2024年4月18日
介護保険制度

介護職員等処遇改善加算の一本化~概要や要件、ポイント、算定ポイントとは?~

介護職員等処遇改善加算の一本化

介護職員等処遇改善加算とは?

この2月より介護職員処遇改善支援補助金としてスタートしている。
対象期間は、令和6年2月~5月の賃金引上げ分である。
5月をもって、支援補助金と現行の介護職員処遇改善3加算が廃止となり、新たに創設される介護職員等処遇改善加算に一本化される。
なぜ、2月から加算では無く支援補助金かと言うと、2月から加算とした場合、令和5年度の改定となるため、4ヶ月は補助金で対応し、6月から加算に上乗せすることで、令和6年度の改定率となるからだ。
新加算の特例として、令和6年度末(令和7年3月)まで算定できる、加算区分Ⅴ(1)―(14)が設けられた。この区分は、現時点に於いて処遇改善加算Ⅲ区分を算定するなどで、すぐには対応出来ない場合を想定した特例措置である。

介護職員等処遇改善加算のポイント

新加算のポイントは、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップとするための措置が含められていることである。
新加算の算定率には、2年分の賃上げ分を含んでいる。
そのため、6月に移行した段階で算定率は、現行の3加算と2月からの支援補助金を合計した加算率より高く設定された。
この増加分は、6月から前倒しで支給しても良いし、令和6年度は職員には支給せずにプールしておいて、令和7年度に繰り延べて支給しても良いとされた。
しかし、繰り延べる方法を適用する場合、2つの問題が発生する。
一つは、繰り延べて増額した部分の賃金相当分が令和8年度以降の加算で補填されないことである。すなわち、8年度以降の支給は自腹となるのだ。
2つ目は、繰り延べした部分の収益は令和6年度の収入となり、法人税の課税対象となることである。
厚生労働省は、この税金対策として賃上げ促進税制の活用を挙げているが、この措置は一般的では無く、税理士も首を傾げる。それらを勘案すると、6月から前倒しでの支給がベストの選択と考える。
ただし、毎年、全職員にベースアップという形で定期昇給を実施しており、令和7年度の定期昇給に繰り延べした部分を当てる場合は問題ない。

算定要件が簡素化!

新加算の算定区分は4区分である。
現行の3加算の算定要件が、かなり簡素化されており、算定における事務負担が軽減された。
特に現行の特定処遇改善加算の要件である、全職員をA-B-Cに振り分けて配分の上限と所得制限を設けていた二分の一要件が廃止となった。
特定処遇改善加算Ⅱの算定要件で残る要件は、経験10年以上で介護福祉士を持つ介護職員から1名以上、年収440万円以上の者を求める要件のみである。
これも、すでに配置されている場合はそれで問題はない。
しかし、令和7年度からは、同要件で認められて居る月額8万円の昇給の要件が廃止される。そのため、新区分のⅠまたはⅡを算定していた場合、年収440万円以上の者を設定出来ない場合は算定区分3にダウンするので注意が必要である。

月給改善として求められる部分と時期

また、月給改善として求められる部分は、現在のベースアップ等支援加算とは要件が異なり、区分Ⅳの算定率で計算した加算額の二分の一を月給改善として設定する事になっている。
この要件は令和7年度から適用される。
令和6年度は、現在のベースアップ等支援加算および支援補助金で設定した月給改善額を維持することになる。
また、現在においてベースアップ等支援加算を算定していない場合は、算定した場合として計算した加算額の三分の二以上を月給改善額として設定するとされた。

職場環境等要件とは?

今、外国人の研修生が日本を避けるようになっている。
長期化する円安で、就労賃金が諸外国に比べて不利となっているのが原因である。
先日も、来日直前となってキャンセルとなった事例もあった。
さらには、英語が堪能な看護師がオーストラリアにワーキングホリデイで行き、短期間で高額な所得を得ていることもニュースとなっている。
2040年には、国内の介護職員が69万人以上不足する予想も出ており、人材確保が大きな課題となっている。
求人力や定着率の向上のためには、賃金改善共に、職場環境の改善も急務である。
処遇改善加算の算定要件の一つである職場環境等要件は、令和7年度から大きく変わる。生産性向上のための業務改善の取組を重点的に実施すべき内容に改められる。それは、厚生労働省の生産性向上ガイドラインに示されている。
業務改善委員会の設置、職場の課題分析、5S活動、業務マニュアルの作成、介護記録ソフト、見守りセンサーやインカムの導入、介護助手の活用などである。
ただし、令和6年度は、これまでの職場環境等要件が適用される。新たな職場環境等要件は、小規模事業者にはハードルが高いため、特例措置が設けられた。

求められるICT化

今回の介護報酬改定全体で、施設系を中心に生産性向上を求める方向は強化された。
介護施設等には、生産性向上委員会の設置が、経過措置三年と共に義務化された。
業務改善やICT化に先進的な取り組みを行う介護施設等を評価する生産性向上推進体制加算も創設されている。
この加算を算定することで、新たな職場環境等要件の生産性向上の部分をクリアするとされた。これらの制度上の義務化に関わらず、ICT化を積極的に進めることが重要である。
業務負担の軽減策としてはICT化が一般的である。
そのためにICT補助金や助成金を有効活用する。そして、ICT化の進んでいる施設には、若い優秀な職員が集まる。職員の若返りを図るにはICT化は不可欠である。

介護職員等処遇改善加算の一本化 出典:厚生労働省 介護職員の処遇改善

制度概要・全体説明資料[1.2MB]

ライター紹介
小濱 道博
小濱 道博 氏
小濱介護経営事務所 代表

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