介護経営コラム

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令和8年度介護報酬改定で改定率+2.03%の恩恵を最大限受けるには?

更新日:2026年1月29日
令和8年度介護報酬改定で改定率+2.03%の恩恵を最大限受けるには?

令和8年度(2026年度)の介護報酬改定では、全体として+2.03%という改定率が示されました。近年、物価高騰や人材不足が続く中で、介護事業所の経営環境は決して楽観できる状況ではありません。そのような中でのプラス改定は、一見すると「追い風」に映るかもしれません。

しかし、今回の改定を丁寧に読み解くと、「すべての事業所が一律に恩恵を受けられる改定」ではないことがわかります。特に処遇改善加算をはじめとした各種要件への対応状況によって、実際の収益インパクトには大きな差が生じます。

そこで今回は、令和8年度介護報酬改定の全体像を整理した上で、処遇改善加算の改定ポイント、そして改定率+2.03%の恩恵を最大限に活かすために、今から事業所が取り組むべき具体的なポイントを解説します。

令和8年度介護報酬改定の最新情報と概要

令和8年度介護報酬改定では、全体改定率が+2.03%とされました。この数字だけを見ると、久しぶりの比較的大きなプラス改定と受け止められるかもしれませんが、その内訳を見ることが重要です。

今回の改定は、単純な「基本報酬の底上げ」を目的としたものではありません。背景にあるのは、2040年に向けて急速に進行する高齢化と、それに伴う介護人材不足、そして持続可能な介護提供体制の再構築です。国は、限られた財源の中で、

  1. 人材確保・定着につながる賃上げ
  2. 生産性向上(ICT・DXの活用)
  3. サービスの質と経営の安定性の両立

を同時に実現することを強く求めています。

そのため、改定率+2.03%の多くは、処遇改善加算や生産性向上に関連する加算・評価の見直しを通じて配分される構造になっています。つまり、「要件を満たし、行動した事業所が報われる」設計がより明確になった改定だと言えるでしょう。

一方で、要件を満たせない、あるいは準備が遅れている事業所にとっては、「改定があったはずなのに、実感としては苦しくなる」という事態も十分に起こり得ます。この点を正しく理解しておくことが、令和8年度改定への第一歩となります。

処遇改善加算の改定内容

今回の介護報酬改定の中核は、介護職員等処遇改善加算の拡充です。賃上げと生産性向上を目的とした主な要点は以下の通りです。

1.賃上げ対象と水準の拡大

  1. 処遇改善の対象を介護職員から介護従事者全体に拡大し、月額1.0万円(3.3%)の賃上げを広く実現します。
  2. 生産性向上等に取り組む事業所の介護職員には、さらに月額0.7万円(2.4%)が上乗せされます。

2.加算区分の見直しとサービス拡大

  1. 生産性向上や協働化への上乗せ評価として新たな加算区分が設けられます。
  2. 訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援など、これまで対象外だったサービスにも新たに処遇改善加算が創設されます。

3.上乗せ加算(加算Ⅰロ・Ⅱロなど)の令和8年度特例要件

上乗せ加算の取得には、生産性向上・協働化の取り組みとして、

  1. 訪問・通所サービス等はケアプランデータ連携システムへの加入
  2. 施設サービス等は生産性向上推進体制加算Ⅰ又はⅡの取得

を満たす必要があります。(申請時は誓約でも可)

イメージ画像

出典:厚生労働省 令和8年度介護報酬改定についてp3

処遇改善の上乗せを実現するために今からすべきこと

では、令和8年度介護報酬改定において、処遇改善加算を含めた改定率+2.03%の恩恵を最大限に受けるためには、何から取り組むべきなのでしょうか。重要なのは、「6月を迎えてから考える」のではなく、「今から準備を始める」ことです。

1. 処遇改善加算の取得状況と要件の棚卸し

まず着手すべきは、自事業所が現在どの区分の処遇改善加算を算定しているのか、その要件を本当に満たせているのかを今一度棚卸しすることです。
例えば、現在算定している処遇改善加算が下位区分(ⅢもしくはⅣ)の場合、上位区分に移行しなければ上乗せ加算を受けることができません。
そのため、改定による上乗せを最大限実現するためにまず、処遇改善加算の取得状況を確認し、下位区分であれば上位区分を満たすために必要な要件の棚卸しをする必要があります。

2. 生産性向上とICT活用を「加算取得のための手段」として位置づける

処遇改善の上乗せを実現する上で、生産性向上は避けて通れません。
なぜならば、先述の通り新たに設けられた令和8年度特例要件が「生産性向上・協働化の取り組み」とされているためです。

また、生産性向上に関する取組やICT活用については、処遇改善加算の職場環境等要件としても認められているため、より上位の加算区分を目指すにあたっても通るべきルートです。
見守りシステムやケアプランデータ連携などは、「余裕があれば導入するもの」ではなく、「加算を取り切るための経営手段」として捉えると良いかもしれません。結果として業務負担が軽減され、離職防止や採用力向上にもつながる点は、長期的に見ても大きなメリットです。

3. 中長期視点での経営判断を持つ

令和8年度改定はゴールではなく、2027年の報酬改定を見据えた通過点に過ぎません。処遇改善加算や各種評価を取り切れない状態が続くと、収益力の差は年々拡大していきます。
改定を「守り」のためだけに捉えるのではなく、「次の経営判断につなげる材料」として活用する視点が、これからの介護経営には欠かせません。

おわりに

令和8年度介護報酬改定は、改定率+2.03%という数字以上に、「事業所ごとの差がはっきりと表れる改定」です。処遇改善加算をはじめとした要件への向き合い方次第で、経営の安定度は大きく変わるでしょう。

今から一つずつ準備を進め、制度を正しく理解し、活用できる事業所こそが、この改定を「追い風」に変えることができます。本コラムが、その第一歩を考えるきっかけになれば幸いです。

ライター紹介
伊藤証
伊藤 証 (いとう しょう)氏
介護のコミミ:https://comimi.jp/
株式会社GiverLink取締役

介護経営者向けメディア「介護のコミミ」を運営する株式会社Giver Linkの取締役CTO。介護のコミミのコラム記事やYouTube動画などを通じて、自ら介護の経営や業務に役立つ情報発信を精力的に行う傍ら、経営者向けセミナーや研修会への登壇、介護事業所から行政まで多岐にわたる業界関係者にインタビュー活動なども行う。スマート介護士Expert保有。宮城県公認介護ロボット・ICTアドバイザー。


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