介護経営コラム

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骨太の方針2026で介護業界はどう変わる?M&A推進と社会保障改革から読み解く今後の介護経営

更新日:2026年7月22日
骨太の方針2026で介護業界はどう変わる?M&A推進と社会保障改革から読み解く今後の介護経営

2026年7月21日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太の方針2026)」を閣議決定しました。今回の骨太の方針では、「強い経済」の実現と「持続可能な財政」、そして「質の高い全世代型社会保障」の構築を同時に進める方針が示されています。人口減少、人材不足、社会保障費の増大、AIの急速な進展など、日本社会が直面する構造的課題に対し、政府としてどのような方向性で改革を進めていくのかが明確に打ち出されました。

私はこれまで介護業界専門のM&Aアドバイザーとして、多くの介護事業者の事業承継や成長戦略を支援してきました。その立場から今回の骨太の方針を読むと、介護業界にとって極めて大きな転換点になる可能性を感じています。骨太の方針2026には「介護M&Aを推進する」「介護事業者の再編を促進する」といった直接的な記載はありません。 しかし、

・人口減少社会への対応
・人材希少社会への適応
・医療・介護提供体制の再構築
・DX・AI活用による生産性向上
・社会保障制度改革
・経営の協働化・大規模化を支援する

といった政策の方向性を総合的に考えると、介護業界では今後、経営基盤の強化と業界再編の重要性がさらに高まる可能性があります。私はその有力な手段の一つがM&Aになると考えています。


M&Aを成長戦略として捉えるべき時代が到来する

介護業界では長年にわたり、「M&Aは後継者がいない会社で行うもの」「経営が厳しくなった時の出口戦略」というイメージがありました。しかし市場環境は大きく変化しています。かつて介護業界は高齢化という追い風を受け、とにかく事業所を増やすことが成長につながる時代でした。ところが現在は、人材不足・採用コスト上昇・物価高騰・賃上げ対応・DX投資といった新たな経営課題が次々と発生しています。

今回の骨太の方針2026でも、政府は人口減少や人材希少社会への対応を重要課題として位置付けています。また、医療・介護などのエッセンシャルサービスを維持しながら、生産性向上と効率化を進める方針を示しています。つまり介護事業者には、「サービスを維持しながら、これまで以上に効率的な経営を求める」という強いメッセージが発せられているとも読み取れます。そのような環境の中では、単独での成長だけでなく、「M&A」「法人統合」「事業承継」「業務提携」といった経営戦略の重要性が高まるのは自然な流れと言えるでしょう。

人口減少時代において単独経営の限界が近づく

骨太の方針2026では、日本社会が人口減少局面に入り、その中で持続可能な地域社会の構築が必要であることが強く打ち出されています。政府は地域社会を支える医療・介護等のエッセンシャルサービスの維持・効率化を重要政策に位置付けています。 介護業界にとって最大の課題は、利用者ではなく人材になりつつあります。現場ではすでに、

・介護職員不足
・管理者不足
・訪問介護員不足
・ケアマネジャー不足

が深刻化しています。
さらに骨太の方針では、AIやDXを活用したサービスの質向上も掲げられています。しかし、AI導入・ICT整備・採用強化・教育体制整備・本部機能強化などには相応の投資が必要です。大手法人や多拠点展開している法人であれば対応可能でも、小規模事業者にとっては負担が大きくなります。

私は今後、「介護サービスの競争」以上に「経営基盤の競争」が激しくなると考えています。その結果として、経営の協働化・大規模化を支援する=地域内での事業承継・同業法人同士の統合・ドミナント戦略・エリア再編などを目的としたM&Aが急増する可能性があると考えています。介護業界は高齢化市場でありながら、同時に人材希少市場でもあります。だからこそ、経営資源を集約しながら規模のメリットを追求する動きが加速していくのではないでしょうか。

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AI・DX投資が介護業界の格差を拡大させる

今回の骨太の方針では、「DXやAI・ロボティクスの活用を通じたサービスの質の向上」
が明確に打ち出されています。また政府は、「AIを前提として社会や産業の在り方を再構築する時代」との認識も示しています。介護業界においても今後、見守りセンサー・AI記録システム・業務自動化・シフト最適化・バックオフィスDXなどへの投資が加速するでしょう。

しかし、こうした投資ができる事業者とできない事業者の差は確実に広がります。私は今回の骨太の方針を読みながら、「介護業界における企業規模の重要性はこれまで以上に高まる」と感じました。M&Aによって規模を拡大し、DX投資や人材投資を進める法人が増えていく可能性があります。

今後はM&Aを後押しする金融政策が拡充される可能性

骨太の方針2026の大きな特徴の一つは、「責任ある積極財政」の考え方の下で成長投資を推進する姿勢を鮮明に打ち出している点です。政府は官民連携による投資拡大や民間投資の活性化を重視しています。もちろん、「介護M&A融資を拡充する」とは書かれていません。しかし私は、介護業界を取り巻く環境を考えれば、金融機関の役割は今後さらに重要になると考えています。特に地方では、介護事業所の廃業が地域インフラの喪失につながります。そのため、事業承継型M&A・地域内再編・介護サービス維持を目的とした案件については、地方銀行や信用金庫などがより積極的に関与していく可能性があります。
これは政策決定事項ではなく私の見解ですが、人口減少社会における地域維持という観点から考えれば、十分に起こり得る流れだと感じています。

M&A関連の支援制度拡充も注目される

骨太の方針では、「AI活用」「DX推進」「生産性向上」「人材育成への投資」が重視されています。現時点で介護M&A専用の補助金制度が示されているわけではありません。しかし私は今後、「PMI(統合作業)」「ICT統合」「バックオフィス統合」「人材育成」「DX投資」などを支援する制度が拡充される可能性はあると考えています。

なぜなら、政府が目指しているのは単純な事業者数の維持ではなく、「質の高い介護サービスを持続可能な形で維持すること」だからです。 その実現のためには、生産性向上や経営基盤強化を後押しする政策が今後検討されても不思議ではありません。

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社会保険料負担軽減の裏側にあるリスク

今回の骨太の方針で介護事業者が最も注目すべきポイントの一つが、社会保障改革です。
政府は、「現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていく」という方針を明確にしています。また給付と負担の見直しも進める方向性が示されています。

国民にとっては歓迎すべき政策です。しかし介護事業経営者としては、その財源や制度改革の内容を冷静に見ていく必要があります。社会保障費は高齢化によって今後も増加が見込まれています。その中で保険料負担を抑制するのであれば、給付範囲の見直し・制度効率化・負担構造の見直しが進む可能性があります。 介護保険制度は今後も持続していくでしょう。

しかし私は、「介護報酬が増え続ける前提」で経営を考える時代ではなくなると考えています。むしろ、収益性・生産性・管理体制・人材力が企業価値を左右する時代に入るのではないでしょうか。その結果、経営体力の差がこれまで以上に広がる可能性があります。

M&Aは“出口戦略”ではなく“成長戦略”へ

介護業界では依然として、「M&Aは廃業寸前の会社が行うもの」という認識が残っています。
しかし今後は考え方を改める必要があります。
骨太の方針2026が描く未来は、

• 人口減少社会
• 人材希少社会
• AI活用社会
• 生産性重視社会

です。
この環境下では、M&Aはもはや撤退のための手段ではありません。
むしろ、

• ドミナント戦略の実現
• 人材確保
• 管理機能の集約
• DX投資の効率化
• 地域シェア拡大

を実現するための成長戦略になります。特に介護業界では、拠点数が増えることで採用力や教育体制が強化され、経営の安定化につながるケースが少なくありません。

これからの介護経営者に求められる視点

骨太の方針2026は、「介護業界を守る」というよりも、「介護業界の構造改革を進める」という意味合いが強いと私は見ています。
政府は、医療・介護サービスを維持しながらも、生産性向上と社会保障費の抑制を同時に実現しようとしています。DXやAI活用による効率化、地域サービスの維持、社会保障改革の推進がその象徴です。その結果として、今後の介護市場では再編が加速する可能性があります。

経営者が今考えるべきなのは、「いつM&Aするか」ではありません。
「買い手として動くのか」 「売り手として価値を高めるのか」 「統合によって成長するのか」という経営戦略です。

骨太の方針2026は、介護事業者に対して規模拡大と生産性向上を求める時代の到来を示しています。そしてその流れの中心にあるのがM&Aです。これからの介護経営において、M&Aを選択肢の一つではなく、経営戦略の中核として検討することが求められる時代が始まったと言えるでしょう。

参考:内閣府 「経済財政運営と改革の基本方針 2026」令和8年7月 21 日

ライター紹介
太田丈史
太田 丈史
ブティックス株式会社
M&A事業 副事業部長
エグゼクティブコンサルタント

ブティックス(株)へ入社後、介護用品通販ショップの運営責任者、有料老人ホームの入居者紹介事業の責任者を歴任。その後、CareTEXの立ち上げメンバーとして、様々な介護福祉業界ニーズのマッチングに着手。
2015年にはM&A事業を立ち上げ、介護福祉業界における広い人脈を背景に10年間で120件の成約実績を持つ。


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