介護経営コラム

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2026年介護職員等処遇改善加算の臨時改定マニュアル

更新日:2026年6月29日
2026年介護職員等処遇改善加算の臨時改定マニュアル

1,2026年6月から処遇改善加算は新しい段階に入る

2026年6月から、介護職員等処遇改善加算は大きく拡充される。通常、介護報酬改定は3年に1度であり、次の本格改定は2027年度に予定されていた。しかし、物価高騰が続き、他産業では賃上げが進む中で、介護現場の人材不足はさらに厳しくなっている。このままでは介護サービスを支える職員を確保できないという危機感から、国は2027年度を待たず、2026年度の途中で処遇改善を強化することにしたのである。

今回の見直しの目的は、介護分野で働く人の賃金を確実に引き上げることである。目標としては、介護職員について最大で月額1万9000円程度の賃上げが見込まれている。これは、単に一時的な手当を出すという話ではない。介護の仕事を、長く安心して続けられる職業にしていくための制度改正である。

2,対象は介護職員だけでなく介護従事者へ広がる

今回の大きな変更点は、処遇改善の対象が広がることである。これまでの処遇改善は、主に直接介護に携わる介護職員を中心に考えられてきた。そのため、同じ事業所で働く事務職員、調理員、送迎職員、生活相談員などには配分しにくく、職場の中に不公平感が生まれやすい面があった。

2026年6月以降は、介護職員だけでなく、介護従事者全体を対象にした賃上げが進められる。これは中小事業者にとって重要である。小さな事業所ほど、1人の職員が複数の役割を担っている。介護職員だけを処遇改善するのではなく、事業所全体を支える職員にも一定の配分ができるようになることは、組織全体の納得感を高めることにつながる。

さらに、これまで処遇改善加算の対象外だった居宅介護支援、訪問看護、訪問リハビリテーションにも新たに加算が設けられる。居宅介護支援は2.1パーセント、訪問看護は1.8パーセントなどの加算率が示されている。ケアマネジャーや訪問看護職員も地域の在宅介護を支える重要な人材であり、今回の対象拡大は大きな転換点である。

3,賃上げは一時金ではなく月額賃金の改善が基本である

今回の処遇改善で特に注意すべき点は、賃金改善の方法である。2025年度と比べて新たに増えた加算額については、過去に法人が独自に賃上げをしていたかどうかに関わらず、新たな賃金改善として職員へ還元しなければならない。

そして、その方法は賞与などの一時金ではなく、基本給や毎月決まって支払われる手当を引き上げるベースアップが基本とされている。これは、職員の毎月の生活を安定させるためである。年に1回の賞与で調整するだけでは、将来の生活設計が立てにくい。毎月の給与が上がることで、介護の仕事を続ける安心感につながるのである。

中小事業者は、まず加算見込額を試算し、どの職種に、どのような形で配分するかを整理する必要がある。給与規程や就業規則の見直しも必要になる場合があるため、早めの準備が欠かせない。

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4,上位区分では生産性向上への取り組みが問われる

今回の加算では、賃上げだけでなく、生産性向上も大きな柱となっている。国は、限られた人材で質の高いケアを続けるためには、業務の無駄を減らし、職員が働きやすい環境を整えることが必要だと考えている。

施設系サービスでは、見守りセンサーやインカム、介護記録ソフトなどの活用が重要になる。在宅系サービスでは、ケアプランデータ連携システムの導入や活用が上位区分のポイントになる。国保連のシステムだけでなく、同等の機能を持つ民間システムを使う場合も要件を満たす方向で整理されている。

ここで大切なのは、ICTを職員削減の道具と考えないことである。ICTは、記録や連絡、確認作業の負担を減らし、職員が利用者と向き合う時間を増やすための道具である。処遇改善と生産性向上は別々の話ではない。賃金を上げるだけでなく、働きやすい職場をつくることまで含めて、今回の制度改正の目的なのである。

5,2026年度は誓約を活用して準備を進める

新しい制度にすぐ対応することは簡単ではない。システム導入、給与規程の見直し、職員説明、計画書作成など、短期間で多くの準備が必要になる。特に中小事業者では、事務担当者が限られており、すべてを一度に整えることは難しい。

そのため、2026年度には特例措置が設けられている。申請時点で一部の要件整備が完了していなくても、2027年3月末までに対応することを誓約すれば、一定の要件を満たしたものとして取り扱われる仕組みである。これは現場にとって大きな救済措置である。
ただし、誓約は単なる先送りではない。年度末までに実際に整備を進め、実績として説明できるようにしておく必要がある。まずは上位区分を目指す方針を決め、誓約を活用しながら、無理のない計画で環境整備を進めることが現実的である。

6,算定で注意すべき実務のポイント

処遇改善加算を算定するには、計画書の作成が重要である。加算見込額、賃金改善額、対象職種、配分方法を整理し、法人として一貫した説明ができるようにしておく必要がある。

特に注意が必要なのが、月額賃金改善要件である。一定額以上を毎月の賃金改善に充てる必要があるため、賞与だけで調整する考え方は避けるべきである。居宅介護支援など新たに対象となるサービスでも、月額でのベースアップを前提に考えておく方が安全である。
また、1人ケアマネの法人では、介護保険上は役員であっても対象にできる場合があるが、税務上は役員報酬の期中変更が問題になることがある。ここは介護保険のルールだけで判断せず、税理士や会計事務所に確認する必要がある。

キャリアパス要件や職場環境等要件も引き続き重要である。役職や経験に応じた給与体系、研修計画、昇給の仕組みを整え、職員に分かりやすく説明できる状態にしておくことが求められる。

7,処遇改善は経営改善そのものである

今回の処遇改善加算は、単なる事務手続きではない。職員の賃金を上げ、働きやすい環境を整え、ICTを活用して業務を軽くするための経営改革である。

中小の介護事業者にとって、人材確保はますます難しくなる。だからこそ、今回の加算を正しく活用し、職員に選ばれる職場をつくることが重要である。給与を上げるだけでなく、無駄な作業を減らし、休みやすく、相談しやすく、成長できる職場にしていくことが、これからの介護経営の土台となる。

2026年6月からの処遇改善加算は、制度対応であると同時に、事業所を強くする機会である。早めに試算し、配分方針を決め、必要な規程やシステムを整え、職員へ丁寧に説明することが大切である。職員が安心して働ける事業所こそが、地域に必要とされる事業所として残っていくのである。今回の処遇改善加算は「賃上げの制度」ではなく、「人材定着と業務改善を同時に進める制度」であると認識しなければならない。

ライター紹介
小濱 道博
小濱 道博 氏
小濱介護経営事務所 代表。 一般社団法人日本介護経営研究協会専務理事。 一般社団法人介護経営研究会 専務理事。 一般社団法人介護事業援護会理事。 C-MAS 介護事業経営研究会最高顧問。


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