関するテーマ」だと思います。中でも業界への影響の大きい3つの項目を論考したいと思います。

利用者負担の対象拡大による影響

まずは、『利用者負担の対象拡大』です。介護保険サービス利用時の利用者の自己負担は原則1割であり、利用者の所得に応じて2割・3割となります。 2割負担対象者の拡大は、24年改正で予定されていましたが、物価高等の経済状況を配慮し、導入は見送られ、次期法改正での結論となりました。 物価高は続いていますが、高水準で安定状態とも言えることから、次期改正では、対象拡大となる可能性は十分あります。
現在の2割負担対象者は、年間合計所得金額160万円以上の方(夫婦世帯収入等その他条件有り)であり、要介護認定者の5%程度です。この基準をどこまで引き下げるかが最大の焦点です。 しかしながら、自己負担の2割とは、支払い額が2倍となることを意味しますので、介護サービスの利用控えへと繋がり、適切な支援が得られなくなる可能性もあります。 事業者にとっても利用控えによる収入減や、施設等での入居者獲得への制限が生じるなど影響は少なくありません。 利用者への影響を最大限に考慮し、丁寧な議論が求められます。

ケアプランの利用者負担の導入による影響

続いては、『ケアプランの利用者負担の導入』です。こちらも24年改正でも活発に議論されましたが、今年は更に激論が予想されます。 居宅介護支援事業におけるケアプラン作成を、他サービスと同様に利用者負担に設定するか否かが焦点です。
介護保険制度創設時、介護保険の入り口となる居宅介護支援は、制度活用を積極推進する観点から、利用者負担無しのサービスとなりましたが、すでに制度開始から25年が経過し、他と同様にすべきとの声が高まりつつあります。 一方で、厚労省はケアマネジメントの在り方に関する専門検討会を設置し、ケアマネジャーの業務過多の状況への改善に向けた対策を講じる方針を昨年末に示しました。 ケアプランの利用者負担が導入されれば、費用徴収における事務負担が増大します。 慎重論の声も高まり、次期改正に向けては白熱した議論が予想されます。

軽度者改革・訪問介護と通所介護の要介護1・2の総合事業への移管による影響

そして最後は、『軽度者改革』『訪問介護と通所介護の要介護1・2の総合事業への移管』です。事業者は大変危惧しており、実現となれば、現場への影響は多大であり、実現の可能性は低いと思います。 今年の議論は、まず訪問介護における生活援助の移管を先行的に議論することになると思いますが、ルールの在り方や、報酬上限など検討項目も多く簡単に議論は進まないと思います。 それでも余談を許さず、議論のゆくえに注目が必要です。

まとめ

今回は業界への影響が大きい3つの項目に絞って解説しましたが、その他の項目も加えて、年内取りまとめに向けた議論が本格化していきます。 報酬改定議論とともに、これから介護業界は大変重要な局面を迎えていくこととなります。情報収集をこまめにおこなうことをお勧めします。

ライター紹介
斉藤 正行
斉藤 正行 氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
立命館大学を卒業した後、株式会社ベンチャー・リンクに入社。飲食業のコンサルティング、事業再生などを手がける。 その後メディカル・ケア・サービス株式会社に入社し、「愛の家」ブランドでグループホームを全国に展開し、取締役運営事業本部長に就任。 2010年に、株式会社日本介護福祉グループへ入社。「茶話本舗」ブランドで小規模デイサービスをフランチャイズ展開し、取締役副社長に就任。 2013年に、株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立。 一般社団法人日本介護ベンチャー協会の代表理事、介護業界最大級のイベント「介護甲子園」を運営する一般社団法人日本介護協会副理事長、 その他にも多くの介護関連企業・団体の役員・顧問を務めている。