2024年4月18日
介護保険制度

令和6年度介護報酬改定を踏まえた処遇改善施策のゆくえ

2024年4月義務化 BCP減算対策
一般社団法人全国介護事業者連盟

理事長 斉藤正行


令和6年度介護報酬改定の内容は全て決定しました。
今回の改定の1番のテーマは処遇改善です。
全体改定率1.59%のうち大部分となる0.98%が処遇改善に配分されるとともに処遇改善関連加算は1本化されました。「賃上げ改定」とも言える今回の報酬改定を含めた、介護従事者に対する処遇改善に向けた取組みを整理してお伝え致します。

介護職と他産業の給与差の改善はできたのか

介護職員の所得水準が他産業と比べて低いことは周知の通りです。
最新データでは2022年は、全産業平均と介護職員の所得差は月額6万8千円となっており、10年前の9万5千円からは改善されていますが、未だ大きな開きがあります。今般の物価高騰を受けて他産業では更なる賃上げが果たされており、今後いっそう開きが大きくなりかねない状況にあります。そのような状況を踏まえた今回の改定での処遇改善加算の大幅な積み増しは、令和6年度に2.5%、令和7年度で2.0%の改善に繋がる水準となります。

3つの改善加算が一本化

前述の通り、従来は「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3種類となっていた関連加算は、新たな「介護職員等処遇改善加算」へと1本化されることとなりました。
従来は、異なる仕組みの3種類の加算であったため、計画書や実績報告書の作成に膨大な時間を費やしていましたが、今後大幅な削減が期待されます。事務負担の軽減に伴い、加算の算定率向上も期待されます。新しい加算では、介護職以外のその他職種への柔軟な分配が認められるとともに、加算額の半分以上を月額賃金の改善に充当するルールなどが設けられました。

期間限定の補助金の支給

また、報酬改定による措置とは別に、令和6年2月から5月までの4カ月間、「介護職員処遇改善支援補助金」が支給されます。こちらは昨年末、追加経済対策の一環として実施された措置であり、介護職1人あたり月額6000円程度の改善額が補助金として支給されます。補助金の支給が5月までとなり、新しい処遇改善加算は、6月改定となります。事業者は2月からの補助金、4月からの各サービスの改定、6月からの処遇改善加算への対応を順次行っていく必要があり、しっかりと準備しなければなりません。

「賃上げ促進税制」の改正とは?

加えて、4月より「賃上げ促進税制」の改正が行われます。法人税対象の事業者は積極活用を検討すべきです。企業規模に応じて控除率が異なりますが、全従業員に実施した賃上げ金額から控除率を加味して、法人税が減免されることになります。
とりわけ、4月からの改正では、5年間の繰越控除制度が創設され、現時点で赤字の事業者にも適応の可能性が高まります。更に画期的な改正は、処遇改善加算を活用した賃上げ分についても対象に加えられるため、6月から大幅に引き上げられる新しい加算を活用することが可能となります。

改定内容の職員への説明が重要

これら制度を積極的に活用し、職員への賃上げを確実に実施していくことに加えて大切なことは、職員に対する丁寧な説明です。
これまで処遇改善加算の仕組みが複雑なため、職員にどのように分配したかを正しく伝えることが困難でした。そのため、多くの職員は、処遇改善加算の法人分配に不信感を抱いています。加算額の全てが職員に配られていないのではないか?法人の内部留保や別の使われ方をしているのではないか?理事・役員の所得に回っているのではないか?全国各地の多数の職員からそのような疑問の声があがっています。
今回の新しい加算は制度がシンプルになることからも、職員に分かり易く、丁寧に分配方法を説明し、納得感ある対応を行っていくことが大切です。

残された課題と今後の対応は?

最後に、残された課題と今後の対応についてお伝えします。
まず、先般、新しい処遇改善加算に関する令和6年度の申請様式等が公表されました。
今回の書式は大変残念なことに、大幅な簡素化ではなく、逆にこれまで以上に手間が生じる書式になりました。
その背景には、2月から開始されている「介護職員処遇改善支援補助金」の影響があります。前述の通り、5月まで予算が確保されているため、新しい加算のスタートは6月となりました。計画書や実績報告書は4月から1年分報告することになるため、今回の書式では、4月と5月分は3種類の加算のままの従来の複雑な計算式が必要となり、加えて6月からの簡素化された書式での提出も必要となり、結果として、これまでより負担が増えることになります。
更に、今回の加算は2年分として支給された建付けであり、翌年に繰越し可能なルールを取り入れたことで、複雑な書式が出来上がってしまいました。
事業者に理解してもらうための解説手引きなども作成され、少しでも理解が拡がるための取組みは行われています。来年4月からの書式は、3種類の加算部分の記載がなくなるので、大幅な簡素化の実現が期待されており、引き続き書式の簡素化は今後の最大の課題の1つとなりました。
また、居宅介護支援事業への処遇改善加算の創設を検討し、ケアマネジャーの成り手不足への解消も今後の課題となります。何よりも介護職の処遇は、まだまだ他産業と大きな開きがあることからも、抜本的な対策が求められています。

ライター紹介
斉藤 正行
斉藤 正行 氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

それぞれの専用フォーム、
またはお電話( 0120-377-051 0120-377-051 )より、お気軽にお問合せください。

メディア掲載実績

Page Top