2025年2月28日
事業運営
判明した介護経営DBへの負担と対処方法

判明した介護経営DBへの負担と対処方法

介護経営DB(介護サービス事業者経営情報データベースシステム)は、2025年1月6日に運用が開始されたものであり、2023年度決算分の提出期限は2025年、3月31日とされている。 もっとも、介護経営DBには操作方法や入力項目が分かりにくいという課題があるため、介護事業者が情報を入力するにあたっては、提出が求められる経営情報のルールを十分に理解しておく必要がある。
実際に私のところにも、「経営情報の提出は必要か」「厚労省のホームページの内容が分からない」「GビズID(法人・個人事業主向け共通認証システム)は必要か」といった問い合わせが急増している。

介護経営DBの操作方法や入力項目の分かりにくさについて具体的に説明する。まず基本情報の入力において法人が採用している会計基準や消費税の処理方法の報告が求められるが、画面上に具体的な指示がなく、会計知識がないと対応が難しい。 また、対応する会計ソフトが少なく手入力が必要となるうえ、原則として事業所ごとに入力しなければならず、各事業所に1からの番号をあらかじめ割り振ってから入力する必要がある。 この番号の管理や、入力済みの財務情報を正しく事業所に紐付ける作業は、システム利用者にとって大きな負担となっている。
財務情報の入力は原則として事業所ごとに行う必要があるが、入力画面において、どの事業所の情報を入力しているのかが分かりにくいという問題点が指摘されている。 加えて、入力必須項目と任意項目の区別が明確に示されていないため、入力時には注意が必要である。こうした事情から、多くの事業者が法人全体の決算データを一括で入力してしまう傾向が見られる。 しかし、各項目には1からの番号が振られており、この番号が事業所に対応しているため、事業所ごとに財務データを入力しなければならない。 入力後に「届出対象事業所データ表示・編集」の項目で事業所番号に対応する事業所名を表示し、入力した財務情報を紐付ける必要があるが、あらかじめ入力マニュアルを確認していても理解が難しい可能性がある。

その後、事業所ごとの職種別人数を入力する画面に移行するが、ここでも入力方法が分かりにくいという声がある。 たとえば、ケアマネジャーやサービス提供責任者などは「その他」の区分にまとめて記載し、そのうえで「その他」に該当するケアマネジャーの人数やサービスを改めて入力しなければならないというルールがある。 このように、事前の知識がないとスムーズに対応できない点が多い。

厚生労働省が示している今回の内容によれば、報告単位は基本的に事業所・施設ごとの会計区分に従って経理している場合に、事業所・施設ごとに会計区分に従った形で報告することとされている。 ただし、会計の区分に従っていることを前提としながらも、事業所・施設単位での提出が難しい場合に法人内の介護サービスの種類ごとにまとめて報告できるのであれば、その種類ごとに集約して提出することも可能とされている。 事業所・施設ごとに報告する場合は、職種別人数も事業所単位で入力し、会計の区分に基づいて会計が行われていない場合には法人一括での提出が認められる。その場合、職種別人数も法人一括で報告することになる。 このことを、入力画面で初めて知る事業者も少なくないようである。

基本的には、法人が利用している会計ソフトからCSVなどで電子データを出力し、提出する方法が推奨されている。 ただし、これを行うには法人が会計ソフトによる自計化を行っている必要があり、会計ソフトが対応しているのは財務情報と基本情報のみである。 結果として、会計ソフトで事業所・施設ごとに報告したとしても、職種別人数は会計ソフトの守備範囲外であることから、手入力で事業所ごとに入力せざるを得ない。 この作業は、事業所数が多い法人にとっては集計にも入力にも膨大な労力と時間を要する。
報告時に対象となる職種別人数は、主として従事している職種のいずれか一つのみを報告することとされており、報告時点は会計年度の初日の属する月に給与を支払った職員数である。 たとえば、3月決算法人であれば前年の4月時点の人数を報告することになる。3月決算の場合、今回の提出は2023年4月時点の職員数を遡って集計する必要がある。こうした作業に手間を要するという不満や戸惑いは少なくない。 さらに、3月決算法人の場合、2024年3月締めのデータを2025年1月から3月に提出し、さらに2025年3月締めのデータを2025年6月までに提出する必要があるため、2025年は2度の提出が求められることになる。 こうした背景もあって、事務負担が大きいのは否めない。加えて、1月決算と2月決算法人は2024年度内での報告が不要とされたが、2024年度分は4月末および5月末までに提出することとなる。
また、外部委託を検討する場合でも、GビズID(法人・個人事業主向け共通認証システム)を用いた外部委任機能が経営情報提出には利用できず、法人側が個別にGビズIDメンバーのIDを発行し、 さらに委任を受ける側は法人毎に専用のメールアドレスを用意する必要があるため、会計事務所などのアウトソーシング受託業者にとっては負担が大きい。 こうした状況の中、システムの操作理解や入力ルールの把握が事前準備として求められ、特に初めて利用する事業者は多大な戸惑いと手間を強いられている。

いずれにせよ、3月末までに報告を完了させる必要があることは変わらない。期日までに報告が行われない場合には、期間を定めた報告完了命令が出される可能性がある。時間的猶予はほとんど残されていない。 介護サービス事業所経営情報の報告は、やむを得ない場合には法人単位で行うことが認められている。現場の負担を勘案した場合、法人一括での報告を選択することが望ましい。 2025年度以降の報告に関しては、会計ソフトの対応状況や会計事務所との連携を考慮しながら、最適な方法を検討すればよいだろう。

ライター紹介
小濱 道博
小濱 道博 氏
小濱介護経営事務所 代表。 一般社団法人日本介護経営研究協会専務理事。 一般社団法人介護経営研究会 専務理事。 一般社団法人介護事業援護会理事。 C-MAS 介護事業経営研究会最高顧問。